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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年10月13日【静かに進行】放っておくと恐ろしい糖尿病網膜症って?

糖尿病は全身に関わる病気なので、発病するとさまざまな合併症が起こる可能性があります。そのひとつが、糖尿病網膜症。糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害と並んで、糖尿病3大合併症に挙げられるほどポピュラーな症状です。

しかも糖尿病網膜症は、ほとんど自覚症状のないまま進行します。最悪の場合は、糖尿病網膜症によって失明してしまうことも。そんな恐ろしい糖尿病網膜症について詳しく知ることで、その危険性をできるだけ下げてみませんか?

糖尿病網膜症とは

網膜は眼底にあるごく薄い膜で、光や色を感じる神経細胞が敷き詰められています。さらにそこには、各神経細胞に酸素を行き渡らせるための細かい血管が、無数に張り巡らされています。

糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと、全身の血管は少しずつ傷ついていきます。高血糖によって網膜の血管が傷ついたり詰まったりすると、網膜は酸欠状態に陥ってしまいます。すると酸素不足を補うために、「新生血管」と呼ばれる新しい血管が作られていくのです。

進行すると失明の危険性が

この新生血管は応急措置のような存在なので、非常にもろく壊れやすいという特徴があります。そのため、ほんの少しの衝撃で破れて出血を起こしてしまうのです。

新生血管が破れて出血すると、「増殖組織」というかさぶたのような膜ができます。この増殖組織が収縮することで、網膜が引っ張られて網膜剥離を引き起こすことも。網膜がはがれた部分は視野が狭くなり、最悪の場合は失明してしまいます。

糖尿病網膜症の失明率

日本人の糖尿病患者さんの中で、糖尿病網膜症にかかっている人の割合は約15%とされています。つまり日本には、約140万人の糖尿病網膜症患者さんがいるという計算になります。

日本眼科医学会によると、成人してから視覚障害認定を受けた人の約6分の1が、糖尿病網膜症によるものだとか。人数でいうと年間約3,000人が、糖尿病網膜症によって日常生活に支障が出るほどの視覚障害を負っているのです。特に50~60代の視覚障害者のみに限ると、失明原因のトップとなっています。

糖尿病網膜症の進行の3段階

1.単純糖尿病網膜症

単純糖尿病網膜症は、糖尿病網膜症の初期状態です。網膜の血管壁に瘤ができる「毛細血管瘤」や、「点状・斑状出血」と言われる小さな出血が見られます。

また、血管から漏れ出したタンパク質や脂肪が、網膜にシミを作る「硬性白斑」が起こることもあります。この時期はまだ、視力への影響はありません。血糖コントロールで改善することかできます。

ただし、網膜の中心にある「黄斑」という部分に毛細血管瘤や硬性白斑ができると、急激に視力が低下する糖尿病黄斑症になることもあります。

2.前増殖糖尿病網膜症

単純糖尿病網膜症が進行すると、前増殖糖尿病網膜症となります。網膜の血管の閉塞が起こり、新生血管を作り始める準備をしていてる状態です。

この時期になるとかすみ目などの症状が出てきますが、まったく自覚症状がないことも。前増殖糖尿病網膜症の段階で発見できると、手術で高い効果が得られます。

3.増殖糖尿病網膜症

糖尿病網膜症がさらに進行した重度の状態です。新生血管が網膜や硝子体に張り巡らされ、あちらこちらで出血が起きます。

硝子体で出血が起こると、視野に小さなゴミのようなものが見える「飛蚊症」になります。さらに広範囲で出血した場合には、急激に視野が暗くなったり視力が低下したりといった自覚症状があります。増殖組織による網膜剥離が起こるのもこの段階です。

手術で治療することになりますが、手術が成功しても視力が回復しないことがあります。

糖尿病網膜症の治療

眼の異常

糖尿病網膜症の手術というと、主に2種類が挙げられます。レーザー光を使って傷ができた部分を焼き固める「網膜光凝固術」と、顕微鏡を使って増殖組織や出血を取り除く硝子体手術です。

初期の単純網膜症では、血糖コントロールも大切になります。ただし、高血糖の状態が何年も続いている場合は、いきなり厳格な血糖コントロールを始めると網膜症が急速に悪化することも。

また、運動療法の衝撃で眼底出血を引き起こしてしまうこともあります。そのため、医師の指導に基づいて少しずつ血糖をコントロールしていく必要があります。

まとめ

糖尿病網膜症は一般的に、糖尿病の発病から10年ほどで発症するといわれています。しかし、数年程度で発症することもありますし進行度合いも人によって違います。

自覚症状のないまま進行し、ある日突然「ものがかすんで見える」「視野が暗くなった」といった症状を覚えた時にはすでに失明寸前ということも。

ですから糖尿病患者さんは定期的に眼底検査を受けて、なるべく早期に発見することが大切なのです。

必ず主治医の先生にご相談ください。
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