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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2022年12月21日薬物療法って?糖尿病と薬・インスリン注射について知ろう

「薬物療法」とは「食事療法」「運動療法」を行っても、血糖コントロールがうまくできない場合に行われます。"最後の切り札"と言う人もいます。

この療法には、飲み薬の「経口糖尿病薬による治療」と、インスリンを注射する「インスリン療法」があります。

この二つの薬は性格、使い方が全く異なる薬なので、それぞれに注意すべきポイントを理解し、低血糖などの副作用に注意が必要です。

糖尿病の治療方法の種類は?

もう一歩踏み込むと、病気になったとき、その病気を取り除くことによって治療する方法を「根治療法」といいます。現在生じている症状を抑える治療法を「対処療法」といいます。対処療法は病気の原因を治療することができません。症状を抑えて体の治癒力が働いて、病気が治るのを待つことになります。糖尿病の薬物療法は「対処療法」になります。

さまざまな療法を組み合わせて症状が収まったように見えても、高血糖になりやすい体質は変わらないことを肝に銘じてください。

糖尿病における薬物療法の流れ

「食事療法」と「運動療法」を行っても血糖コントロールがうまくいかなければ「薬物療法」になります。何度も紹介していますが、糖尿病の種類は「1型糖尿病」「2型糖尿病」「その他の特定の疾患による糖尿病」「妊娠糖尿病」と4つあります。

2型糖尿病では、まず「飲み薬(血糖降下薬)」、1型糖尿病では体外からインスリンを補う「インスリン治療」というのが一般的な薬物療法です。その他のタイプでは高血糖状態になっている場合は、その原因や病態に合わせた薬物治療を行います。

飲んで治す!5種類の「経口血糖降下薬」

糖尿病と薬物療法

血糖値を全体的に下げる薬

スルホニル(SU)尿素薬

経口血糖降下薬としては昔からあり、古い歴史を持ちかつ安全性が高い薬です。膵臓のβ細胞に働きかけ、インスリンの合成・分泌を促進させる作用を持っています。膵臓にある程度インスリン分泌能力がある2型糖尿病の人に使われることが多いです。

この薬の注意点は、低血糖が起きやすいことです。特に、シニアの方は要注意です。入院後、自宅で行う食事療法が乱れて低血糖が起こり、救急で病院に運ばれるケースがシニアの方が多くいます。また過食の傾向と、この薬剤のインスリン分泌増加作用とが相乗効果を示して、体重が増加する人が数多くいます。

このスルホニル尿素薬の服用を長く続けていると、徐々に効果が低減することがあります。その場合、薬を増量するか、他の薬を併用することが多いです。

ビグアナイド薬

肝臓でのブドウ糖産生量を減らすことにより、血糖値が高くなるのを抑制する薬です。さらに、細胞組織のインスリン感受性を改善する効果もあります。肥満などで組織のインスリン抵抗性が高くなっている2型糖尿病の人に使用されます。また、インスリンの分泌能力が低下している人にも効果を発揮します。

チアゾリジン系薬

細胞組織のインスリン抵抗性を改善 することにより、血糖値を下げる薬です。この薬は、特に肥満によりインスリン抵抗性が増加し、細胞におけるインスリンの感受性が低下している人に有効です。

主に食後血糖値を下げる薬

α-グルコシダーゼ阻害薬

食事に含まれているでんぷんや糖質の分解を抑えて、ブドウ糖の吸収を遅らせることで、食後の急激な血糖値の上昇を抑えます。

速効型インスリン分泌促進薬

SU薬と同じように膵臓のβ細胞に作用してインスリンの分泌を促しますが、薬の効果はすぐに現れ、短時間しか作用しません。

薬の処方は、効果が強く現れすぎ、血糖値が下がりすぎたり、副作用が現れたりする事態を避けるために、実際に必要とされる量よりも少ない量でスタートします。その人にとって安全で効果の望める量へと徐々に調整されます。経口血糖降下薬は、薬の作用時間・機序によってあるいはその人の症状によって、1日の服用回数・量が違います。回数は1日1回であったり、毎食後であったりします。

インスリン治療の種類と使われ方

糖尿病とインスリン注射

インスリン注射療法で用いられるインスリン薬には、さまざまなタイプがあります。いずれも、膵臓から分泌されるインスリンと同じ作用をもたらすものです。膵臓が、糖代謝に必要なインスリンを分泌することができなくなった場合は、体外から注射によって補う以外に、方法がありません。

インスリン注射療法を行うケースって?

インスリン注射療法は、主に経口血糖降下薬では対応できないケースで導入されます。まずインスリン注射をする以外に高血糖状態を改善できない1型糖尿病の人が対象になります。インスリンの分泌量がほとんど、あるいはまったくないからです。

2型糖尿病の場合でも高血糖の状態が著しくて糖尿病昏睡や感染症などの急性合併症の発症や悪化の場心配が強い場合は、とりあえずインスリン注射治療を導入するケースもあります。

これは高血糖の程度が著しいと血糖降下薬は効力を発揮できないからです。また、経口血糖降下薬の効果が芳しくない場合やはじめは効いていたのに徐々に効果が憂くなった場合なども、インスリン注射療法を導入することがあります。

インスリン注射には5つのタイプがある

インスリン注射薬には「超速効型」「速効型」「中間型」「混合型」「持効型」5つのタイプがあります。その作用はいずれも膵臓からの通常のインスリンと同じです。

5つの薬のタイプの違いは、効果の現れ方です。注射をしたらすぐに効果を現して、まもなく消失するタイプ、効果の山ほどないものの、1回注射すれば24時間効果が持続するタイプなど多彩にあり、糖尿病の状態に応じて使い分けられています。

インスリン注射は患者が自分で行う

インスリン注射は毎日行うものです。注射は医療行為ですから、一般人が行うことは法律で禁じられていますが、糖尿病患者のインスリン注射については自分で行うことが認められています。そうでないと1日1回注射の人でも毎日、4回注射の人は一日に4回も医療機関に行かなければ行けません。それは事実上不可能なので、自分で注射できるようになっています。

インスリンの注射器具について

自分で注射するなんて不安だと思う方もいるでしょうが、現在では注射器具がとても使いやすくなっており、ペン型と呼ばれる注射器を使うのが一般化しています。最近のインスリン注射薬はインクカートリッジと同じようになっているか、注射器具そのものが使い切りの形(プレフィルド/キット製剤)になっています。

注射の針もとても短く、太さ0.2ミリ、長さ5ミリなどというタイプのものも登場しています。そのため注射時の痛みはほとんど感じなくてすみます。針は1回で使い捨てです。自己注射時には緊張する方もいますが、それも最初の数回で、すぐに慣れる方が大半です。

まとめ

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法だけで血糖コントロールするのが一番の理想ですが、この二つの療法を用いても血糖が改善されない場合に「薬物療法」を行います。

糖尿病の方は膵臓がインスリンを分泌しようと頑張りすぎてかえって負担をかけてしまうケースがあります。ある程度、膵臓に余力が残っている時、糖尿病予備軍の段階で薬物療法をスタートさせた方が膵臓への負担が少なく、効果も期待できることがあります。「経口血糖降下薬」「インスリン注射薬」と二つの薬物療法があり、どちらが適した症状か医師の適切な判断を受けてください。

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