糖尿病患者が登山をするなら行動食に気をつけよう

食事療法
糖尿病患者が登山をするなら行動食に気をつけよう

登山は長時間にわたる有酸素運動で、多くのエネルギーを必要とします。そのため、効率よく糖質を補給できる行動食が欠かせません。特に糖尿病患者さんの場合は、血糖値の急激な変動を起こしにくい食品を選び、低血糖時の対策を考慮する必要があります。この記事では、登山中のエネルギー補給のポイントや、糖尿病患者に適した行動食について詳しく解説します。

登山の行動食で大切なこと

登山は長時間にわたる有酸素運動です。安静時を1としたときにエネルギーが何倍必要であるかを示すメッツでは、ハイキング程度で6.5メッツ、本格的な登山は7.3メッツに当たります。1)
メッツ 3メッツ以上の運動の例

メッツ 3メッツ以上の運動の例
3.0 太極拳、ピラティス、ボウリング、バレーボール
4.0 ラジオ体操第一、卓球
5.0 かなりの速歩き、野球、ソフトボール
6.0 ゆっくりのジョギングや水泳、バスケットボール、ウェイトトレーニング
6.5 山登り(荷物は0~4.1㎏)
7.0 ジョギング、スキー、スケート、サッカー
7.3 山登り(荷物は約4.5~9.0㎏)、エアロビクス、シングルテニス
8.0 腕立て伏せ・腹筋などの激しい強度の筋トレ、サイクリング(約20km/時)

出典:健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023より一部抜粋1)

登山はエネルギーが大きく消費し続ける運動です。エネルギー源である糖質と脂質以外にも水分やミネラルも失われます。身体がエネルギー不足になると筋肉が疲労する、疲れやすくなる、集中力が低下するなどが起こります。

脂質は身体に多く貯蔵されていますが、糖質は脂質に比べると貯蔵量が多くありません。そのため、登山中にはエネルギー源となる糖質を効率的に摂取できる行動食を定期的に摂取することが重要です。

数日以上におよぶ登山の場合はビタミンや鉄、カルシウムの補給も行える行動食を選びましょう。2)

登山と糖尿病の関係

登山

2型糖尿病では、有酸素運動である登山によりインスリン感受性が向上し、血糖コントロールの改善が期待できますが、以下の注意が必要です。

糖尿病の場合に注意すべき点

インスリンやインスリン分泌を促す薬を服用している場合は登山中に低血糖を起こすリスクが高まります。また、糖尿病による神経障害がある場合は足のトラブルを予防するためにも注意しながら登山を行うことが大切です。

さらに、中高年登山者による心疾患や脳血管疾患による突然死は糖尿病などの生活習慣病があり、全身の動脈硬化が進んでいると危険性が高まります。動脈硬化は自覚症状として現れにくいので、登山が可能な心臓や血管の状態かどうかを事前に主治医へ相談し、運動前チェックを受けましょう。1)

登山前には段階的な準備が必要

普段運動をしていない場合は、登山前にウォーキングやサイクリング、ステップ昇降、水泳などの有酸素運動で心肺機能を高め、下肢筋力を鍛える準備も必要です。いきなり難易度の高い山をめざすのではなく、ハイキングや低山登山などから段階的に登山を進めましょう。

糖尿病患者にオススメの行動食

登山においては、炭水化物の補給が必要であり「行動食は少なくとも2時間毎に取るのが望ましい」とあります。2)

炭水化物の中でもでんぷんはエネルギーが長時間安定しやすく、糖類はエネルギーを即効的に補給できる特徴があります。朝食にはでんぷんメインのおにぎりなどを食べましょう。行動食ではでんぷんと糖を両方とれるものが望ましいとされています。2)

例)

  • おにぎり
  • 菓子パン
  • クッキー、サブレ
  • チョコレート
  • ようかん
  • グミ、あめ
  • シリアルバー など

ようかん

糖尿病患者さんの場合は、血糖値を急激に上昇させにくい低GI食品やゆっくりと消化・吸収されて長期間血糖が安定しやすい食物繊維が含まれる食品などを選ぶと血糖値が大きく変動しにくくなるでしょう。

例)

  • 玄米おにぎり、玄米・全粒粉のあんパンなどの菓子パン
  • 玄米シリアルバー
  • ナッツ、ドライフルーツ
  • 全粒粉クラッカーとナッツペースト
  • ゼリー飲料 など

上記にプラスして、糖尿病患者さんが携帯したいのが低血糖時に食べる即効性のある糖分です。忘れずに携帯し、低血糖時の対応も登山前に確認しておきましょう。

  • ぶどう糖
  • ラムネ(口どけのよいもの)
  • グルコースゼリー など

まとめ

登山ではエネルギーを長時間安定して供給するでんぷんを中心に、即効性のある糖質を併せ持つ行動食を選ぶことが重要です。糖尿病患者さんは血糖値の大きな変動を予防しやすい低GI食品を選び、低血糖対策用のぶどう糖などを携帯しましょう。

また、登山前には主治医に相談し、体調や登山の可否を確認しておくことも大切です。登山に行く前には段階的に心肺機能や筋力を鍛えて体調不良を予防し、万全の準備を整えて楽しみましょう。

1)厚生労働省 健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂 に関する検討会 令和6年1月
2)国立登山研修所

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