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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年8月19日糖尿病治療に夢の新薬?「SGLT2阻害薬」の効果と副作用

つい最近まで、糖尿病の薬というと「インスリンの分泌や働きをよくする」か「血糖の上昇を抑える」ものでした。しかし、2014年4月にまったく新しいタイプの糖尿病治療薬が登場しました。それが「SGLT2阻害薬」です。

この新薬は、いったいどんな働きをするものなのでしょうか?SGLT2阻害薬の効果や副作用などについての知識をしっかり頭に入れておきましょう。

新薬SGLT2阻害薬ってどんな薬?

糖尿病の症状のひとつに、「糖分が尿に混じって排出される」ことがあります。ですから医学的には、尿に糖分が混じることイコール「ダメな状態」とされてきました。

その考え方を180度転換したのがSGLT2阻害薬です。そもそも糖分が尿に混じって排出されるのは、血中のブドウ糖濃度が高くなりすぎているから。ならば、余分な糖分を積極的に排出してしまえばいい、という考えから生まれたのがSGLT2阻害薬なのです。

そもそもSGLT2とは?

SGLT2を日本語でいうと「ナトリウム・ブドウ糖共輸送担体2」となります。SGLT2が存在するのは、腎臓の尿細管という部分。人体に必要な成分が排出されてしまわないよう、尿の中からナトリウムやブドウ糖を再吸収する役割を持っています。

SGLT2阻害薬は、その再吸収の働きを止める薬です。そのためSGLT2阻害薬を服用すると、過剰な糖分は尿と一緒に排出されるようになります。

腎臓のイメージ

SGLT2阻害薬のメリット・デメリット

SGLT2阻害薬を服用すると血糖値が下がって安定します。血液中のHbA1cの値や血圧も下がります。エネルギーとなる糖分が体外に排出されるので、体重の減少も期待できます。

糖尿病患者さんにはメリットだらけのようですが、もちろんデメリットもあります。日本糖尿病学会によると、今までに副作用として脱⽔・脳塞栓・低血糖・全身の発疹などが報告されているそうです。

副作用のリスクを減らす予防策

SGLT2阻害薬は、糖分を尿と一緒に排出する薬です。そのため、食物から摂取する糖分が増えれば、尿の量も増えることになります。

排出される尿量が増えると、体内の水分が不足しがちになります。その結果、血栓ができやすくなり脳塞栓を引き起こすのです。SGLT2阻害薬を服用する場合は、脳梗塞を予防するためにも意識的に水分補給をするようにしましょう。

また、尿内の糖分量が多いと尿路・性器感染症の発症リスクも高まります。SGLT2阻害薬の服用中は、特に陰部の清潔を心がける必要があります。

SGLT2阻害薬が向いてる人と向いてない人

肥満・メタボの方にオススメの治療薬

SGLT2阻害薬は、肥満となっている糖尿病患者さんには大変有効な薬です。血中のブドウ糖濃度が下がりインスリンを大量に分泌しなくてもよくなるので、膵臓の負担も減らすことができます。

しかし、痩せている患者さんやインスリンの分泌がほぼない1型糖尿病患者さんは注意が必要です。そういった患者さんがSGLT2阻害薬を服用すると、体がエネルギー不足になってしまうことも。

するとケトアシドーシスを引き起こし、吐き気・めまい・頻脈・異常な眠気・だるさといった症状が出るだけでなく、最悪の場合は昏睡状態に陥ってしまいます。

また、SGLT2阻害薬は腎臓に作用する薬です。腎機能が低下している患者さんは、SGLT2阻害薬の働きが弱くなるので注意が必要です。ただ、腎機能を悪化させることはないので服用自体は可能です。

まとめ

考え方の転換によって生まれたSGLT2阻害薬は、一部の糖尿病患者さんにとっては夢のようなに薬といえるでしょう。一方、副作用やリスクもあるため、医師の指導に従って服用することはもちろん、危険性を十分に把握しておく必要があります。

さらに、SGLT2阻害薬を服用していることで安心してしまい、食事療法や運動療法を怠ってしまうケースも。これでは糖尿病治療薬としての意味がありません。

最終的にはSGLT2阻害薬の助けがなくても血糖値がコントロールできるよう、気を引き締めて治療に向き合うことが大切だと思います。

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