【基準別に対応】血糖値と基準値について正しく知ろう

糖尿病の基礎知識
【基準別に対応】血糖値と基準値について正しく知ろう

血糖値は食事や運動、睡眠など、日常の生活習慣に大きく左右されます。健康診断で数値が高めと指摘されたり、生活習慣の乱れを感じていたりしても、正しい知識と早めの対策で改善を目指すことができます。

この記事では、血糖値の基準値やチェックのポイント、生活の中で注意したいこと、異常が見つかったときの対応を解説します。

血糖値とは何の値なのか

血糖値の基準について

血糖の「糖」は血液内に含まれるブドウ糖のことを指します。その血糖量をコントロールしているのがインスリンです。インスリンが不足すると血液中のブドウ糖の量が多くなり、高血糖と呼ばれる状態になります。逆にインスリンの分泌量が多すぎると、低血糖になります。

高血糖の状態が続くと、糖尿病が疑われます。反対に血糖値が低すぎると低血糖症などの病気の可能性があります。血糖値は高すぎても低すぎても良くありません。

血糖値は一日の中でも変化する

また、血糖値は常に一定の値を保っているものではありません。健康な人であっても、空腹時には低くなり、食後には高くなります。食事をとると炭水化物が体に吸収され、ブドウ糖となって血液中に出てきます。

ブドウ糖は脳や筋肉を動かすエネルギーとなる物質ですから、血糖値が低すぎると人間は動けなくなってしまいます。食後に血糖値が上がるのは、正常な体の反応なのです。

血糖値の異常によって疑われる病気

「血糖値が高いと、糖尿病の疑いがある」というのは、一般的に知られていることです。しかし高血糖という症状が出るのは、糖尿病の場合だけではありません。

なかには体質や遺伝的な要因で、生まれつき高血糖の人もいます。また、糖尿病以外の病気で高血糖状態になることもあります。高血糖で疑われる病気には、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、膵炎、肝炎、肝硬変、クッシング症候群などがあります。

逆に血糖値が低すぎる場合には、膵臓腫瘍(インスリンノーマ)、糖原病、肝臓がん、副腎機能低下症、ガラクトース血症などが疑われます。さらに肝硬変などでは、人によって高血糖になる場合と低血糖になる場合があります。

血糖値の基準値について

日本糖尿病学会では、正常な食後血糖値の範囲を70~140mg/dlとしています。これが血糖の基準値です。さらに細かい基準では、「空腹時の血糖値が110mg/dl未満、食後2時間の血糖値が140mg/dl未満」の場合を正常型としています。ただし、両方の条件を満たしているからといって、安心はできません。

正常型の範囲内でも、空腹時の血糖値が100~109mg/dl以下だと、「正常高値」に分類されます。これは、糖尿病になる可能性が高い状態といえます。反対に、正常型の範囲から少しでも外れていたからといって、すぐに糖尿病の診断が下るわけでもありません。

「空腹時の血糖値が110~126mg/dl」だと空腹時高血糖、「食後2時間の血糖値が140~200mg/dl」だと食後高血糖となります。この範囲の血糖値は境界型、いわゆる糖尿病予備群とされる状態です。判定の基準は以下のとおりです。

糖尿病と血糖値の判定基準グラフ

妊娠・年齢によって血糖値は変動しやすい

妊娠で血糖値は上がりやすくなる

血糖値は食事だけでなく、年齢によっても変化していきます。特に女性の場合、妊娠や閉経といったタイミングでホルモンバランスが大きく変化します。するとその影響でインスリンのはたらきが低下して、血糖値が高くなってしまうことがあります。

例えば妊娠時は、胎盤で作られるホルモンによって血糖値が上がりやすくなります。そのため妊娠時には、通常よりも幅を持った基準値で判断します。

妊娠中は、空腹か食後かを問わず測定した随時血糖値が100mg/dl以上の場合、「75g経口ブドウ糖負荷試験」などで詳しく検査します。その結果が異常値だった場合、妊娠糖尿病と診断されて治療を始めることになります。

ただし、ほとんどの場合妊娠糖尿病は出産と共に通常の状態に戻ります。

加齢によって血糖値は上がりやすくなる

高齢者と血糖値の関係

人間は誰しも、年をとるとインスリンの分泌が少なくなります。また、インスリン自体のはたらきも悪くなるため、年齢が上がると糖尿病になる確率が高くなってしまうのです。

ただ、高齢になると体の免疫力が落ちて、感染症にかかりやすくなります。肺気腫など慢性の炎症を抱えている高齢者も少なくありません。すると、生体防御のために血糖値が上昇するのです。ですから高齢者の場合「ここからここまでが血糖の正常値」とはっきり決められません。

そのため、高齢者の血糖の基準値は高めに設定されています。空腹時血糖が140mg/dl以上の場合は、糖尿病の疑いありとして、さらに詳しく検査します。

血糖値の正確な判定基準について

血糖値は、直前にとった食事の内容によって大きく変化します。健康診断などで血糖値を計る場合、そういった外部からの影響をできるだけ少なくしなければいけません。そのため、健康診断を受ける際には「前日夜から飲食をしないでください」といった注意がなされています。つまり、健康診断では空腹時血糖を測定していることになります。

糖尿病かどうかを判断するためには、空腹時血糖だけでなく、食後2時間の血糖値も重要になってきます。ところが食後2時間の血糖値は、同じ人でも何を食べたかによって変わってしまいます。好き勝手に食事をしてしまっては、食後2時間の血糖値が基準値内に収まっているかどうかの判断ができなくなってしまうのです。

OGTTによる血糖値測定の判定基準

そのために考えられた方法が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。空腹時の血糖値を測定した後、ブドウ糖75gを溶かした水を飲むことで、食事をしたときと同じ状態を作り出します。そして、30分後、1時間後、2時間後に血糖値を測定して、食後の血糖値の変化を見るのです。

経口ブドウ糖負荷試験では、血糖値を正常に保つ「耐糖能」と呼ばれる能力を調べることができます。世界保健機関(WHO)の勧告により、検査時のブドウ糖摂取量を75gとすることが決められています。これは世界的な基準となっています。

空腹時血糖値およびOGTTによる判定区分と判定基準は以下のとおりです。

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血糖値を反映するもうひとつの存在、HbA1c

血糖値が基準値を超えていた場合、さらに詳しい検査をして糖尿病かどうか診断します。その診断に用いられるのが、血液中のグリコヘモグロビン(HbA1c)です。HbA1cとは、赤血球の中にあるヘモグロビンと、血液中のブドウ糖が結合したもの。血糖値が高いほど、HbA1cも形成されやすくなります。

赤血球の寿命は約120日です。その間はずっと血液とともに体内を巡りながら、血液中のブドウ糖と少しずつ結合していきます。ですからHbA1cの量を調べると、過去1~2ヶ月間の平均血糖値を知ることができるのです。血糖値が高くてもHbA1cの量が上昇していなければ、体調などの影響による一時的な血糖値上昇と判断されます。

HbA1cにおける目標基値は以下のように定められています。

HbA1cにおける目標基準値

2012年までは、日本ではHbA1cの量が6.0%未満を正常としてきました。しかし、日本糖尿病学会では2012年4月1日より、国際標準値(NGSP値)を使用するが決まりました。

NGSP値では、HbA1cの量が6.5%あると糖尿病の疑いありと診断されます。また、糖尿病合併症予防のための目標値が7.0%未満で、治療効果を上げるためには8.0%未満に抑える必要があるとされています。

血糖値を日常で管理するためのチェック方法

血糖値を安定させるには、日常的な血糖値のチェックと生活習慣の見直しが欠かせません。健康診断の結果を確認するだけでなく、普段の生活の中で自分の変化に気づくことが大切です。

血糖値を日常で管理

血糖自己測定の値を記録する

糖尿病または予備群と診断された方は、自己血糖測定器を活用して血糖値のチェックを行うことで、血糖変動を客観的に把握できます。自己血糖測定器は、指先から少量の血液を採取すると、その場で血糖値を測定できる機器です。

朝食前・夕食前、食後1~2時間後、就寝前の値を確認することで、食事による血糖への影響や一日を通しての血糖変動を捉えられます。

体調の変化に注目する

血糖値の異常は、体のサインとして現れることがあります。喉の渇き、頻尿、疲れやすさ、傷の治りにくさは高血糖のサインかもしれません。反対に、冷や汗や手足の震え、動悸は低血糖の可能性があります。日常の小さな変化を血糖自己測定の結果に記録しておくと、医師への相談時に役立ちます。

記録時は、体調の変化とともに、食事や運動のタイミング、体調の変化の前後に行った行動も記録しておきましょう。

定期的に健康診断を受ける

年1回は健康診断を受け、空腹時血糖値やHbA1c(過去1〜2か月の平均血糖値を反映)を確認しましょう。前年より少しでも上昇していれば、生活習慣を見直すタイミングです。

空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、HbA1cが6.5%以上の場合は糖尿病の可能性が高いとされています。検査結果で「要検査」や「要治療」と記載されている場合は、放置せず早めに医療機関を受診しましょう。

国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター 血糖自己測定について
三重病院 ニュースレター 2017年4月
厚生労働省 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~ 糖尿病

血糖値がブレる原因と気をつけたい生活習慣

血糖値は食事や運動、睡眠など日常生活のあらゆる要素に影響を受けます。原因を知り、生活習慣を整えることが安定した血糖コントロールにつながります。

食事内容と食べ方

糖尿病の食事療法は適量とバランスを保つ食事が基本です。必要な分だけを食べるようにし、食べすぎや栄養バランスの偏りを避けましょう。年齢や活動量に応じた適正な食事量を守ることが大切です。

炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂り、さまざまな食品を取り入れます。塩分の多い加工食品や脂身の多い肉は控えましょう。野菜・きのこ・海藻などで食物繊維を1日20〜25g摂ると、血糖値の上昇を抑えやすくなります。食塩は1日男性8g未満、女性7g未満(透析患者さんの場合は1日6g未満)が目安です。

食品交換表を活用すると、栄養バランスを整えやすくなります。管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事を続けましょう。よく噛みゆっくり食べることも大切です。

運動不足と肥満

肥満

糖尿病の改善には、運動療法・食事療法・薬物療法という3本柱が重要です。なかでも運動は、血糖コントロールや脂質代謝を整え、インスリンの作用を高めるのに役立ちます。

おすすめは、有酸素運動(ウォーキング・速歩など)とレジスタンス運動(スクワット・腕立て伏せなど)の併用です。週3回以上、1回20分以上を目安に「ややきつい」と感じる強さで続けましょう。通勤や買い物の際に歩くなど、毎日の生活の中で自然に体を動かす意識を持つことも大切です。

運動によって内臓脂肪が減ると、インスリンの働きが改善し、血糖値が安定しやすくなります。始める前に主治医に相談し、体調に合った運動を無理なく続けていきましょう。

ストレスと睡眠不足

強いストレスを感じると、コルチゾールというホルモンが分泌され、血糖値が上がりやすくなります。睡眠不足もインスリンの働きを妨げる要因の一つです。少なくとも6時間以上は確保し、翌朝目覚めたときにぐっすり眠れたと感じられる質の良い睡眠をめざしましょう。

喫煙と飲酒

喫煙や過度の飲酒は、血糖コントロールを乱し糖尿病を悪化させる要因です。適量のアルコール(1日20〜25g程度)は発症を抑える可能性がありますが、飲みすぎると血糖値が上昇し、脂質異常症や高血圧を招き、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。長期の多量飲酒は肝硬変や膵炎を起こし、血糖値が不安定になることもあります。糖尿病やその予備群の方は、主治医と相談のうえで飲酒量を調整し、適量を守りましょう。

喫煙は交感神経を刺激して血糖値を上げ、インスリンの働きを妨げます。喫煙者は非喫煙者より2型糖尿病の発症リスクが高くなります。糖尿病を患っている方が喫煙を続けると、治療効果が下がり、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を悪化させることにもなりかねません。糖尿病の予防・改善のため、早期の禁煙と節度ある飲酒を心がけましょう。

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異常が出たときの対応・医療機関への相談ポイント

医療機関への相談

強い喉の渇きや多尿、急な体重減少、視界のかすみ、手足のしびれ、傷の治りにくさなどの糖尿病で見られる症状がある場合は、血糖値が高くなっている可能性があります。

また、健康診断で「要精密検査」「要医療」などの指示があるときは、そのままにせず医療機関を受診しましょう。「要経過観察」とされた場合も、生活習慣を見直し、定期的な健康診断を受けることが大切です。受診の際には、健康診断の結果や家族歴、普段の生活習慣、服薬状況などを整理して伝えると、医師が原因を把握しやすく、より適切な検査、治療を受けやすくなります。

横浜医療センター 健康診断の判定区分

まとめ

血液中に含まれるブドウ糖量は、どんなに多くてもわずか0.1%に過ぎません。しかし、そのわずかな量の変化が血管を通してさまざまな臓器に影響を及ぼすのです。

糖尿病の判断基準のひとつとなっている血糖値。正しい基準値を知って、健康的な生活を送るために役立てたいものです。

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