30代の糖尿病患者は増えている?もし、自分がなったときは

糖尿病の基礎知識
30代の糖尿病患者は増えている?もし、自分がなったときは

日本の糖尿病の人口は年々増えています。生活習慣が影響する2型糖尿病は40代以降の中高年・高齢者に多い印象がありますが、30代で若くして糖尿病になる人もいるのです。

30代の糖尿病はどのくらいいるのか、若くして糖尿病になる原因やどのような症状がみられるのか、糖尿病患者の平均寿命についてみていきましょう。

糖尿病患者の年代の割合

厚生労働省平成 28 年国民健康・栄養調査結果の概要によると、30代の「糖尿病が強く疑われる者」の割合は平成9年には男性1.6%、女性1.6%、平成19年には男性3.0%、女性0.5%、平成28年には男性1.3%、女性0.7%であり、男性では平成19年に増えたものの平成28年では男女ともに減っています。

総数でみてみると、平成9年は男性9.9%、女性7.1%、平成28年は男性16.3%、女性9.3%と多くなっており、男女ともに60代、70代の「糖尿病が強く疑われる者」の割合が増えています。

60代は、平成9年、男性は17.5%、女性は10.6%が平成28年は男性21.8%、女性は12.0%、70代は、平成9年は男性11.3%、女性15.5%が平成28年では男性23.2%、女性16.8%となっています。

60代以上の高齢者の「糖尿病が強く疑われる者の割合」が増えている背景が、「糖尿病が強く疑われる者」の全体の割合が増えていることに影響していると考えられます。

30代の「糖尿病が強く疑われる者」は女性では平成9年から平成28年で半数以下に減ってはいますが、男女ともに一定数の割合でみられます。(図1 糖尿病が強く疑われる者の割合 参照)

男性
総数 20代 30代 60代 70代
平成9年 9.9 0.9 1.6 17.5 11.3
平成14年 12.8 0.0 0.8 17.9 21.3
平成19年 15.3 1.1 3.0 22.1 22.6
平成24年 15.2 0.5 1.4 20.7 23.2
平成28年 16.3 0.0 1.3 21.8 23.2
女性
総数 20代 30代 60代 70代
平成9年 7.1 0.9 1.6 10.6 15.5
平成14年 6.5 0.8 0.9 11.5 11.6
平成19年 7.3 0.0 0.5 14.1 11.0
平成24年 8.7 0.0 1.1 12.6 16.7
平成28年 9.3 1.2 0.7 12.0 16.8

表1 糖尿病が強く疑われる者の割合

出典:厚生労働省平成 28 年国民健康・栄養調査結果の概要表1 「糖尿病が強く疑われる者」、「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合の年次推移(20 歳以上、性・年齢階級別)より一部抜粋

「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合を見てみると、30代は、平成9年は男性4.1%、女性4.2%、平成19年は男性3.0%、女性5.4%、平成28年は男性1.5%、女性0.7%となっています。

男女ともに平成19年をピークに減少しています。「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は平成9年に比べて平成28年では男女ともに70歳以上で増えています。(図2 「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合 参照)

男性
総数 20代 30代 60代 70代
平成9年 8.0 0.4 4.1 10.3 11.5
平成14年 10.0 2.1 2.7 13.4 16.1
平成19年 14.0 0.0 3.0 17.3 18.4
平成24年 12.1 0.5 1.8 15.5 17.7
平成28年 12.2 0.7 1.5 12.5 18.8
女性
総数 20代 30代 60代 70代
平成9年 7.9 1.4 4.2 8.8 12.4
平成14年 11.0 0.4 4.4 16.0 16.7
平成19年 15.9 0.9 5.4 18.2 23.8
平成24年 13.1 0.8 3.1 17.4 20.8
平成28年 12.1 0.0 0.7 15.2 20.2

図2 「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合

出典:厚生労働省平成 28 年国民健康・栄養調査結果の概要表1 「糖尿病が強く疑われる者」、「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合の年次推移(20 歳以上、性・年齢階級別)より一部抜粋

「糖尿病が強く疑われる者」、「糖尿病の可能性を否定できない者」の割合は年齢が高くなるごとに割合も増大していき、加齢の影響があると考えられます。30代は全体の年代層でみてみると多いとは言えませんが、20代に比べるとやはり多く、20代よりは30代の方が糖尿病になりやすいと言えるでしょう。

30代が糖尿病になる原因

糖尿病の原因は糖尿病の種類によって異なり、以下のような原因が考えられます。

1型糖尿病

1型糖尿病の原因は遺伝やウイルス、自己免疫などが関連していると考えられています。1型糖尿病は子供や若い年代で発症する糖尿病という考えが定着していますが、実は1型糖尿病の40%以上は30代以降で発症するといわれています。

「日本人の糖尿病の90%以上は2型糖尿病で、40代以降で発症しやすい」、「1型糖尿病は若年層に起こりやすい」という先入観がありますが、30代でも1型糖尿病を発症する人はいるのです。

2型糖尿病

2型糖尿病の原因は、糖尿病になりやすい体質を持っていること、加齢、肥満、運動不足、食べ過ぎ、過度のストレスや疲れなどの生活習慣が原因とされています。

2型糖尿病は加齢とそれまで続いてきた生活習慣に影響を受けます。加齢が2型糖尿病の原因となる理由には、加齢に伴って骨格筋が減少し、内臓脂肪が増大することによってインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなる)が生まれること、老化によって膵臓の働きが機能低下を起こすことが関連しています。

また、2型糖尿病の8割近くの人は肥満がみられるといいます。現在、肥満でなくても過去に肥満の時期があった人も含まれます。肥満の方が急に体重が減少した場合は糖尿病による体重減少が起こっている可能性もあるので注意が必要です。

2型糖尿病は40代以降で発症が多く見られますが、「運動不足や食べ過ぎなどで骨格筋が減少して内臓脂肪が増えている人」、「肥満の人」は、インスリンの分泌の低下・インスリン抵抗性がみられ、30代でも2型糖尿病を発症するリスクがあります。

見た目は痩せていても、「普段あまり運動をせずに体力の低下や活動量の低下がみられる人」、「脂肪の多い肉や揚げ物・洋菓子などの高脂肪の食事を好む人」、「内臓脂肪が蓄積している人」はインスリン抵抗性が生まれ、2型糖尿病を発症しやすくなるので要注意です。

また、喫煙は血糖を上昇させ、インスリンの働きを低下させるので、糖尿病の発症リスクを高めることがわかっています。喫煙習慣がある人も糖尿病になりやすくなります。

妊娠

妊娠糖尿病は妊娠時に初めて見られる糖尿病で、30代の妊婦の方にも起こりうる糖尿病です。肥満や家族に糖尿病の人がいる場合、4,000g以上の赤ちゃんの出産経験がある人は妊娠糖尿病になりやすい傾向があります。

病気

クッシング症候群・先端巨大症・甲状腺機能亢進症・褐色細胞腫・グルカゴノーマなどの内分泌疾患、膵炎・膵腫瘍・膵外傷・膵臓摘出術などの膵外分泌疾患、肝疾患、ステロイドの使用などで糖尿病を発症することもあります。

ペットボトル症候群

ペットボトル症候群とは急性の糖尿病で10~30代の若い世代でみられやすいとされています。

糖分を多く含む清涼飲料水(ジュース)を、水やお茶の代わりに1日に1.5リットル以上飲み続けていると高血糖となり、全身の倦怠感、眠気、のどの渇き、多尿、嘔吐、腹痛などの症状が見られます。重症例では意識障害、昏睡などの症状が現れ、緊急治療が必要となります。

水分補給は糖分の含まれていない水やお茶などにして、甘いジュース類を多量に飲むことは控えるように気を付けましょう。

30代の糖尿病と運動

30代の糖尿病の症状と平均寿命

30代の糖尿病ではどのような症状が見られるのか、平均寿命は何歳ぐらいなのかを見ていきましょう。

糖尿病の症状

糖尿病の症状はやたらとのどが渇く、尿がたくさん出る、疲れやすい、体がだるい、眠気が強いなどの症状が見られます。

高血糖が続くと、次第に血管が障害され、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症糖尿病の三大合併症の症状や、動脈硬化が進行することによる症状が見られます。

糖尿病神経障害では手足のしびれや痛み、感覚障害、立ちくらみ、発汗異常、下痢と便秘を繰り返す、味覚鈍麻、排尿障害などがみられます。進行すると日常生活に支障をきたすほどのしびれや痛み、神経の麻痺、足の壊疽などがみられます。

糖尿病網膜症では、ぼやけて見える、二重に見える、視野が狭くなる、視力の低下などがみられ、突然失明することもあります。糖尿病腎症では、むくみや身体のだるさ、貧血、皮膚のかゆみ、高血圧、尿たんぱくなどの症状が見られ、進行すると一生透析治療が必要となります。

大きな血管に動脈硬化が起こると、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。

糖尿病で怖いのは合併症です。初めのうちは自覚症状もないうちに身体がむしばまれていき、気づいた時には、「目が見えない」、「足を切断しなければならない」、「一生、人工透析治療を受けなければならない」、「心筋梗塞で突然死」、「脳梗塞で重度の後遺障害が残る」などの重篤な状態となることです。

糖尿病の平均寿命

厚生労働省の平成22年簡易生命表の概況(出典:厚生労働省 平成22年簡易生命表の概況 3平均寿命の国際比較)によると、2010年の日本人の平均寿命は男性79.64歳、女性86.39歳となっています。

一方、2001~2010年の日本人の糖尿病患者の平均寿命を調査した結果では、男性71.4歳、女性75.1歳であり、日本人の平均寿命に比べると男性で約8年、女性で約11年の差があることがわかります。

日本人の平均寿命と比較すると糖尿病患者の平均寿命は低いですが、2001年以前の10年間と比較すると、糖尿病患者の平均寿命は男性で3.4歳、女性で3.5歳延びているといわれています。

糖尿病は一度なってしまうと完全に治ることはない病気です。しかし、生活習慣を見直し、血糖値のコントロールを良好に保つことができれば、合併症の進行も予防でき、寿命を全うすることも叶います。

大切なのは日頃から栄養バランスのとれた食事と適度な運動を心がけ、糖尿病の予防を図ること、また、糖尿病になってしまったとしても糖尿病の進行を予防することです。

自分は健康だから大丈夫と思っていても、定期的な検診を受けることで早期に糖尿病を発見し、治療を開始することもできます。

まとめ

糖尿病になる人は増えていますが、医療の進歩により、糖尿病患者の平均寿命は延びています。早期の糖尿病であれば、生活習慣の見直しだけで改善することもあります。

「糖尿病になってしまったら治ることはなく、一生付き合わなければならない」、「寿命が10年縮まる」、「一生、透析生活になる」などと気を落とさずに、主治医とよく相談しながら糖尿病の治療に取り組んでいきましょう。

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