糖尿病は生活習慣や年齢と深く関係し、進行すると命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。本記事では、日本や世界における糖尿病患者数のデータをもとに、現状や男女別・年齢別の割合について数値を示してお伝えします。糖尿病の現状を把握し、リスクを正しく理解することで、発症や進行の予防に役立てていきましょう。
糖尿病患者は年々増えている
ランセット誌に発表されたNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)の報告によると、糖尿病の患者数は1990年には2億人であったのが、2022年には推定8 億 3000 万人まで増えており、約4倍の増加がみられると報告されています。(2024年11月現在)1)
厚生労働省の令和2年(2020)患者調査によると、日本の糖尿病患者の総数は2020年の段階で230万3000人です。2)1996年より増減が繰り返され、2008年から2017年にかけて短期的に患者数の増加がみられています。(グラフ1参照)
令和4年(2022年)「国民健康・栄養調査」の「糖尿病が強く疑われる者の割合」は男性18.1%、女性9.1%年となっています。3)2022年の総人口である男性6075万8000人、女性は6418万9000から算出すると、糖尿病だと推定される人も含めると男性約1100万人、女性583万人にという値です。4)(図1参照)
糖尿病だと推定される人の割合は2010年の男性16.8%、女性9.2%からみると、男性ではやや増加していますが、優位な増減はみられません。2)年齢層別にみると、年齢が高い層で糖尿病だと推定される人の割合が高くなっています。3)(図1参照)
グラフ1 糖尿病患者数の推移(1996年~2020年)
出典:厚生労働省 令和4年「国民健康・栄養調査」
図1 糖尿病が強く疑われる者の割合
日本人の糖尿病の割合は?
日本人の糖尿病が疑われる人の割合を男女別、年齢別でみていきましょう。
男女別の糖尿病割合
日本人における糖尿病が疑われる人も含めた割合を男女別で比較すると、男性は女性の約2倍の数値で女性よりも糖尿病を発症しやすい傾向があります。3)
糖尿病の発症には生活習慣が深く関わっており、生活習慣病のリスクを高める肥満、高血圧、飲酒、喫煙において男性は女性よりも割合が高い傾向がみられています。3)また男性ホルモンのテストステロンはインスリン抵抗性を高めること、5)肥満の中年男性では食後高血糖が起こりやすく糖尿病発症につながりやすいこと6)の関与もうかがえます。
年齢別の糖尿病割合
糖尿病の発症リスクは年齢とともに増加します。2022年の糖尿病が疑われる人の割合は、40代では男性4.7%・女性3.2%、50代では男性14.0%・女性2.9%、60代では男性20.0%・女性9.8%、70代では男性27.0%・女性15.8%です。男女ともに60代以上で高い割合であり、特に男性は50代から10%を超えています。3)
糖尿病は生活習慣病や遺伝的な影響によって起こり、初期は自覚症状がありません。トイレの回数の増加、体重の減少、易疲労性、喉の渇きなどの症状を自覚する時期にはすでに血糖値が高い状態が長年続いている場合も少なくありません。糖尿病は適切な治療や通院の継続により、社会生活も送ることができます。
糖尿病の方が多い50代、60代になってから対策をとるのではなく、若い世代から生活習慣を整えるとともに、定期的な検査を受けて早期発見・適切な治療の開始につなげることが大切です。
世界の糖尿病患者数の割合
世界の糖尿病患者数は増えています。世界の糖尿病患者数トップ5と世界の糖尿病患者の割合の動向について説明します。
世界の糖尿病患者数トップ5
ランセット誌に発表されたNCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)の報告では、18歳以上の糖尿病患者数が多い国トップ5は以下の通りです。(2022年)1)
- 1位:インド・約2億1200万人
- 2位:中国・約1億4800万人
- 3位:アメリカ・約4200万人
- 4位:パキスタン・約3600万人
- 5位:インドネシア・約2500万人
- 6位:ブラジル・約2200万人
日本は11位にランクインしています。1)
世界の糖尿病患者の割合の動向
世界では特に低所得・中所得国で有病率が増加しています。糖尿病に関する死亡率も増加しており、2021年には糖尿病による腎臓病が原因で死亡した人は200万人以上、さらに心血管疾患による死亡のうち10%以上が高血糖によるものです。さらに糖尿病と診断されている人のうち約半数以上は糖尿病の治療薬を服用していませんでした。7)
糖尿病は食事や運動などの生活習慣の見直しとともに薬物療法などの適切な治療により進行を予防できます。死因として多い糖尿病による腎臓病や心血管疾患などの合併症の悪化を予防するためにも、必要な治療の継続が重要です。
まとめ
糖尿病は生活習慣や年齢と深く関わり、今後も世界的に患者数が増加すると予測されています。NCD Risk Factor Collaboration(NCD-RisC)の2022年の報告によると日本では約1,200万人が糖尿病の可能性があります。糖尿病は適切な治療や生活習慣の見直しによって、社会生活を続けながら合併症を予防することが可能です。将来の健康のために、今から生活習慣を見直し、糖尿病予防に取り組みましょう。
1)NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC) Worldwide trends in diabetes prevalence and treatment from 1990 to 2022: a pooled analysis of 1108 population-representative studies with 141 million participants THE LANCET 2024.11.13
2)厚生労働省 令和2年(2020)患者調査
3)厚生労働省 令和4年「国民健康・栄養調査」
4)総務省統計局 人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)
5)奥山朋子 寺内康夫 糖尿病における性差医療 1.血糖 糖尿病56(8):522~524,2013
6)Ichiro Kishimoto Akio Ohashi Impact of Lifestyle Behaviors on Postprandial Hyperglycemia during Continuous Glucose Monitoring in Adult Males with Overweight/Obesity but without Diabetes Nutrients 2021, 13(9), 3092
7)WHO 糖尿病