厚生労働省は3年に一度、さまざまな病気の患者数を調べて医療行政に役立てる「患者調査」を行っています。近年では2014年に行われましたが、それによると糖尿病患者数が過去最多の316万60000人を記録しました。
これは一体どういうことなのでしょうか。これほどまでに患者数が増加した原因は何なのでしょうか。みなさんも今一度、考えてみませんか?
糖尿病患者数は毎年15万人以上増えている!?
厚生労働省が2011年に行った前回の患者調査では糖尿病患者数は270万人でした。2014年の調査では316万6000人ですから、3年で46万6000人も増加した計算になります。
他の病気について見てみると、高血圧性疾患は104万1000人増えて1010万8000人。高脂血症は17万6,000人増の206万2000人。がんが10万人増の162万6000人となっています。脳血管疾患は5万6000人減って117万9000人でした。
「国民健康・栄養調査」でも糖尿病が増加傾向に
厚生労働省では「患者調査」以外に、「国民健康・栄養調査」というものも行っています。この調査によると、男性の15.5%、女性の9.8%が糖尿病が強く疑われる「糖尿病有病者」であることが分かりました。
日本の人口から推計すると、なんと950万人が糖尿病有病者ということになります。こちらも前回調査より60万人増加して、過去最多を記録しています。
糖尿病患者数が増加している原因
では、なぜ糖尿病の患者数がこれほどまでに増加してしまったのでしょうか。
大きな原因として考えられるのは食生活の変化です。食事内容が欧米化して高カロリーになったため、必要以上にカロリーを取り過ぎてしまうことが挙げられます。また、交通機関が整備されて運動量が減ったことも原因のひとつとなっています。
さらに、社会的なストレスが増していることも、糖尿病を引き起こす遠因になっているのではと言われています。ストレスによって食べ過ぎてしまったり、お酒の量が増えたりして、糖尿病になってしまったという人も多いようです。
学歴や収入も糖尿病に関係!?
全日本民主医療機関連合会(民医連)が2013年に行った調査では、20~40歳で重篤な糖尿病を発症する例が増えているという報告がありました。
この調査では患者さんの学歴や職業についても詳しく聞き取り調査を行っています。それによると、20~40歳の患者さんの14.7%が、中学校が最終学歴でした。同世代の高校進学率の平均が97%ですから、飛び抜けて学歴が低いということが分かります。
仕事の雇用形態を見ても、正規雇用が56.5%で半数近くが不安定雇用。それに伴って、収入も低くなっていました。
民医連ではこの結果を受けて、「低学歴なために非正規雇用で長時間労働しなければならず、生活習慣が乱れて肥満になり、糖尿病の発症につながっているのでは」と推測しています。
世界的にも糖尿病患者数が増加傾向に
糖尿病患者数の増加は、日本に限ったことではありません。世界保健機関(WHO)によると、全世界の糖尿病有病者数は4億2,200万人。1980年の1億800万人から4倍近くに増えているとされています。
これには、発展途上国での糖尿病有病者数の増加が大きく関わっています。急速な都市化によってデスクワークの仕事が増え、運動不足を引き起こしていること。さらに、食生活の変化。そして、知識不足による糖尿病発見の遅れや治療の遅れが原因とされています。
この傾向は国連でも危惧されていて、2007年には国連決議によって毎年11月14日を「世界糖尿病デー」とすることが定められました。
まとめ
糖尿病は、毎日の生活習慣を見直すことで改善が期待できる病気です。そのためにも、糖尿病について正しい知識をもつことが大切です。
「自分だけは大丈夫」などと思わず、改めて生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。また、早期発見のためにも、年に一度は定期健診を受けるようにしたいものです。
糖尿病チャンネルでは、これからも正しい情報を皆さまにお届けできるようにガンバります。