医療法人による糖尿病患者のためのコラム2022年6月22日意外と知らない!糖代謝異常と糖尿病の深い関係とは
お酒や甘いものが大好きで運動もしない人が健康なのに、健康的な生活をしているはずの自分が糖尿病になってしまった・・・。
そんなことも現実にはあり得ます。糖尿病は食べ過ぎや飲み過ぎといった生活習慣から引き起こる病気ですが、生活習慣はあくまで要因。じつは糖尿病の原因は、「糖代謝異常」という状態なのです。
今回は、糖尿病の原因である糖代謝にフォーカスして詳しくみていきましょう。
そもそも「糖代謝」ってなんだろう?
健康な状態では、食事などで摂取した糖分はエネルギー源となるブドウ糖に変換され、血液によって全身に送られます。
そのときに余ったエネルギーは、肝臓や筋肉などに蓄えられます。食事をしていない時間帯は、その備蓄されたエネルギーが少しずつ血液中に放出されることで、一定の血糖値を保つようになっています。
この働きを司るのが、インスリンというホルモン。そしてこの一連の流れを「糖代謝」と呼ぶのです。
ところが、インスリンの分泌が正常に行われなかったり、インスリンの効きが悪かったりすると一連の「糖代謝」のバランスが崩れてしまいます。そうなった状態を「糖代謝異常」と呼ぶのです。
「糖代謝異常」が起こる原因って?
糖代謝において重要な働きをするインスリン。しかし、十分な量が分泌されていなかったり、量はあっても細胞にきちんと働きかけられなかったりすると、糖代謝異常が起こってしまいます。
インスリンの分泌量が少なくなる「インスリン分泌不全」は、インスリンを分泌している膵臓がうまく働かなくなっている状態です。
十分な量のインスリンが分泌されているにもかかわらず、細胞に働きかけられなくなっている状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。
細胞の表面には「インスリン受容体」と呼ばれる鍵穴のようなものがあり、そこに鍵となるインスリンがはまることで初めて、細胞がブドウ糖を取り込むようになります。
インスリン受容体の感度が悪いと、いくら十分な量のインスリンが分泌されていても、細胞はブドウ糖を取り込むことができません。
この「インスリン抵抗性」の状態が続くと、糖代謝異常になり、血糖値が上がってしまうのです。
「インスリン抵抗性」を招く原因とは?
インスリン分泌と肥満の関係
「インスリン抵抗性」を招く原因のひとつに、肥満があります。肥満になると脂肪細胞が過剰に大きくなり、「TNF-α」や「PAI-1」といった悪玉物質を放出するようになります。
この悪玉物質が、インスリンとインスリン受容体が結合するのを邪魔して、細胞がブドウ糖を取り込みにくくすると考えられています。
インスリン抵抗性によって血糖値が上がっているときは、インスリンを分泌するランゲルハンス島β細胞は元気なので、血糖値を下げようとどんどんインスリンを分泌します。
インスリン抵抗性がさらに下がる悪循環とは
しかし、いくらインスリンがあっても受容体と結合できないので、血糖値はなかなか下がりません。そんな状態が続くと、やがてβ細胞が疲弊して、インスリンの分泌量も減少してしまいます。
インスリンには脂肪細胞の脂肪分解を抑える働きもありますが、インスリンの分泌量が少なくなってくると、脂肪がどんどん分解されていきます。
そのとき、脂肪細胞から放出されるのが、悪玉物質と同じ働きをする「遊離脂肪酸」。その遊離脂肪酸のために、インスリン抵抗性がさらに悪化してしまうのです。
糖代謝異常と糖尿病の関係
糖尿病とは、血液中のブドウ糖の量が多くなり、余ったブドウ糖がそのまま尿に混じって排出される状態です。
なぜそんな状態になっているのかという原因が、糖代謝異常なのです。つまり、糖代謝異常が続いて体の各部に不調が出て、病気として発覚した状態が糖尿病なのです。
糖代謝異常の段階での早期治療が大切!
糖代謝異常が起こっただけでは、糖尿病にはなりません。軽度の糖代謝異常であれば、食事療法や運動によって改善することができます。
糖尿病は、かなり症状が進んだ状態でないと、なかなか発覚しません。痛みや大きな苦痛を伴わないからといってそのまま放置してしまうと、気がついた時には様々な糖尿病性合併症が進行していたということが、決して少なくはないのです。
特に沈黙の臓器と言われている腎臓に現れる合併症「糖尿病性腎症」は、なかなか気が付きにくい合併症の一つです。
「血糖値などの数値には問題があるけれど、まだ糖尿病とは言い切れない」というグレーゾーンのときに発見して、適切な治療を行うことが大切なのです。
まとめ
糖尿病は自覚症状が出にくいため、初期のころに発見するのが難しい病気です。でも、健康診断などで糖代謝異常の兆候となる高血糖を察知できれば、食事の改善や運動などでの予防することも可能です。
できれば定期的に健康診断を受けて、少しでも異常があったら早めに受診して、適切な予防策をとりたいものです。
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