「仕事中や外出時に我慢できないほどの強い尿意が起こることがある」「日中や夜間のトイレの回数が増えた」などの症状は、過活動膀胱かもしれません。過活動膀胱とはどのような症状がみられるのか、原因や治療法、生活上の注意点について本記事では詳しく解説します。
過活動膀胱(OAB)とは
過活動膀胱はOveractive bradderよりOABとも略して呼ばれます。
我慢できないほどの強い尿意が突然押し寄せる症状(尿意切迫感)を中心に、何回も尿意をもよおしてトイレに行く症状(頻尿)や夜の間に何回もトイレに行く症状(夜間頻尿)を伴うことが多い状態です。
過活動膀胱の診療ガイドライン1)によると、日本国内で行われた40歳以上を対象にした大規模な研究によれば、過活動膀胱を持つ人の割合は12.4%以上と報告されています。40歳以上の8人に1人が過活動膀胱の症状がみられることを意味します。(本間之夫ら,2003)
過活動膀胱でみられるのは次のような症状です。
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尿意切迫感(必ずみられる)
急に我慢できないほどの尿意をもよおす。 -
頻尿(みられる場合が多い)
排尿回数が多い。 -
夜間頻尿(みられる場合が多い)
夜寝ている間に排尿のために1回以上起きる。 -
切迫性尿失禁
突然起こる強い尿意により本人の意思とは反して尿漏れが起こってしまう。 -
膀胱充満感亢進
膀胱に尿が溜まり、膀胱の内圧が高くなった状態となる。 -
腹圧性尿失禁
くしゃみや運動、力を入れる動作をしたときなどに本人の意思とは反して尿が漏れてしまう。
・1)一般社団法人 日本排尿機能学会 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]
過活動膀胱の原因
過活動膀胱が発症するメカニズムははっきりとはしていませんが、原因は病気によって起こる神経因性と原因がはっきりと特定できない非神経因性があります。原因としては非神経因性がほとんどです。
神経因性(病気によるもの)
過活動膀胱の原因とされる病気は次のとおりです。
- 脳出血や脳梗塞、パーキンソン病、多系統萎縮症などの脳の病気
- 脊髄損傷や多発性硬化症、変形性脊椎症や椎間板ヘルニアなどの脊髄の病気
- 腰部脊柱管狭窄症や糖尿病性末梢神経障害などの馬尾・末梢神経の病気
非神経因性(はっきりと原因がわからないもの)
はっきりと原因がわからないものには次の原因が考えられます。
- 加齢による変化
- 生活習慣の乱れ
- 高血圧や代謝障害による血管内皮機能障害
- 自律神経の過活動
- 全身や一部の炎症
- 腸管の機能的異常
過活動膀胱の治療と日常生活で注意するポイント
過活動膀胱は我慢できないほどの急な尿意や尿もれなどが起こり、外出時もトイレの心配をしなくてはならないなど日常生活の質が低下してしまいます。
過活動膀胱の治療は膀胱のコントロールを促し、日常生活の質の向上を図ることが目的です。主な治療は薬物療法や日常生活における工夫・注意などがあります。
薬物療法
薬物療法ではβ3作動薬や抗コリン薬が使われます。
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β3作動薬
膀胱の筋肉を緩めて膀胱の容量を増やす薬です。 -
抗コリン薬
膀胱の過剰な収縮をおさえる作用のある薬です。 -
ボツリヌス療法
膀胱にボツリヌス毒素を注射し、過剰な排尿筋の働きによる膀胱の収縮を軽減します。
・一般社団法人 日本臨床内科医会 過活動膀胱
・一般社団法人日本排尿機能学会・一般社団法人日本泌尿器科学会 過活動膀胱・神経因性膀胱に対するボツリヌス療法 適正使用指針作成委員会 過活動膀胱・神経因性膀胱に対するボツリヌス療法 適正使用指針
生活上の工夫・注意点
排尿の状態を把握するための排尿日誌をつけることや生活習慣の見直し、膀胱に関係する骨盤底筋群を鍛えるトレーニングなどが挙げられます。
排尿日誌をつける
トイレに行った時間と回数、尿量を記録して主治医と共有することで、頻尿の傾向や程度を把握できます。また尿量から過活動膀胱の要因を想定し、生活上の注意などに活かします。
生活習慣の見直し
生活習慣の見直しとして以下のことが提唱されています。
- 水分摂取量を減らす
- 尿意を感じにくいように好きなことに集中してトイレの間隔を伸ばすようにする
- カフェインやアルコールの摂り過ぎを控える
- 下半身が冷えないようにする
など
トレーニング
膀胱を支える骨盤底筋を鍛えるトレーニングです。仰向け、もしくは椅子に座った状態で肛門や膣を体の内側に引き上げるように締めたり緩めたりを繰り返します。このときに、腹筋に力が入らないようにします。
・一般社団法人 日本排尿機能学会 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版]
・一般社団法人 日本臨床内科医会 過活動膀胱
まとめ
40代以上に見られる過活動膀胱は我慢できない尿意や頻回の排尿などの症状がみられ、日常生活の質に影響を及ぼす状態です。原因は脳や脊髄などの病気によるものや加齢や生活習慣などが挙げられます。過活動膀胱は薬物療法や骨盤底筋トレーニングや水分摂取の調整、カフェインやアルコールの制限といった生活習慣の見直しで症状の改善が期待できます。ほかの病気によって起こる場合もあるので、排尿の症状で悩んでいる場合はかかりつけの内科の主治医や泌尿器科などで相談しましょう。