「透析が必要になるかもしれない」と言われると、多くの方が不安に思うことでしょう。しかし、すぐに透析が始まるとは限りません。腎機能が低下しても、状態によっては透析を行わずに経過をみる期間があります。
この記事では、透析保存期とは何か、透析はいつ頃から検討されるのか、そして保存期にできることについて整理します。適切な情報を知ることで、過度な不安を減らし、今後の治療に備えましょう。
「透析保存期」とはどんな状態?まずは落ち着いて状況を整理しましょう
透析保存期とは、一般的に保存期腎不全や慢性腎臓病(CKD)の保存期を指す意味合いで用いられています。

透析保存期とは、慢性腎臓病(CKD)において、透析や腎移植などの腎代替療法をまだ導入していない時期全般を指します。病期としてはCKDの早期から末期直前までを含みます。
保存期の目的は、透析導入を無理に遅らせることではなく、合併症を適切に管理しながら、安全で納得のいくタイミングで腎代替療法を選択できるようにすることです。
| CKD ステージ | eGFR | 腎臓の状態 |
|---|---|---|
| 第1期 | ≧90 | 腎障害はあるが正常範囲 |
| 第2期 | 60~89 | 軽度の機能低下 |
| 第3期 | 30~59 | 半分程度の機能低下 |
| 第4期 | 15~29 | 重度の機能低下(腎機能が約30%未満) |
| 第5期 | <15 | 著しい機能低下(末期腎不全) |
eGFRが低下しても、症状が安定しており、体液量や電解質バランスが保たれていれば、保存期として経過観察が続く場合があります。透析保存期は、腎機能低下に伴う合併症を管理し、生活の質を保つための大切な期間です。
・公益財団法人 日本腎臓財団 腎臓の機能をチェックしてみましょう
透析はいつから始まる?いつまで大丈夫?

透析開始時期は、症状や全身状態などを総合的に評価して医師が判断します。eGFRの数値のみで一律に決めることは推奨されていませんが、eGFRがおおむね15mL/min/1.73㎡未満となり、尿毒症症状や体液異常、電解質異常などが保存的治療で十分にコントロールできなくなった時点で、透析導入が検討されます。以下のような症状も、透析導入の判断に用いられます。
- 全身のひどいむくみ
- 肺に水がたまることによる呼吸困難
- 吐き気、嘔吐
- 食欲不振で食事がとれない
- だるくて起き上がれない、歩行や通院が困難になるなど、活動性が著しく低下している
- 食事制限や食欲不振により、体重や筋肉が急激に減少し、低栄養状態に陥っている
緊急で透析が必要なサイン
数値に関わらず、下記のような命の危険がある場合は、透析の緊急導入が必要です。
- 高カリウム血症:不整脈や心停止のリスクがある状態
- 高度なアシドーシス:血液が酸性に傾きすぎている状態
- 尿毒症性心膜炎・脳症:毒素が心臓や脳に影響を与えている状態
透析を少しでも先に延ばすためにできること

進行の程度には個人差が大きいですが、生活習慣や治療内容によって腎機能低下の進行速度に差が出ることもあります。腎臓を守るために、今日からできる3つの習慣を実践しましょう。
塩分摂取を控える
塩分の摂りすぎは高血圧を招き、腎臓を傷つける大きな要因の一つです。次のような工夫で減塩を心がけましょう。
- 麺類の汁は残す
- 漬物や練り製品、加工食品は控える
- だしや酸味で味にアクセントを加える
タンパク質は医師と相談して制限する
タンパク質の摂りすぎは老廃物を増やし、腎臓の負担になります。ただし、自己判断での極端な制限は体力や筋肉量の低下を招くリスクがあります。医師や管理栄養士の指導を受け、自分に合った適切な量を守りましょう。
血圧・血糖値の管理と禁煙
腎臓病を悪化させる原因をしっかりコントロールすることが大切です。血圧・血糖値の管理と禁煙を徹底しましょう。
- 血圧・血糖値:目標値は主治医の指示に従い、コントロールを続ける
- 禁煙:喫煙は血流を悪くし腎臓を傷つけるため、禁煙する
・日本腎臓学会 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
まとめ
透析保存期は将来を見据えて体調を整える時期です。透析開始の判断は数値だけで決まらず、症状や生活への影響を含めて総合的に行われます。正しい知識を持ち、主治医と相談しながら管理を続けることで不安を減らし、自分に合った治療選択につなげることができます。
透析保存期をどう過ごすかは、その後の治療や生活の質にも関わるため、早い段階から理解を深めておきましょう。




