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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年11月8日【基準別に対応】血糖値と基準値について正しく知ろう

一般的に、糖尿病かどうかの判断は血糖値によって行われています。血糖値を測定して、基準値を超えていたら糖尿病が疑われるわけです。

しかし、そもそも血糖値とは何なのでしょうか。そして、基準値はどうやって決まっているのでしょうか。今回は糖尿病と深い関わりのある血糖値にフォーカスして詳しくみていきましょう。

血糖値とは何の値なのか

血糖値の基準について

血糖の「糖」は血液内に含まれるブドウ糖のことを指します。その血糖量をコントロールしているのがインスリンです。インスリンが不足すると血液中のブドウ糖の量が多くなり、高血糖と呼ばれる状態になります。逆にインスリンの分泌量が多すぎると、低血糖になります。

高血糖の状態が続くと、糖尿病が疑われます。反対に血糖値が低すぎると低血糖症などの病気の可能性があります。血糖値は高すぎても低すぎても良くありません。

血糖値は一日の中でも変化する

また、血糖値は常に一定の値を保っているものではありません。健康な人であっても、空腹時には低くなり、食後には高くなります。食事をとると炭水化物が体に吸収され、ブドウ糖となって血液中に出てきます。

ブドウ糖は脳や筋肉を動かすエネルギーとなる物質ですから、血糖値が低すぎると人間は動けなくなってしまいます。食後に血糖値が上がるのは、正常な体の反応なのです。

血糖値の異常によって疑われる病気

「血糖値が高いと、糖尿病の疑いがある」というのは、一般的に知られていることです。しかし高血糖という症状が出るのは、糖尿病の場合だけではありません。

なかには体質や遺伝的な要因で、生まれつき高血糖の人もいます。また、糖尿病以外の病気で高血糖状態になることもあります。高血糖で疑われる病気には、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、膵炎、肝炎、肝硬変、クッシング症候群などがあります。

逆に血糖値が低すぎる場合には、膵臓腫瘍(インスリンノーマ)、糖原病、肝臓がん、副腎機能低下症、ガラクトース血症などが疑われます。さらに肝硬変などでは、人によって高血糖になる場合と低血糖になる場合があります。

血糖値の基準値について

日本糖尿病学会では、正常な食後血糖値の範囲を70~140mg/dlとしています。これが血糖の基準値です。さらに細かい基準では、「空腹時の血糖値が110mg/dl未満、食後2時間の血糖値が140mg/dl未満」の場合を正常型としています。ただし、両方の条件を満たしているからといって、安心はできません。

正常型の範囲内でも、空腹時の血糖値が100~109mg/dl以下だと、「正常高値」に分類されます。これは、糖尿病になる可能性が高い状態といえます。反対に、正常型の範囲から少しでも外れていたからといって、すぐに糖尿病の診断が下るわけでもありません。

「空腹時の血糖値が110~126mg/dl」だと空腹時高血糖、「食後2時間の血糖値が140~200mg/dl」だと食後高血糖となります。この範囲の血糖値は境界型、いわゆる糖尿病予備群とされる状態です。判定の基準は以下のとおりです。

糖尿病と血糖値の判定基準グラフ

妊娠・年齢によって血糖値は変動しやすい

妊娠で血糖値は上がりやすくなる

血糖値は食事だけでなく、年齢によっても変化していきます。特に女性の場合、妊娠や閉経といったタイミングでホルモンバランスが大きく変化します。するとその影響でインスリンのはたらきが低下して、血糖値が高くなってしまうことがあります。

例えば妊娠時は、胎盤で作られるホルモンによって血糖値が上がりやすくなります。そのため妊娠時には、通常よりも幅を持った基準値で判断します。

妊娠中は、空腹か食後かを問わず測定した随時血糖値が100mg/dl以上の場合、「75g経口ブドウ糖負荷試験」などで詳しく検査します。その結果が異常値だった場合、妊娠糖尿病と診断されて治療を始めることになります。

ただし、ほとんどの場合妊娠糖尿病は出産と共に通常の状態に戻ります。

加齢によって血糖値は上がりやすくなる

高齢者と血糖値の関係

人間は誰しも、年をとるとインスリンの分泌が少なくなります。また、インスリン自体のはたらきも悪くなるため、年齢が上がると糖尿病になる確率が高くなってしまうのです。

ただ、高齢になると体の免疫力が落ちて、感染症にかかりやすくなります。肺気腫など慢性の炎症を抱えている高齢者も少なくありません。すると、生体防御のために血糖値が上昇するのです。ですから高齢者の場合「ここからここまでが血糖の正常値」とはっきり決められません。

そのため、高齢者の血糖の基準値は高めに設定されています。空腹時血糖が140mg/dl以上の場合は、糖尿病の疑いありとして、さらに詳しく検査します。

血糖値の正確な判定基準について

血糖値は、直前にとった食事の内容によって大きく変化します。健康診断などで血糖値を計る場合、そういった外部からの影響をできるだけ少なくしなければいけません。そのため、健康診断を受ける際には「前日夜から飲食をしないでください」といった注意がなされています。つまり、健康診断では空腹時血糖を測定していることになります。

糖尿病かどうかを判断するためには、空腹時血糖だけでなく、食後2時間の血糖値も重要になってきます。ところが食後2時間の血糖値は、同じ人でも何を食べたかによって変わってしまいます。好き勝手に食事をしてしまっては、食後2時間の血糖値が基準値内に収まっているかどうかの判断ができなくなってしまうのです。

OGTTによる血糖値測定の判定基準

そのために考えられた方法が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。空腹時の血糖値を測定した後、ブドウ糖75gを溶かした水を飲むことで、食事をしたときと同じ状態を作り出します。そして、30分後、1時間後、2時間後に血糖値を測定して、食後の血糖値の変化を見るのです。

経口ブドウ糖負荷試験では、血糖値を正常に保つ「耐糖能」と呼ばれる能力を調べることができます。世界保健機関(WHO)の勧告により、検査時のブドウ糖摂取量を75gとすることが決められています。これは世界的な基準となっています。

空腹時血糖値およびOGTTによる判定区分と判定基準は以下のとおりです。

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血糖値を反映するもうひとつの存在、HbA1c

血糖値が基準値を超えていた場合、さらに詳しい検査をして糖尿病かどうか診断します。その診断に用いられるのが、血液中のグリコヘモグロビン(HbA1c)です。HbA1cとは、赤血球の中にあるヘモグロビンと、血液中のブドウ糖が結合したもの。血糖値が高いほど、HbA1cも形成されやすくなります。

赤血球の寿命は約120日です。その間はずっと血液とともに体内を巡りながら、血液中のブドウ糖と少しずつ結合していきます。ですからHbA1cの量を調べると、過去1~2ヶ月間の平均血糖値を知ることができるのです。血糖値が高くてもHbA1cの量が上昇していなければ、体調などの影響による一時的な血糖値上昇と判断されます。

HbA1cにおける目標基値は以下のように定められています。

HbA1cにおける目標基準値

2012年までは、日本ではHbA1cの量が6.0%未満を正常としてきました。しかし、日本糖尿病学会では2012年4月1日より、国際標準値(NGSP値)を使用するが決まりました。

NGSP値では、HbA1cの量が6.5%あると糖尿病の疑いありと診断されます。また、糖尿病合併症予防のための目標値が7.0%未満で、治療効果を上げるためには8.0%未満に抑える必要があるとされています。

まとめ

血液中に含まれるブドウ糖量は、どんなに多くてもわずか0.1%に過ぎません。しかし、そのわずかな量の変化が血管を通してさまざまな臓器に影響を及ぼすのです。

糖尿病の判断基準のひとつとなっている血糖値。正しい基準値を知って、健康的な生活を送るために役立てたいものです。

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