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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2022年5月19日【規則正しい生活を】糖尿病と生活リズムの関係を知ろう

「早寝・早起きは健康に良い」ということは誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、頭では分かっていても、仕事の都合上、規則正しい生活が難しいという方も多いのではないでしょうか。

規則正しい生活は、糖尿病治療の力強い後押しになります。今回は糖尿病と生活リズムの関係を掘り下げます。

早寝早起きで糖尿病リスクが減少へ

「早起きは三文の得」「寝る子は育つ」といったことわざがあるように、早寝や熟睡は体に良いと先人たちは信じていました。実際、東の空から昇るオレンジ色の朝日を目の当たりにすると清々しい気持ちになった経験はありませんか?

朝日の効果として、朝一番に太陽の光を浴びると体内時計が一度リセットされます。そして、体内時計がきちんと動き始めることでその日は一日中快適に過ごすことができ、日が沈み夜になると眠くなるというサイクルが定着します。

体内時計と糖尿病の関係

もう少し詳しく説明すると、人間の体には体内時計が組込まれており、規則正しく交代する昼夜のリズムをベースに、ホルモンの分泌、消化・吸収などの生理現象が毎日同じように働きます。糖尿病学会でも、糖尿病の治療には早寝・早起きが大切であり規則正しい生活がポイントと力説しています。

朝食が糖尿病のリスクを軽減

糖尿病治療中の方は、体内時計のリズムを一定にし、さらに1日3食バランスのとれた食事を規則的にとることを心がけてください。3食の中でも特に朝食を食べることを意識してください。

朝食を抜くと、次の食事まで空腹が続き、栄養バランスの偏ったムラ食い、2食分食べるといったドカ食い、間食などにつながりやすくなります。夜遅くまで残業がある方は、夕食と夜食の2食をとったり、深夜近くに糖質や脂質の多い食事をとったりする生活になりがちです。その場合、適量の夕食が難しいでしょう。

朝食抜きは糖尿病に悪影響を与える

朝食をしっかりと食べていれば、日中空腹感に耐えきれないということは少ないはずです。朝食を抜くと、その後の食事での血糖値上昇が高く、血糖調整ホルモン・インスリンの分泌量が多くなります。また、インスリンの効きめを悪くする遊離脂肪酸の濃度も高くなります。「朝食抜き」は、糖尿病治療に悪影響は与えていると覚えておいてください。

9時に朝食をとる場合は、血糖値がまだ完全に下がりきらないうちに次の食事が入ってくるので、血糖値が高いままになってしまいます。こういった場合は、無理に昼食をとらずに時間をずらすとよいでしょう。食事と食事の間は、4時間はあけてください。

実験で明らかに!夜更かしは糖尿病と大きく関係

糖尿病と睡眠の関係

夜更かしする男性は「糖尿病」の改善も進まず、老化が進むということが韓国の医療チームが報告しています。約1,600人(47~59歳の男性)を対象に、睡眠習慣のヒアリングを行い、その後に健康診断を受けました。

参加者1,600人を「95人は夜更かし」、「480人は早起き」、「1025人は中間」と三つのグループに分けました。それによって得られたデータを解析・分析すると、夜更かしグループは平均年齢が低かったにもかかわらず、早起きグループより体脂肪率や血中脂質が高いことが明らかになりました。

夜更かしのリスクは糖尿病だけでない

また夜更かしグループは、老化によって加速する「サルコペニア」の傾向も高いという結果が報告されています。サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少を指します。つまり、夜更かしは糖尿病の治療も改善されず、老化も進むとはまさに踏んだりけったりです。

さらに認知症、脳卒中、心臓病、高脂血症、高血圧などのリスクも上昇すると言われております。不規則な生活は糖尿病リスクが上昇します。血糖値が高めの方は最低でも6時間以上、できれば8時間程度の睡眠をとるように心がけましょう。

参考サイト:Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism』(オンライン版4月1日より)

規則正しい生活リズム・睡眠が血糖値改善の近道

大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章教授らの研究によると、 糖尿病の血糖コントロールが悪化することで睡眠の質の劣化を伴う睡眠障害が引き起こされることが分かっています。糖尿病患者は、肥満に伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群を除いた場合でも一般人に比べ約2倍の不眠の症状があったそうです。

睡眠ホルモン「オレキシン」と糖尿病の関係って?

糖尿病治療において、目覚めと眠りを制御する脳内物質「オレキシン(orexin)」が鍵を握っていると言います。オレキシンとは食欲の増進、睡眠と覚醒の制御、交感神経の活動の促進などの効果があるホルモンです。オレキシンは、生活リズムを整える効果があり、睡眠との結びつきも密接なことから、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。

現在大阪市立大学ではオレキシン阻害薬と糖尿病患者の効果を解析中。研究途中ですが、睡眠障害による交感神経系の活動性低下や血糖コントロール改善が確認されています。

また別の報告では、オレキシンの研究を行っている生理学研究所によると、夜中に食事をしてすぐ寝てしまう と、オレキシンによって促される筋肉での糖の利用が抑制され血糖がより上昇することが分かっています。上昇した血糖は筋肉ではなく脂肪組織などに 蓄えられ、肥満の原因になる可能性があります。

参考サイト:
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140926150444628
http://news.mynavi.jp/news/2015/04/16/486/

糖尿病と生活リズムにおける関係が実験で明らかに

糖尿病と生活リズムの関係2

生活習慣病と糖尿病発症の研究結果

眠りと糖尿病は大きく関係していることが分かっています。「睡眠不足」と「体内時計のリズムの狂い」が組み合わさるとは、2型糖尿病などの生活習慣病の発症の危険性が高まるという研究をアメリカのブリガム・アンド・ウィメンズ病院(ボストン)のOrfeu Buxton氏らが米科学誌「Science Translational Medicine」に発表しています。

Buxton氏の研究では、睡眠サイクル、食生活、身体活動などを管理した実験室の環境におき、約6週間にわたり体の変化を調べました。その結果、睡眠制限と慢性的な概日リズムの障害は、どちらも糖代謝の異常をもたらすことが分かりました。

日本の研究でも明らかに

日本でも、富山大大学院医学薬学部の笹岡利安教授らの研究グループが規則正しい生活を送ることが、糖尿病防止や改善につながることを、米科学誌「ダイアベティス」電子版に掲載しています。規則正しい生活を送ると、食事で取ったエネルギーを消費したり蓄えたりする肝臓の糖代謝を促し、インスリンが効きを向上させることも発表しています。

夜にしっかり寝ることは、体調を整え、糖尿病のリスクを減らすことにつながります。規則正しい生活と、十分な睡眠が体には一番の栄養なのです。体内リズムに合わせて規則正しい生活を送ることが、糖尿病の予防や改善に結びついていくのです。

まとめ

生活リズムの乱れが糖尿病を引き起こす要因の一つです。規則正しい生活は、血糖コントロールを正常に促します。規則正しい生活とは、「早寝・早起き・朝ごはん」となります。

規則正しい生活にすることで、食事で取ったエネルギーを消費したり蓄えたりする肝臓の糖代謝を促し、インスリンが効きにくくなるのを防ぐと言われています。糖尿病治療中の方も、予備軍の方もぜひ生活リズムの改善を心がけてください。

必ず主治医の先生にご相談ください。
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