1. Home
  2. Oasisコラム
  3. 食事療法
  4. マグネシウム不足が原因!?糖尿病とマグネシウムの意外と深い関係とは

医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年6月17日マグネシウム不足が原因!?糖尿病とマグネシウムの意外と深い関係とは

ミネラルの一種であるマグネシウムですが、「マグネシウムを摂りましょう」とはあまり聞かず、目立たない栄養素かもしれません。

実は、マグネシウムが不足すると、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクが上がることがわかっています。

今回は、意外と知られていないマグネシウムと糖尿病、そのほかの生活習慣病関係性について詳しく解説したいと思います。

マグネシウムのはたらきや、マグネシウム不足が糖尿病を発症するメカニズムについてみていきながら、マグネシウム不足を解消することで糖尿病のリスクを下げる方法を学んでみましょう。

※この記事には⾷事に関する記述が含まれますが、透析患者をはじめ、基礎疾患のある⽅については、⾷事内容を医師や管理栄養⼠に相談してください。

慢性的なマグネシウム不足が糖尿病リスクを上昇

脂肪やエネルギーの摂りすぎが、糖尿病のリスクを上昇するということは一般的にもよく知られています。

実は、それだけでなくマグネシウム不足も糖尿病のリスクを上昇させることが報告されています。一体マグネシウムと糖尿病の間にはどのような関係があるのでしょうか。

マグネシウム不足と糖尿病の関係をデータで見てみよう

国民の栄養状態と糖尿病の有病率とを見比べたデータによると、マグネシウムを多く含む大麦や雑穀などの摂取量が急激に減ってきた1968年ごろから、糖尿病の有病率が上昇していることが示唆されています。

また、もう一つ注目したいポイントが、塩田法が廃止された1972年以降に糖尿病の有病率が大幅に増えている点です。

塩が塩田法で作られていた時代には、塩には海水に含まれているマグネシウムなどのミネラルが多く含まれていました。しかし、1972年に塩田法が廃止になってからはマグネシウムやカルシウムなどのミネラルを取り去り、精製された塩が作られるようになりました。

大麦や雑穀を摂取する量が減ったこと・マグネシウムを含む塩を摂取しなくなったことにより、特に1972年以降、糖尿病の有病者数は急激に増加したのです。

糖尿病の有病者数はエネルギーと脂肪の摂取量が増えたからと解釈されがちです。

しかし、厚生労働省の平成9年から平成14年までの糖尿病の有病者数の割合(糖尿病の可能性を否定できない者+糖尿病が強く疑われる者)とエネルギー摂取量の詳細なデータを見てみると、糖尿病の有病者数は年々増加しているのに、エネルギー摂取量は年々減少しています。

脂肪摂取量も平成14年では平成9年に比べると減少していますが、糖尿病の有病者数の割合は増加しています。

このことからも、エネルギー摂取量と脂肪摂取量が増えることだけが糖尿病の発症のリスクにつながっているのではないことがうかがえます。

糖尿病発症リスクとマグネシウム摂取量に関する研究

実際に、マグネシウム摂取量と糖尿病のリスクとの関連性についての研究報告もあります。日本・海外問わず、マグネシウム摂取量が増えると2型糖尿病発症リスクが低下することが報告されているのです。

カロリー・脂肪の摂り過ぎだけでなく、マグネシウム不足も糖尿病と深い関係性があることが分かってきています。

参考記事1:わが国における糖尿病推定有病率と生活環境の推移

参考記事2:国民健康・栄養調査

参考記事2:九州大学医学部 久山町研究

マグネシウムと糖尿病の関係

マグネシウムのはたらきと糖尿病の関係

マグネシウムが不足すると糖尿病の発症リスクが高くなることが分かりました。では、一体なぜ、マグネシウムが不足すると糖尿病になりやすいのでしょうか。

まずは、マグネシウムのはたらきについてみていきましょう。

マグネシウムのはたらき

マグネシウムは身体に必須であるミネラルの一種です。成人では、身体の中に約20~30gのミネラルが存在しています。そのうち、約60%は骨や歯に含まれており、残りは脳や筋肉、神経に含まれています。

マグネシウムは酵素を活性化してエネルギー代謝や筋肉や神経の伝達、体温や血圧の調整など、さまざまな代謝に関わっています。マグネシウムが、身体の代謝の調整をスムーズに行う働きをすることにより、血糖が適切に保たれているのです。

マグネシウムは、筋肉や神経の伝達においても、深い関連性があります。マグネシウムが不足すると、糖尿病患者さんでもみられやすいこむら返りの症状が出てきやすくなります。

マグネシウムが不足するとなぜ糖尿病になりやすいのか

マグネシウムが不足すると、血糖にも影響が及びます。マグネシウムには、インスリンがブドウ糖を細胞に取り込む働きを促すはたらきがあるからです。

食事で摂取されたブドウ糖がエネルギーになるためには、インスリンがブドウ糖を細胞の中に取り込むはたらきをする必要があります。

しかし、マグネシムが不足するとインスリンがブドウ糖を細胞内に取り込むはたらきをすることができません。つまり、マグネシウム不足が、インスリンとブドウ糖が過剰に増えることを促すのです。

過剰に増えたブドウ糖は脂肪として蓄積され、過剰なインスリンはインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなる)やインスリンの分泌低下につながり、糖尿病を招くことになってしまうのです。

参考記事1:e-ヘルスネット

参考記事2:2型糖尿病におけるマグネシウムの役割

インスリン抵抗性とマグネシウム

マグネシウムを多く含む食品

不足すると糖尿病の発症リスクを高めることにつながるマグネシウム。実は、日本人のマグネシウムの摂取量は慢性的に不足していると言われています。

マグネシウムはナッツやほうれん草、豆類、雑穀などに多く含まれており、精製された食品の場合、マグネシウムの含有量は少なくなってしまいます。

現代の日本人は、だいたいどのくらい一日にマグネシウムを摂取できているのでしょうか?

日本人のマグネシウム摂取量

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、マグネシウムの推奨量は男性18歳~69歳では340~370mg、女性18~69歳では270~290mgです。

一方、平成28年のマグネシウムの全体の摂取量は238mg、男性20~69歳では222~284mg女性20~69歳では194~259mgでした。つまり、男女ともに推奨量には届いていません。

マグネシウムの推奨量(18~69歳) マグネシウムの摂取量(20~69歳)
男性:340~370mg 男性:222~284mg
女性:270~290mg 女性:194~259mg

参考文献:厚生労働省 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)

マグネシウムを多く含む食品とは

慢性的なマグネシウム不足を解消するために、マグネシムを多く含む商品を積極的に摂りたいものです。マグネシウムは、海藻類、魚介類、豆類、雑穀、ナッツ類、野菜、お茶などに多く含まれています。

マグネシムが多く含まれる食品

海藻類 あおさ・わかめ・あおのり・てんぐさ・こんぶ・ひじきなど
魚介類 かに・かき・さくらえび・いわしなど
豆類 大豆・豆腐・おから・いんげん・油揚げなど
雑穀 米ぬか・そば・オートミール・小麦・玄米・五穀など
ナッツ類 アーモンド・あさ・あまに・けし・ごま・カシューナッツ・くるみなど
野菜 かぼちゃ・すいか・バジル・つるむらさき・切り干し大根・干しぜんまい・しそ・かんぴょう・乾燥しいたけなど
果物 バナナ・乾燥いちじくなど
お茶 抹茶・緑茶・煎茶・紅茶・インスタントコーヒー・ピュアココアなど

精製していない玄米や全粒粉などにマグネシウムは多く含まれており、白米が主流になる前の日本では、普段の食生活からマグネシウムを摂る機会が多かったのです。ですが、現在の日本は食の欧米化や生活スタイルの変化などから、雑穀類を主食として食べていた頃に比べてマグネシウムの摂取量が少なくなっています。

「玄米や全粒粉の主食を摂る」こと、「マグネシウムが多く含まれる海藻類や豆類、野菜などを副菜で積極的に摂る」こと、「おやつにバナナやナッツ類を摂る」、「煎茶や緑茶を積極的に飲む」など、普段の食生活の中にマグネシウムを多く含む食品を意識して取り入れてるようにしてみましょう。

とくに「雑穀類から食物繊維とマグネシウムを摂ることが、糖尿病の発症リスクを下げる」とも言われています。玄米や雑穀を積極的に普段の食生活に取り入れる工夫をしたいものですね。

マグネシウムと栄養素

マグネシウム摂取は生活習慣病予防にも効果的

マグネシウムの摂取不足は、糖尿病の発症リスクを高くするだけではありません。メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満+血糖・脂質・血圧の高値がみられる)とも深い関連性があります。

食生活でのマグネシウムの摂取不足があるとインスリン抵抗性を生じます。また、食生活や運動不足などの生活習慣から起こる内蔵脂肪型肥満も、インスリン抵抗性を生み出します。

インスリン抵抗性があると2型糖尿病だけではなく、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高くなり、動脈硬化を促進させます。

マグネシウムがインスリン抵抗性を生じにくくする

逆にいうと、マグネシウムが必要量摂取できていると、インスリン抵抗性を生じにくくすることができます。つまり、2型糖尿病以外の高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や動脈硬化の促進を予防することにつながるのです。

意識しないと不足しがちなマグネシウムですが、意識して必要量をしっかり摂取することで、糖尿病だけでなく生活習慣病の予防にもつながります。

まとめ

栄養素の中でも目立った存在ではないマグネシウムですが、慢性的に不足すると2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の発症リスクを高め、動脈硬化を促進して心血管疾患のリスクにつながってしまいます。

現代の日本人は精白された白米やパンを主食とするようになり、玄米や全粒粉に多く含まれるマグネシウムを摂る機会が減ったことでマグネシウムが不足しています。

マグネシムが多く含まれる食品をみてみると、海藻や豆類、切り干し大根、干ししいたけ、ほうれん草、かぼちゃなど、和の食材が多くみられます。

海藻や野菜、豆などをバランスよく摂れる和食中心の食生活に見直すことがマグネシウム不足を解消し、糖尿病をはじめとする生活習慣病のリスクを軽減することにつながります。
塩分の摂りすぎには十分注意して食事の内容を改善していきましょう。

必ず主治医の先生にご相談ください。
Oasisコラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。

ニューズレター お申込み