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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2022年7月20日【妊娠中の方は要チェック】妊娠糖尿病ってどんな病気?

妊娠中に血糖値が上昇したり、血糖値が高い状態が初めて発見された場合を「妊娠糖尿病」と言います。妊娠の初期に血糖コントロールができていないと母子ともに合併症のリスクが高まります。

ここでは「なりやすい人」「赤ちゃんへの影響」「妊娠時の注意点」などについてご紹介いたします。

妊娠糖尿病って?

赤ちゃんと母親

妊娠糖尿病は、妊娠するまで糖尿病ではなかった方が妊娠してかかってしまう糖代謝異常です。一般的には妊娠前から糖尿病だった方や、妊娠時に糖尿病が発覚した方は含まれません。

今まで糖尿病とは縁のなかった方の10%程度が妊娠糖尿病になっています。産婦人科では妊娠初期には必ず血糖検査を行います。その理由は妊娠糖尿病を早期発見するためです。

妊娠糖尿病の発症の原因は、妊娠中に分泌されるホルモンの影響で血液中の糖の分解が難しくなることで起きると言われています。

妊娠糖尿病とホルモンの関係

私たちの体は、食べ物を消化・吸収しブドウ糖になって血液の中に入り、その後すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが血液中のブドウ糖を体に取り込みます。

妊娠すると、胎盤からインスリンの働きを抑えるホルモン(プロゲステロンなど)が分泌されたり、インスリンを壊す酵素が作られたりするため、インスリンが効きにくい状態になり、血糖値が上昇しやすくなります。

また、妊娠後期の体にはインスリンが大量に必要になります。が、この時にそれに見合ったインスリンが作られないと高血糖になってしまいます。

通常は、これらの状況に体が対応してくれるため、高血糖状態には至りませんが、糖尿病になりやすい体質の人は、必要なインスリンを分泌することが出来なかったり、分泌されていても効きが悪かったりすることで、妊娠を期に高血糖になってしまうことがあります。これが妊娠糖尿病です。

また、妊娠糖尿病はその人が糖尿病になりやすい体質であることを赤ちゃんが教えてくれたサインだとも言えます。出産後に正常に戻ることが多いのですが、「糖尿病になりやすい体質なんだ」という自覚を持つことが大切です。

高血糖は妊娠・出産にリスクを生じる

妊娠糖尿病になると母子共に高血糖になりやすく、様々なリスクが生じて危険です。

  • 母体への影響
    「妊娠高血圧症候群」「羊水過多」「肩甲難産」「胎盤早期剥離」「帝王切開」など
  • 赤ちゃんへの影響
    「流産・死産」「巨大児」「発育不全」「奇形」「低血糖」「心臓病」など

以下の項目に当てはまる人は妊娠糖尿病に注意が必要!

妊娠糖尿病になりやすい特徴です。複数あてはまる場合は血糖値の変化に特に気をつけてください。

  • 身内に糖尿病の人がいる
  • 肥満
  • 妊娠後、急激な体重増加
  • 高齢出産
  • 巨大児分娩既往
  • 原因不明の習慣流早産歴/周産期死亡歴
  • 先天奇形児の分娩歴
  • 強度の尿糖陽性もしくは2回以上反復する尿糖陽性
  • 妊娠高血圧症候群
  • 羊水過多症

妊娠糖尿病は症状が進行するまで自覚症状はほとんどありませんので、妊娠前からの血糖値のチェックなどを行ってください。

妊娠糖尿病が発症してから

妊婦の画像

妊娠糖尿病の場合、血糖コントロールのための薬物療法は、基本インスリン療法です。経口血糖降下剤は、お腹の中の赤ちゃんも薬を服用しているのと同じ状態になってしまうため、皮下で作用するインスリンを使います。

症状が軽ければ出産後に正常に戻ることが多いですが、そのまま糖尿病へと進行してしまうこともあります。また、出産後に、妊娠糖尿病の症状がおさまった人でも、将来、中高年になってから糖尿病を発症することもあります。

妊娠糖尿病の血糖値コントロール

つわりがおさまった中期、後期以降は、食欲が増す時期です。甘いものや脂っこい食事を摂りたくなりがちですが、栄養バランスがとれた和食中心の食生活を心掛けると良いでしょう。

妊娠糖尿病になってしまっても、お腹の中の赤ちゃんが「ママ、将来糖尿病になる可能性があるから、今から気をつけてね!」と教えてくれたと考えて、出産後も糖尿病発症予防につながる生活習慣を心がけて下さい。

    妊娠中の血糖コントロールの目標値(厳格な血糖コントロールが求められます)

  • 血糖値は空腹時が100mg/dl以下、食後2時間が120 mg/dl以下
  • グリコヘモグロビンA1c値=5.8%未満
  • クレアチニン=1.0mg/dl以下
  • 血圧 収縮期=129mmHg以下 拡張期=84 mmHg以下

まとめ

妊娠糖尿病の方の出産には多くの困難がありますが、厳格な血糖値のコントロールができていれば、安全に健康な赤ちゃんを出産することが可能です。

妊娠糖尿病は、体質が影響することが多いため予防することが難しい側面もありますが、妊娠の有無に関係なく、妊娠前から糖尿病にならないような日常生活を送ることはとても重要です。つまり普段からバランスの良い食生活を送ること、適度な運動をすることがポイントです。これらの習慣は妊娠糖尿病対策だけでなく、出産する上でもとても大切なことです。

体を動かすことで、インスリンの効きが良くなり血液中のブドウ糖が効率良く消化されますので、体調に合わせて無理のない範囲で、ウォーキングなど有酸素運動を中心とした運動を行うと良いでしょう。

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