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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年5月25日インスリン分泌を促進!糖尿病薬・SU薬について知ろう

自分や家族の飲んでいる糖尿病の薬が、それぞれどのような作用を持つ薬であるか理解していますか?糖尿病の飲み薬であるSU薬は、インスリンの分泌を促して血糖を下げるタイプの薬です。SU薬の代表的なものとしてはアマリール、オイグルコン、ダオニールなどがあります。

全体的に血糖値が下がるため、空腹時の血糖が高い人には有用ですが、同時に血糖が下がりすぎて低血糖を起こすリスクもあります。

SU薬のメリットと副作用を知り、服用にあたって気を付けたいことを再確認しましょう。

糖尿病に用いられるSU薬とは

SU薬は、スルホニル尿素薬という昔から糖尿病の治療によく用いられている飲み薬です。SU薬は膵臓にはたらいてインスリンの分泌を促し、血糖を下げる作用があります。飲み薬の中では血糖を下げる力が最も強い薬です。

SU薬のインスリン分泌を促す作用は、高血糖になったときにだけはたらくわけではありません。一日を通して、全体的に血糖値を下げます。普段、あまり高血糖ではないときにもSU薬の作用によって血糖が下がりすぎてしまうと、低血糖となることがあるので注意が必要です。

SU薬はどんな人に用いられるの?

糖尿病の飲み薬にはいろいろな種類があります。全体的に血糖を下げる作用のあるSU薬はどのような人に用いられるのでしょうか?

SU薬が処方されるケース1:2型糖尿病患者

SU薬はインスリンの分泌を促す作用があるので、インスリンの分泌自体はみられるけれども、分泌量が少ないために高血糖となっている2型糖尿病患者さんに用いられます。

SU薬が処方されるケース2:インスリンの分泌量不足による高血糖の場合

インスリンの分泌自体が行えない1型糖尿病患者さんにはSU薬は用いません。2型糖尿病患者さんでもインスリンの分泌量は足りているのに、インスリンの働きが低下して(インスリン抵抗性)高血糖となっている場合には用いられません。

SU薬が処方されるケース3:肥満がない

SU薬は服用すると食欲が増して体重が増えることがあるので、肥満の方には用いにくい薬です。

SU薬が主に適用される人

以上のことから、肥満でなく、食事療法・運動療法を行ってもインスリンの分泌量の不足による高血糖が改善されない人に用いられます。

一日を通して全体的に血糖を下げるので、低血糖をきたしやすくなります。食後高血糖だけでなく、空腹時の血糖も高い人にSU薬が処方されます。

参考文献:薬物療法について

SU薬のメリットと副作用

糖尿病の飲み薬にはいろいろな種類があり、それぞれの薬にメリットと副作用があります。

どの薬を処方するかは、患者さんの症状、状態に合わせてそれぞれの糖尿病の薬の特徴を考慮した上で決定していきます。まずはSU薬のメリットと副作用をみていきましょう。

SU薬のメリット

SU薬は糖尿病の飲み薬の中では最も歴史のある薬で、臨床の場で長い間使われ続けています。それだけ長年にわたって糖尿病の治療に用いられてきた実績のある薬と言えます。

SU薬は血糖値を下げる作用が強く、使い始めから血糖値が下がります。安価ですが、空腹時の高い血糖値も下げることができるので、コストパフォーマンスに優れています。

SU薬の副作用

SU薬は低血糖以外の大きな副作用は少ないとされています。SU薬で起こる低血糖と体重増加、二次無効などの気を付けたいことについてみていきましょう。

SU薬の副作用1:低血糖

SU薬のいちばんの副作用は低血糖です。SU薬は血糖を下げる力が強く、血糖値が高いときだけ反応するわけではないので、血糖が高くないときにSU薬を処方すると血糖値が下がりすぎてしまい、低血糖を起こすことがあります。

いつもと食事の時間がずれた場合や腎機能、肝機能が低下している人、高齢者、お酒を飲む人では、とくに低血糖が起こりやすくなります。

また、アスピリンなどの解熱・鎮痛剤と一緒に服用することでSU薬の作用が強くなり、低血糖を起こすこともあります。他の疾患の治療で薬を服用しているときは、医師に伝えるようにしましょう。

低血糖は食間や食前の血糖が高くならないときに起こりやすく、手足の震え、異常な空腹感、発汗、動悸、頻脈、顔面蒼白、不安などの低血糖症状がみられます。

低血糖時にはすみやかにブドウ糖や糖分の多いジュースなどを摂取する対策が必要です。

医師の判断に応じて服薬の回数やタイミングなどのコントロールを行うこともありますので、SU薬の投与後に「低血糖かな?」と思われる症状がみられる場合は、医師に相談しましょう。

SU薬の副作用2:体重増加

SU薬は血糖を下げる作用が強いので、血糖が下がり気味の時に空腹感を感じやすくなります。空腹を感じて食事の量や間食が増えてしまうことで体重が増加しやすくなります。また、SU薬はインスリンの分泌量を増やします。インスリンが増えて脂肪の合成が促されることや脂肪の分解が抑えられることによっても体重が増加しやすくなります。

SU薬を服用していても食事療法・運動療法は必須です。食事療法・運動療法が実施できていないと、体重が増加して肥満となり、血糖コントロールがかえって悪化する場合があるので注意が必要です。

SU薬の副作用3:二次無効

SU薬を用いても反応が悪く、初めから血糖コントロールが改善しない場合を一時無効と言います。

一時無効に対して、初めは効果がみられ、血糖コントロールが改善していたのに、途中から薬が効きにくくなって血糖コントロールが悪くなることを二次無効と言います。

長期間、高血糖状態が続いていると、膵臓のβ細胞の働きが弱まり、インスリンを分泌するはたらきが低下してSU薬が効きにくくなることがあります。

さらに、食事療法や運動療法がきちんと実施できていない場合には低血糖を起こすことがあります。二次無効がみられた場合には、食事・運動の生活習慣の見直しやほかの薬への切り替え・併用、インスリン注射への変更が検討されます。

以下、SU薬が適応できる対象の人、メリット・副作用をまとめました。

SU薬の適応 SU薬のメリット SU薬の副作用
2型糖尿病患者 服用すると血糖が下がる 低血糖が起こりやすい
食事療法・運動療法を行っても血糖コントロールが改善しない方 コストパフォーマンスが良い 体重が増えやすい
インスリンの分泌量不足で高血糖がみられる人 古くから使われていて実績がある 長く服用し続けていると。薬の効きが悪くなることがある(二次無効)
肥満がない人 低血糖以外の大きな副作用がない

参考記事1:糖尿病リソースガイド

参考記事1:3-8. スルホニル尿素薬(SU)薬

SU薬と糖尿病

代表的なSU薬

インスリン分泌を促し、血糖を下げるSU薬は、発売された時期によって第一世代、第二世代、第三世代の薬に分けられます。

特に、SU薬の中でもよく用いられているのは第三世代のアマリールや第二世代のオイグルコン、ダオニールなどです。第一世代から第三世代まで詳しくみていきましょう。

第一世代SU薬

SU薬は、感染症の治療薬であるサルファ剤が重度の低血糖昏睡の副作用をもつことがきっかけで開発された薬です。

1950年代から1960年代に発売されたSU薬を第一世代と言います。1950年代につくられたもっとも古いSU薬はトルブダミド(商品名:ラスチノン)ですが、2015年に発売中止となっています。

1960年代にはグリクロピラミド(商品名:デアメリンS)、アセトヘキサミド(商品名:ジメリン)、クロルプロパミド(商品名:アベマイド)が発売されました。

最近では第三世代、第二世代のSU薬が主流となっており、第一世代のSU薬が選択されることは少なくなっています。

第二世代SU薬

第二世代SU薬は、1970年、1980年代に発売されたSU薬です。代表的なものにグリベンクラミド(商品名:オイグルコン、ダオニール)、グリクラジド(商品名:グリミクロン、グリミクロンHA)があります。

特にグリベンクラミドは、他のSU薬に比べて作用が強く低血糖のリスクも高いとされています。

第三世代SU薬

2000年代に発売された第三世代SU薬の代表的なものにリメピリド(商品名:アマリール)があります。

グルペピリドは、SU薬の中ではインスリンの分泌を促す作用が穏やかですす。しかし、筋肉でブドウ糖が使われる作用を促し、肝臓でブドウ糖がつくられることを抑える働きがあるので、他のSU薬と同じくらいの血糖低下作用が得られます。

インスリンの過剰分泌による体重増加の副作用が、ほかのSU薬に比べて少ないので、肥満の患者さんにも選択されることがあります。

以下に第一世代から第三世代までのSU薬についてまとめました。

分類 一般名 代表的商品名 作用時間 特徴
第一世代 アセトヘキサミド ジメリン 10~16時間
グリラロビラミド デメアリンS 6時間
クロルブロバミド アベマイド 24~60時間 作用が強く低血糖のリスクが高い
第二世代 グリベンクラミド オイグルコン、ダオニール 12~24時間 作用が強く低血糖のリスクが高い
グリクラジド グリミクロン、グリミクロンHA 6~24時間
第三世代 グリメビリド アマリール 6~12時間 インスリンの分泌を促す作用がほかのSU薬に比べて穏やか。ただし血糖の低下は同等以上なので肥満の人にも使用される場合がある。

参考記事:糖第1選択薬でよく使う薬、糖尿病科では「メルビン」が1位

SU薬の種類と低血糖

まとめ

いかがでしたか。今回は、糖尿病に用いられるSU薬について詳しくみていきました。

SU薬を飲むと一日を通して血糖が下がりますが、低血糖になりやすいのでリスクを知り、十分な対策が必要です。

血糖を下げる薬を飲んでいるからといって好きなものを食べ、運動をせずにいると、血糖コントロール不良となってしまいます。食事療法・運動療法を続けながら、医師の指示に従って服用し、体調の変化があれば医師に相談しましょう。

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