本記事では、透析指標としてしばしば取り上げられることのあるHDPについてお伝えします。透析の考え方や透析治療の現状を把握し、正しく理解することで、より良い透析治療を実現していきましょう。
HDPとは透析量を表す指標
HDPとは Hemodialysis Product の頭文字を並べたもので、Belding Hibbard Scribner(ベルディングスクリブナー)医師らが臨床データを基に提唱した「透析量の適正さ」を表す指標 ※です。
聞き慣れない言葉ですが簡単に言えば患者が透析によってどんな健康結果が得られたかという意味に捉えられます。
HDPは1週間に行う透析の回数と時間により数値化されたもので、以下のような式で算出されます。
1回の透析時間 × (1週間の透析回数) ²
この値が大きければ大きいほど望ましい透析ができているということになります。統計的には72以上が適正、45以上がボーダーラインとされています。
望ましい透析とは言い換えれば「元気で長生きできる」透析です。「元気で長生きできる」透析を叶えるにはHDPの値が大きい「高HDP」の透析を受ければ良いわけです。そのため、透析患者さんに是非知っておいてもらいたい透析の指標です。
※ 参照文献:Dialysis & Transplation/Vol.40/Issue10/p431-433/(Belding H.Scribnar MD’ Dimitrios G.Oreopoulos MD) 2011年10月17日発行
HDPからみた今の透析
1週間の透析回数(最大7回)と1回の透析時間(3〜8時間)を掛け合わせた早見表は以下の表となります。
では、この指標をもとに、日本で一般的とされている「1回4時間×週3回 」のHDPについて考えていきます。日本の一般的な透析では早見表にもありますがHDPは36( =4×3² )となり、適正とされる透析量の半分しかありません。それどころか、ボーダーラインとされる45にも届かないのです。
それでは「週3回」で適正とされるHDP72の透析量を得ようとする場合何時間の透析が必要かといえば、早見表からもわかる通り8時間も透析をしなければなりません。
では仮に週4回透析とすると1回あたり何時間受ければ適正ラインをクリアするか、早見表より4.5時間となり、こちらはかなり現実的な数値になります。
高HDPのカギは透析回数
前述の数式や早見表を見て、気づいた方もいらっしゃると思いますが、HDPの指標では週あたりの回数が、1回あたりの時間よりも重視されます。週の総時間が同じであれば、回数が多いほどHDPの値は高くなるということです。
先ほど算出した「1回4時間×週3回」の透析の総時間は12時間となります。そしてHDPは36でした。これを「1回3時間×週4回」にするとどうなるでしょうか。こちらも総時間は変わりませんがHDPの数値は早見表より、48(3×4²)となります。これは最低限とされる45を超えることができています。
このように総時間が同じであれば透析回数を増やす方が高HDPになり、健康状態の向上につながるといえます。
最後に、HDPと臨床結果との関係については整理すると次のような図で表されます。
※日本透析医学会雑誌 Vol.30 No.1 2015より一部改変
まとめ
HDPは透析量を表す指標で、週の透析時間が同じ総時間であったとしても回数が多い方がHDPは高くなります。HDPをあげればあげるほど臨床結果は良好となり、健康で長生きできる透析を実現するための指標です。皆さんの透析量が今どれくらいなのかを算出し、透析の回数や時間を増やせるような工夫をしていきましょう。
櫻堂渉著『生命予後が劇的に改善するセルフ透析』 より抜粋