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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年5月18日【塩分を控えよう】糖尿病の食事療法には減塩も重要です

糖尿病の治療の中でも、食事療法はとても重要な基本となります。カロリーや糖分の多い主食や甘いものを控えるということも大切ですが、食事の塩分を控えることも糖尿病の食事療法において大変重要なことです。

塩分の摂りすぎは高血圧を招き、糖尿病の合併症を発症・進行させます。今回は、塩分の摂りすぎによって糖尿病が悪化する仕組みから、糖尿病の食事療法における減塩のコツやポイントについて詳しく解説していきます。

まずは糖尿病と塩分の密接な関係について詳しくみていきましょう。

塩分過多による高血圧は糖尿病の悪化に

糖尿病は、食事療法で糖分の多い甘いお菓子や炭水化物の摂りすぎを控えなければいけないというイメージがあるかと思います。実は、塩分の摂りすぎも大敵なんです。

糖尿病で塩分を摂りすぎるとどのような影響が身体に及ぶのか、まずは塩分過多の怖さについて詳しくみていきましょう。

高血圧による糖尿病の合併症の悪化

塩分の摂り過ぎで最も怖いのが、糖尿病の合併症の悪化です。塩分過多により、以下のような合併症を起こす可能性が高まります。

  • 高血圧
  • 糖尿病性腎不全
  • 動脈硬化
  • 心筋梗塞・脳卒中

食事で塩分を摂りすぎると、血液量が増加して高血圧となります。高血圧の状態が続くと腎臓への負担が増し、腎臓の働きが悪くなります。糖尿病で高血圧になると、腎臓の機能低下が起こるので、糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病性腎症が悪化しやすい状態になります。

さらに、高血圧は血管の内側の壁の細胞を刺激し、動脈硬化を促進させます。糖尿病でみられる高血糖も、血管の内側の壁の細胞を傷つけ、動脈硬化が進行しやすくするので普通の人よりも糖尿病の方では動脈硬化の進行が早いのです。

糖尿病で高血圧を併発すると、高血糖・高血圧の双方の影響により、動脈硬化の進行が加速し、心疾患や脳卒中といった病気のリスクを高めることになります。

このように、塩分の摂り過ぎが高血圧を引き起こし、そこからさらに腎不全や動脈硬化を引き起こすことにつながるのです。続いて、高血圧の起こる仕組み、腎不全が起こる仕組みについて、少し踏み込んでみていきましょう。

塩分の摂りすぎで高血圧が起こる仕組み

塩分の摂り過ぎによってなぜ高血圧になるのでしょうか?高血圧が起こる仕組みについてみていきましょう。

血液量が増えることで血管に圧がかかる

塩分を摂りすぎると血液中のナトリウムの濃度が上昇し、ナトリウムと水分のバランスが変化します。身体は水分を多量に摂取してナトリウム濃度を低くし、水分とのバランスを戻そうとします。

ナトリウム濃度を低くするために、体内の水分が血管内に多く取り込まれます。

血液量が増えることで、内側から血管に圧がかかります。心臓は、多くなった血液を送り出すために強い力で血液を送り出すことになり、それによって血圧が上がるのです。

食塩と糖尿病の関係

高血圧と腎臓機能低下の密接な関係

続いては、高血圧と腎臓の機能低下の関係についてみていきましょう。高血圧は、腎臓のろ過機能の低下、腎臓の末梢血管の抵抗の増大、血圧を上昇させるホルモンをつくる物質の過剰分泌と密接に関連しており、次第に腎不全を引き起こします。

また、腎臓の機能低下がさらなる高血圧をまねきます。どのように関連にしているのかを詳しく見ていきましょう。

腎臓機能の低下がさらなる高血圧をまねく

高血圧は、腎臓のろ過機能の低下を引き起こします。腎臓は細い血管が集まってできており、高血圧になることで腎臓の細い血管に負担がかかり、ろ過機能が低下させます。

ろ過機能が低下することで、不要な塩分や水分を排泄できず、さらに血液量が増加して血圧の上昇を引き起こします。

また、腎臓の機能が低下すると、血圧を上げるホルモンをつくるために必要なレニンという物質が腎臓から過剰に分泌されます。レニンの過剰分泌も、さらなる高血圧をまねきます。

このように、高血圧になることで腎臓機能が低下し、さらに腎臓機能低下がさらなる高血圧を引き起こすという悪循環となるのです。

高血圧と腎機能の関係

図1 高血圧の仕組みと腎機能

参考記事1:NHK 健康ch

参考記事2:循環器病情報サービス

糖尿病治療と減塩のメリット

さて、高血圧と腎不全の悪循環の仕組みがわかったかと思います。健康な人が高血圧を発症しても、上記のように腎不全や高血圧のさらなる悪化といった健康リスクがあります。さらに、糖尿病の方が高血圧を引き起こすと、合併症の悪化につながるので注意が必要です。

糖尿病の方は、高血糖の状態によって普通の人よりも血管に負担がかかっている状態です。そこに高血圧が加わると、さらに血管への負担が増すことになります。糖尿病の合併症である心臓病や腎疾患の発症リスクがさらに高まることにつながります。

よって、糖尿病治療においての減塩は、糖尿病の合併症の発症・進行の予防のためにもとても重要なのです。

また、糖尿病の方が減塩に取り組むことは、合併症の予防だけでなくメタボリックシンドロームの予防や胃がん・骨粗鬆症の予防にもつながります。それぞれみていきましょう。

減塩によるメタボリックシンドロームの発症・進行の予防

高血圧は糖尿病のほかにも、脂質異常症や内臓脂肪型肥満などの生活習慣病とも合併しやすく、メタボリックシンドロームへと進行していきます。

メタボリックシンドロームは糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病を悪化させ、動脈硬化を進行させて心臓病や脳卒中、腎臓病、高尿酸血症、認知症、がんの発症にも関連しています。

糖尿病の食事療法では適切なエネルギー量と栄養バランスのとれた食事が基本となりますが、塩分を控えることもメタボリックシンドロームや生活習慣病の発症・進行の予防にも重要な意味があるのです。

減塩による骨粗鬆症や胃がんの予防

塩分の摂りすぎが高血圧を招き、高血圧は心臓病や脳卒中などの心血管病との関連が深いことを説明してきました。

これらの病気以外にも塩分の摂りすぎは骨粗鬆症、胃がんなどの病気に関連していることが言われています。減塩は心血管疾患以外の病気のリスクも軽減するのです。

糖尿病と高血圧・減塩の仕組み

図2 糖尿病・高血圧による影響と減塩のメリット

参考記事:循環器病情報サービス

塩分の多く含まれる食品と減塩のコツ

このように、糖尿病の方の減塩は糖尿病の合併症リスクの低減だけでなく、メタボ予防や胃がん・骨粗鬆症の予防のためにも重要です。では、どのように減塩に取り組めば良いのでしょうか?

厚生労働省の日本人の食事摂取基準2015では、1日の食塩摂取の目標量は男性8.0g、女性7.0g と定めています。一方で、平成28年は1⽇あたりの平均摂取量が男性10.8g、女性9.2gと男女ともに摂取目標量をオーバーしている状況です。

普段私たちが食べているものの中で、塩分量が多く注意が必要な食品は何でしょうか?食事における減塩のコツも含めてみていきましょう。

塩分の多く含まれる食品

日本人が摂取している塩分の約7割はしょうゆ、みそ、塩、ソースなどの調味料から摂っています。また、残りの約3割は魚介加工品や肉加工品、インスタント食品、漬物、菓子類に含まれる目に見えない塩分と言われています。

また、普段主食や主菜としてよく食卓にのぼる食品の中で、意外に塩分が多い食品も少なくありません。主食、加工品、菓子類、外食料理に含まれる食塩量を詳しくみていきましょう。

主食

食品名 成分量100gあたりg
手延べそうめん・ひやむぎ 5.8
即席中華麺味付け(味付けなし) 6.4(5.6)
干しうどん 4.3
お好み焼き粉 3.7
生うどん 2.5
干しそば 2.2
コーンフレーク 2.1
フランスパン 1.6
ロールパン 1.2
ゆでスパゲッティ 1.2
食パン 1.2

加工品

食品名 成分量100gあたりg
カットわかめ 24.1
梅干し(塩漬け) 22.1
塩昆布 18.0
コーンクリームスープ(粉末) 7.1
生ハム(長期熟成) 5.6
松前漬け 5.2
ビーフジャーキー 4.8
ドライソーセージ 4.4
ミートボール(冷凍) 1.3
しゅうまい(冷凍) 1.3
かまぼこ 2.5
かにかま 2.2
ちくわ 2.1
魚肉ソーセージ 2.1

菓子類

食品名 成分量100gあたりg
しょうゆせんべい 2.0
ひなあられ 1.5
ウエハース 1.2
肉まん・カレーパン 1.2
ポテトチップス 1.0
クリームパン 0.9
ジャムパン 0.8
ホットケーキ 0.7

外食料理

食品名 成分量100gあたりg
ラーメン 約4.0
天ぷらそば 約6.0
うな重 約5.0
とんかつ定食 約5.0
牛丼 約4.0
かつ丼 約4.5
天丼 約4.0
にぎり寿司 約4.0
生姜焼き定食 約4.5

参考文献:文部科学省 食品成分データベース

減塩のコツ

上記のように、お醤油などの調味料や漬物だけでなく、パンや加工食品にも塩分が含まれていることが分かります。

お醤油やソースといった調味料の塩分は、調理の際に調整しやすいですが、加工食品に含まれている見えない塩分は、加工食品自体の摂取量を少なくすることで減らす必要があります。

最後に、普段の食事の中で摂取塩分を減らすための5ポイントをみていきましょう。

減塩ポイント1:普段から薄味に

まず1つ目は、普段から薄味を心がけて調理することです。

昆布や鰹節などでだしをとり、調味料を控えて風味を生かした味付けにしましょう。ただし、粉末だしや液体だしには塩分が多く含まれているものもあるので、成分表を確認して使用するようにしてください。

減塩ポイント2:漬物・汁物・加工食品・インスタント食品は控える

塩分の高い漬物やラーメンやうどん・そばの汁、味噌汁、練り物、ハム・ソーセージなどは食べる量・回数を減らすようにしましょう。

減塩ポイント3:調味料はつける

しょうゆやソースなどはかけて食べるのではなく小皿に出し、少しずつつけて食べると量を調節しやすく、少ない塩分量で食べることができます。

減塩ポイント4:酸味や香りを活かす

塩やしょうゆなどの調味料の代わりにレモン、すだち、酢、ゆず、ショウガやハーブ、ごまなどの香味野菜を活用し、酸味や香りを活かして味にアクセントをつけましょう。

減塩ポイント5:食べる量は適量に

塩分を控えた食事であっても、量を食べすぎると摂取する塩分量も多くなります。食べる量も調整するように心がけて下さい。

参考記事1:福祉と健康・食生活改善

参考記事2:農林水産省 みんなの食育

食塩と糖尿病の関係

まとめ

いかがでしたか?今回は、糖尿病における減塩の大切さから、高血圧や腎不全が起こる仕組みまで少し踏み込んでみていきました。

糖尿病の食事療法では、減塩も大切な治療の一貫です。減塩することで糖尿病の悪化を予防し、メタボリックシンドロームや心血管疾患、骨粗しょう症、がんの予防にもつながります。

塩分の多く含まれる加工食品やインスタント食品を控え、普段から薄味の食事を心がけましょう。

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