子供の糖尿病と言えば、小児糖尿病とも呼ばれる1型糖尿病がよく知られています。しかしここ最近、中高年の生活習慣病で知られている2型糖尿病の子供が増えてきているのです。
2型糖尿病を発症する子供は肥満であることが多く、脂質や糖質の多い食品の摂りすぎや運動不足、子供一人でご飯を食べる孤食、朝ごはんを抜く欠食などの生活習慣に原因があります。
今回は、子供の1型糖尿病と2型糖尿病の特徴を理解し、孤食が肥満や血糖値を上昇することについて、また、子供の糖尿病の治療で大切となる自己管理の継続について、詳しく学んでいきましょう。
増加する子供の糖尿病
大人の糖尿病は、高血圧や脂質異常症とならぶ生活習慣病のひとつとして一般的にも広く認知されています。しかし、子供の糖尿病はあまり頻繁には見られない病気として捉えている方も多いのではないでしょうか。
最近では子供の糖尿病は決して珍しい病気ではなくなってきているのです。
子供の糖尿病のタイプ
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。大人に多くみられる生活習慣から発症する糖尿病は2型糖尿病です。
ここで、1型糖尿病と2型糖尿病のそれぞれの特徴をおさえておきましょう。
子供の1型糖尿病
1型糖尿病は小児糖尿病とも呼ばれ、小児や25歳以下の若い方に発症することの多い糖尿病です。1型糖尿病はインスリンをつくる膵臓の細胞が破壊され、インスリンの分泌がなくなることで発症します。
1型糖尿病は、生活習慣とは関係なく発症する先天的な要素が主な原因の病気です。糖尿病全体の約5%が1型糖尿病にあたるとされています。
増加する子供の2型糖尿病
子供の糖尿病というと、1型糖尿病が主とされてきましたがここ最近2型糖尿病を発症することもが増加しています。特に、子供自身に自覚症状のないまま学校の尿検査で見つかるケースが多いと言います。
さらに、なかには急激な高血糖をきたし、意識障害や昏睡状態となって発見されるケースもあります。
子供の2型糖尿病は肥満を伴う
子供の2型糖尿病患児では約7~8割に肥満がみられます。
肥満がみられる場合には、糖尿病になりやすい体質や食事・運動の習慣があることに加えて、内臓脂肪が蓄積し、インスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)が高まって高血糖となる(メタボリックシンドロームの進行による糖尿病)ことが主な発生機序として考えられています。
肥満を伴わない場合は、インスリンの分泌低下によって高血糖がみられると考えられています。
治療は肥満がある場合は目標体重までの減量が必要となります。食事や運動の生活習慣を見直し、バランスの良い食事を適量摂って、日常生活の中で動く機会を増やすことが基本の治療です。
食事や運動での血糖コントロールの改善がみられなければ、状態に合った薬物療法も並行して行われます。
急増する子供の糖尿病まとめ
- 小学校・中学校の尿検査で発見されるケースが多い
- 2型糖尿病の子供の約7~8割が肥満
- 肥満がある場合には内臓脂肪の蓄積からインスリン抵抗性が生じ、高血糖となる
参考文献1:小児慢性特定疾病情報センター 2型糖尿病
参考文献2:小児慢性特定疾病情報センター 1型糖尿病
子供の1型糖尿病と2型糖尿病の割合
9歳未満(小学校低学年以下)で発見される糖尿病はほとんどが1型であり、9歳~18歳未満(小学校中学年以上)で発見される糖尿病は2型糖尿病の割合が増え、ほぼ同等となります。中学生以上では2型糖尿病が多くなるといわれています。
参考文献1:平成14年・平成17年・平成20年・平成23年・平成26年患者調査統計表
参考文献2:日本イーライリリー(株) 東京女子医科大学 糖尿病センター
子供の糖尿病が増えている原因
低年齢の子供では1型糖尿病がほとんどですが、小学校や中学校の尿検査で2型糖尿病が発症されるケースが増えています。
子供の2型糖尿病が増えてきているのには、「肥満傾向の子供が増えてきていること」が原因にあります。肥満は偏った食生活と生活リズムの乱れ、運動不足、ストレスから起こります。
子供を取り巻く環境も変化しており、欠食(朝ごはん抜き)や孤食(一人でご飯を食べる)を経験している子どもの数が増えています。欠食や孤食は肥満や高血糖をもたらし、2型糖尿病を発症する子供が増えてきているのです。
それでは、具体的な原因をそれぞれみていきましょう。
原因その1:偏った食生活
ファーストフードやコンビニエンスストアなどの店が増え、子供たちはいつでも清涼飲料水(ジュース)やスナック菓子、ホットスナック(からあげやポテトなどの揚げ物類)などの脂質や糖質の多い食品を口にすることができます。
不規則な時間に間食をすることや、寝る前に食事をすること、過剰に糖質や脂質(特に動物性脂質)を摂ること、食物繊維の摂取不足(野菜の摂取不足)などで内臓脂肪が蓄積しやすくなり、子供でもメタボリックシンドロームを発症します。
ペットボトル症候群にも注意が必要
また、1日のうちに清涼飲料水を水分代わりに大量に飲むことで高血糖となり、意識障害をきたすペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)にも注意が必要です。
ペットボトル症候群は、肥満傾向にあり高血糖気味であることに気付いていない人に起こりやすいとされています。
原因その2:生活習慣の乱れ
子供を取り巻く環境は変化しており、夜遅くまでの習い事やテレビの視聴で夜型の生活を送る子供が増えています。夜型の生活になると朝起きる時間が遅くなり、朝ごはんを抜いて学校へ来る子供たちもいます。朝ごはんを抜くと、昼食後、夕食後の血糖値が上がりやすくなります。
朝食を抜くことや、不規則な時間の間食・食事は血糖値を上昇させ、代謝が悪くなり肥満につながります。
原因その3:室内で遊ぶ時間の増加
他にも、外で思い切り身体を動かして遊ぶ代わりにゲームやスマートフォンの普及によって家の中で遊ぶ時間が増えていることも原因のひとつです。
夜更かしをせずに早寝早起きをして、外で身体を動かす機会をつくり、生活のリズムを整えることが大切です。
孤食がもたらす子供の糖尿病
上記のように、生活環境の変化や偏った食生活が子供の糖尿病の原因とされています。しかし、これらの原因の根本には子供の孤食が大きく関わっています。共働き世帯が増え、朝食や夕食を一人で食べている子供は少なくありません。
孤食によって、子供が好きなものだけを食事として摂ったり、夜遅くまでゲームをしながらスナック菓子を摂ることにつながります。
子供の孤食と高血糖・糖尿病の関係
子供一人だけでご飯を食べると、偏食につながるだけでなく早食いになりやすいことをご存知ですか?
好きなものだけを食べていると、栄養バランスが偏って肥満へとつながります。早食いをすると満腹を脳の満腹中枢が感知する前に食べ過ぎてしまうので、肥満のリスクが上がります。
また、早食いをすると食後の血糖値が上がりやすくなり、インスリンの分泌がたくさん必要となります。早食いを繰り返すうちに血糖値の上昇にインスリンの分泌が追い付かなくなり、膵臓の機能が低下してしまいます。
膵臓の機能が低下するとインスリンの分泌量低下やインスリン抵抗性(インスリンの効きが十分でなくなること)が生じて2型糖尿病を発症するリスクが上がります。
また、海外の研究では孤食、睡眠不足、テレビを見る時間が多い子供で肥満の割合が多いという結果も得られています。
図1 子供の2型糖尿病が増加している原因
参考文献1:子供の糖尿病予防はまずは食事から
参考文献2:子どもの食生活は大丈夫?
子供の糖尿病は自己管理と治療継続が大切
子供のうちに糖尿病を発症すると、大人よりも長い期間を糖尿病と付き合っていくこととなります。血糖コントロールを行い、糖尿病の合併症を予防することが目標となります。
そのためには血糖コントロールや毎日の食事・運動といった自己管理が重要となってきます。特に子供の場合、自己管理を継続するために家族の協力や周りの理解が不可欠です。
2型糖尿病では食事と運動を中心とした生活習慣の改善を家族も一緒に取り組んでいくことが大切です。
子供の2型糖尿病:治療のポイント
2型糖尿病は大人と同じように子供でも生活習慣から発症することが多いので、治療の基本は食事療法と運動療法です。子供の生活習慣は、一緒に住む家族の生活習慣・食生活の影響を大きく受けます。家族みんなで生活のリズムや食生活を見直し、改善していくことが大切です。
肥満がある場合は目標体重への減量が必要となりますが、過度な食事制限はストレスとなり、かえって子供の過食やかくれて食べるという行動につながる場合があります。まずはお菓子や清涼飲料水を控えるなど、継続して取り組めることから始め、徐々に食事内容の見直しを図っていきましょう。
日中は家族と一緒に外で身体を動かす時間を持つなど、意識的に多く動くことも大事です。食事も運動も毎日の生活の中で継続していくことが大切なので、無理なく取り組めることから始めていきましょう。
図2 子どもの糖尿病の治療のポイント
まとめ
いかがでしたか?子供の糖尿病増加の背景には、孤食の増加と生活習慣の変化が大きく関わっていることが分かったかと思います。
子供のうちに糖尿病を発症すると、長い期間、糖尿病と付き合っていくこととなり、成長に合わせた治療が必要となります。まずは糖尿病を予防し、家族全体で規則正しい生活習慣を送ることが重要です。
間食や清涼飲料など、簡単に見直すことのできるところから糖尿病予防に取り組むようにしましょう。