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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年6月4日【密接に関連】糖尿病とがんの意外と深い関係とは?

一見、関係がなさそうに見える糖尿病とがんですが、実は密接な関連があるのです。

糖尿病でみられる肥満やインスリン抵抗性、高血糖、炎症は発がんと密接に関係し、糖尿病を起こしやすい生活習慣ががんのリスクを高めます。

今回は糖尿病とがんの関連性について詳しく学び、糖尿病とがんのどちらも予防する生活習慣についても一緒に確認していきましょう。

糖尿病ではがんのリスクも高まる

糖尿病の方の場合、日本人の死因第一位であるがんになるリスクが高まると言われています。糖尿病とがんとは全く別物の病気のように思えますが、実は密接に関係しているのです。

特に糖尿病の中でも、主に2型糖尿病ががんの発症に関連しています。

糖尿病があるとリスクの高くなるがんの種類

国内や海外で報告されている研究によると、糖尿病ではがんのリスクが20%程度高いことが言われています。

がんの種類では大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がん、子宮内膜がん、膀胱がんが糖尿病との関連があり、リスクが上昇するとされています。

糖尿病の場合にがんになるリスク割合

糖尿病がない人に比べて糖尿病の既往がある日本人では、男性は何らかのがんになるリスクが1.27倍、女性では1.21倍高くなるとの報告があります。

男性では肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、大腸がん、胃がんのリスクが高くなり、女性では肝臓がん、胃がんのリスクが高くなるとされています。また、女性の場合、子宮内膜がん、卵巣がんのリスクが高くなる傾向もみられます。

リスクが高くなるとされるがんの種類は研究によってバラバラですが、日本人で糖尿病があり、がんになるリスクが高くなると一定の結論を得られているがんの種類は、大腸がん(1.40倍)、肝臓がん(1.97倍)、膵臓がん(1.85倍)です。

男性では胆管がん(1.66倍)においてもリスクが高くなるとされています。他のがんについては一定の結論が得られるに至っていません。
糖尿病とがんの関係
参考文献1:糖尿病と癌に関する委員会報告
参考文献2:糖尿病とがんの関係

糖尿病の場合がんにかかりやすい理由

糖尿病であるとどうしてがんになりやすくなるのでしょうか?その理由はまだはっきりとは分かっていませんが、考えられている理由はいくつかあります。

糖尿病によって「肥満が合併しやすくなること」、「インスリン抵抗性が生じること」、「血糖値が高くなること」、「炎症」が関連して、がんのリスクを高めると言われています。

肥満の合併

2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足、生活習慣によって起こり、肥満が合併することが多くあります。

肥満はがんのリスクを確実に上げ、食道がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸がん、閉経後の乳がん、子宮底部がん、腎臓がんのリスクを上げると言われています。

では、なぜ肥満はがんのリスクが上がるのでしょうか。がんと肥満の関係についてもみていきましょう。

エストロゲン(卵胞ホルモン)がつくられる

乳がんや子宮底がんは、エストロゲンというホルモンによって増殖します。脂肪組織からエストロゲンがつくられることにより、肥満の人は乳がんや子宮底がんのリスクが高くなると言われています。

肝臓の細胞の老化を進める

肥満になると肝臓の細胞が傷つけられて老化が進み、炎症性サイトカインなどの物質が作り出される現象が起こります。その現象により、発がんが促進されて肝臓がんになるリスクが高くなるとされています。

インスリン抵抗性が生じる

肥満があるとインスリンの作用が効きにくくなるインスリン抵抗性がみられます。

インスリン抵抗性が生じると、インスリンをたくさん分泌して補おうと身体が働くため、血液中のインスリン濃度が高くなります。

インスリンは細胞を増殖させるホルモンであるため、インスリンの濃度が高くなることでがんの増殖を促します。よって、がんの発症リスクが高くなると考えられています。

血糖値が高くなる

血糖値が高くなると、身体に害を及ぼす酸化ストレスが亢進します。

健康な人の場合、酸化ストレスを防ぐ抗酸化作用のバランスが保たれています。しかし高血糖の場合、がんや老化、動脈硬化といった害をもたらす酸化ストレスが亢進することで、がんのリスクを高めると考えられています。

炎症

糖尿病で肥満があると全身に慢性的な炎症がみられます。炎症は発がんに関与すると考えられており、がんの発症リスクを高めます。

糖尿病では膵臓がんのリスクが2倍に

上記のように、糖尿病はがんの発症リスクを高めることがわかりました。

また、中でも糖尿病の人は、膵臓がんになるリスクが2倍になるという報告もあります。

膵臓は沈黙の臓器とも呼ばれているように、身体の奥深くにあり痛みなどの症状がほとんど出ない臓器です。がんを早期に見つけることが難しく、症状が出てきたころにはすでにかなり進行していることも多くみられます。

血糖コントロール不良の症状は膵臓がんのサインかも

また、血糖コントロール不良が膵臓がん発症のサインとなっている場合もあります。

ある海外の研究では、2型糖尿病の人が膵臓がんを発症した際、急激に血糖コントロール不良となったという結果もあります。

急に糖尿病を発症した場合や糖尿病の症状が悪化した場合には、膵臓がんが原因のこともあるので注意が必要です。このように、糖尿病と膵臓がんはかなり密接な関係にあると言えます。

参考文献1:がんの発生要因

参考文献1:糖尿病と癌に関する委員会報告

糖尿病とがんの関係

糖尿病予防ががん発症リスク低下につながる

糖尿病とがんは、似たような生活習慣が原因して発症します。そのため、糖尿病を予防するための行動が、がんの発症率を低下させることにもつながります。

ここでは糖尿病とがんで共通するリスクファクターを確認し、具体的な予防法を学んでいきましょう。

糖尿病とがんの共通するリスク要因

糖尿病とがんとでは発症しやすいとされる要因に共通のリスクがみられ、主に以下の要素が糖尿病とがんの発症リスクを上げます。

  • 加齢
  • 性別
  • 遺伝
  • 肥満
  • 偏った食生活(赤肉・加工肉の摂取過剰、野菜・食物繊維の摂取不足)
  • 運動不足
  • 不規則な生活
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

糖尿病とがんの予防

がんと糖尿病を合併していると、がんの手術後の傷が治りにくく、感染症にかかりやすくなります。さらに抗がん剤も効きにくくなることがあり、がん患者にとっても糖尿病を予防することは大切です。

糖尿病とがんの予防には、生活習慣の見直しが大切です。

健康を維持する適正体重の維持、食生活、禁煙、身体を動かす、節酒の5つの生活習慣の実践が糖尿病とがんの予防につながります。

適正体重の維持

肥満であると糖尿病もがんもリスクが上がります。特に女性では、閉経後の肥満ががんのリスクを上げるので適正体重の維持に努めましょう。

食生活

赤肉や加工肉の食べ過ぎ、野菜・果物・食物繊維・魚の摂取量不足、糖質の摂りすぎは糖尿病とがんのリスクを上げることが言われています。

適正なエネルギー量の範囲で炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラル・ビタミンをバランス良く摂れるように、いろいろな食品を組み合わせて食事を摂るようにしましょう。

禁煙

喫煙は血糖を上げ、インスリンの働きを妨げ、糖尿病のリスクが高まります。また、タバコを吸わない人に比べて喫煙する人では、1.5倍がんになるリスクが高いことが言われています。

喫煙している人は禁煙することと、タバコを吸わない人も他人の副流煙を吸わないようにタバコの煙は避けるようにしましょう。

身体を動かす

身体を動かす機会を持つことは糖尿病やがんのリスクとなる肥満の予防になります。また、血糖を下げ、循環をよくし、体力・持久力・筋力を維持・向上して身体を健康に保つ効果もあります。

運動も含めて日常生活で身体をよく動かすことは、血糖コントロールを良好に保ち、がんのリスクも低下につながります。

まずは今よりも10分身体を多く動かすことから始め、週に30分以上・3日以上の運動習慣を持ちましょう。

節酒

多量の飲酒は糖尿病の発症リスクを高くし、肝臓や膵臓の障害を招きやすくなります。肝障害や膵障害があると血糖コントロールが悪くなります。

1日の飲酒が純エタノール量23g未満(日本酒1合、ビール500ml程度)の人に比べて2倍飲む人では約40%、3倍飲む人では約60%、がんになるリスクが高くなると言われています。飲酒する人は1日純エタノール量23g未満とするようにしましょう。

女性は男性よりも少ない量の飲酒でがんのリスクが上がりますので、23gの半量程度にとどめておきましょう。

参考文献1:糖尿病情報センター

参考文献2:がんサポート

糖尿病・がんと生活習慣の関係

まとめ

今回は意外と知らない糖尿病とがんの関係性・予防法についてみていきました。

糖尿病とがんとはどちらも生活習慣から起こる生活習慣病であるため、糖尿病にならないための生活習慣が、同時にがんのリスクを下げることにつながります。

特に、先程述べた5つの生活習慣を見直し、糖尿病とがんを一緒に予防するようにしましょう。糖尿病にすでになっている、がんをすでに発症している方でも、5つの生活習慣を実践することで血糖コントロールを改善することや、抗がん剤の効きをよくすることにつながります。

まずは取り入れられる生活習慣の見直しから始め、糖尿病とがんのリスクを同時に下げることにつなげましょう。

必ず主治医の先生にご相談ください。
Oasisコラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。

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