従来の血糖測定では自己血糖測定器を使用して食前・食後・就寝前などに指先に穿刺して血液を採取する方法が一般的です。最近では腕やお腹などにセンサーを装着してグルコース値を持続的に測定できる、FGM (Flash Glucose Monitoring)やCGM(Continuous Glucose Monitoring)という測定方法があります。
従来の血糖測定と異なる点は血糖値ではなくグルコース値の測定であり、さらに、持続的に血糖の変動を把握できる点です。本記事では、グルコース値と血糖値の違いと関係性について詳しく解説します。
グルコース値とは?
グルコース値とは、皮膚の下の細胞と細胞の間を満たす間質液中に含まれるブドウ糖の濃度です。間質液1dL中に含まれるグルコース(㎎)の値を示しています。グルコースは毛細血管と間質液の間を自由に行き来しており、血糖値を反映する指標として用いられます。
グルコース値を測定できるFGMとCGM
グルコース値は血糖値と異なり、血液を採取しなくても皮下に刺したセンサーによって持続的に測定が可能です。
FGM (Flash Glucose Monitoring)やCGM(Continuous Glucose Monitoring)はグルコース値を測定できる機器で、腕などに装着しているセンサーにリーダーをかざすだけで最大14日間グルコース値を測定できます。センサーは防水仕様で装着したまま入浴もできます。測定値の変動が大きい場合や低血糖の可能性がある場合は血糖自己測定器による血糖値測定が必要です。
CGMも同じように連続したグルコース値の測定が可能ですが、1日数回血糖値を測定し、グルコース値と比べて数値を補正しなければなりません。食事や運動、服薬などのタイミングを記録することによって生活が血糖の変動にどのように影響しているのかを知ることができます。
富山大学附属病院 Q:持続血糖測定(CGM)による最適な糖尿病管理―糖尿病
認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク CGM、FGM
Abbott FreeStyleリブレ グルコース値と血糖値の違い
血糖値とは?
血糖値とは血液中のブドウ糖濃度です。血糖値は一定の自己血糖測定器により指先に穿刺し、血液を採取して測定します。血糖値は一定のレベルに保たれており、健康な人の場合は空腹時血糖値70〜110mg/dLの範囲です。1)
食事によって上昇する血糖値はインスリンの働きにより、一定範囲の血糖値に維持されますが、インスリンの働きが不十分となり、高血糖の状態が続くのが糖尿病です。血糖値が必要以上に低くなると低血糖になり、意識障害を引き起こすこともあります。
グルコース値と血糖値の関係性
血液中のグルコースは血管を通じて全身に運ばれ、毛細血管から細胞と細胞の間を満たす間質液へと移動し、最終的に細胞に取り込まれて使われます。血糖値(血液中のグルコース濃度)とグルコース値(間質液中のグルコース濃度)の関係は次のとおりです。
血液中のグルコースが増えると(血糖値が上がる)、毛細血管から間質液に移動するグルコースも増えます。その結果、間質液中のグルコース値が高くなります。反対に、血液中のグルコースが減る(血糖値が下がる)と、間質液中のグルコース値も低くなります。
このように、血液中のグルコース濃度(血糖値)が変動すると、それに続いて間質液中のグルコース濃度(グルコース値)も高くなったり低くなったりする、という相関関係にあるのです。2)
間質液中のグルコース値に血糖値が反映されるまでには約5~12分の差があるといわれています。3)血糖値とグルコース値の差は血糖値の変動が少ないと差も少なくなりますが、血糖値が上がるとそれに遅れてグルコース値が上がり、血糖値が下がるとグルコース値も遅れて下がります。
グルコース値と血糖値の差は6%未満とされ、FGMやCGMによるグルコース値は血糖コントロールとして役立つと報告されています。2)
2)AbbottFreeStyle グルコース値と血糖値の違い
3)Kerstin Rebrin, Garry M. Steil Can Interstitial Glucose Assessment Replace Blood Glucose Measurements? Diabetes Technology & Therapeutics 2(3)
まとめ
血糖値とグルコース値はどちらもブドウ糖の濃度ですが、厳密には血糖値は血液中のブドウ糖濃度、グルコース値は間質液中のブドウ糖濃度という違いがあります。血糖値とグルコース値の間には約5~12分の遅延と6%未満の値の誤差がありますが、グルコース値の持続的なモニタリングは血糖コントロールに十分に役立つとされています。ただし、血糖値を測定してグルコース値との値を比較して確認することが重要です。