古くから漢方や薬膳などに用いられている高麗人参が糖尿病によい影響を与えることが示唆されています。高麗人参とはどのような植物であるのか、高麗人参と糖尿病の間にはどのような関連性があるのか確認しましょう。高麗人参のほかにも、糖尿病に用いられている漢方についても紹介しています。
高麗人参とは
高麗人参(学名:Panax ginseng)は、朝鮮人参とも呼ばれるウコギ科の植物です。中国、韓国、極東シベリアなどを原産地とし、古くから中国で薬用として使用されてきました。
健康目的として重要視される主な成分はジンセノシド(パナキソシド)と呼ばれる成分で、根の部分に多く含まれています。外界からのストレスに対する抵抗性を高め、心身の健康を改善する作用があるとされています。
高麗人参の根の加工方法によって、紅参(コウジン)と白参(ニンジン)に分けられます。紅参(コウジン)は根を水洗いした後に表皮をそのままにして蒸して乾燥させる方法で。アメ色をしていて滋養強壮に用いられます。白参(ニンジン)はやや黄色がかった白色で、表皮を剥がして乾燥させるか湯通しして乾燥させる方法です。冷えの改善など穏やかな体質改善に用いられます。高麗人参は、漢方で補気薬として多数の処方に配合されています。
・eJIM厚生労働省 朝鮮ニンジン(高麗人参、オタネニンジン)
・公益社団法人福岡県薬剤師会薬事情報センター
・Kracie高麗人参とは
高麗人参が糖尿を改善する?
高麗人参と糖尿病の関連性は多く報告されています。
例えば、Shergisら(2012)によるランダム化比較試験65件を対象とするレビュー報告では、高麗人参が糖代謝を改善する可能性があり、2型糖尿病に対する良い影響が示唆されています。ただし、異なる高麗人参の種類を使用しているなど信用性が高いとは言えないため、さらなる詳細な研究が必要だとあります。
また、トロント大学のVuksan教授(2006)による研究では、3カ月間にわたって紅参を服用させたところ、2型糖尿病患者のインシュリン感受性が改善し、血糖コントロールに役立ったことを報告しています。また、2022年には2型糖尿病で高血圧の患者 80人を対象に、12週間にわたって紅参(コウジン)とアメリカ人参を併用投与した群で中心収縮期血圧の低下がみられたという結果が報告されています。この結果により、紅参を投与した場合、糖尿病患者の中心収縮期血圧を改善することが確認されました。
Vladimir Vuksan et al. Korean red ginseng (Panax ginseng) improves glucose and insulin regulation in well-controlled, type 2 diabetes: results of a randomized, double-blind, placebo-controlled study of efficacy and safety Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2008 Jan.
Vladimir Vuksan, Elena Jovanovski, et al., Vascular effects of combined enriched Korean Red ginseng(Panax Ginseng)and American ginseng(Panax Quinquefolius)administration in individuals with hypertension and type 2 diabetes: A randomized controlled trial, Complementary Therapies in Medicine 49(2020)102338
その他、糖尿病に効果的な漢方
高麗人参以外にも、糖尿病の症状の緩和やインスリン抵抗性や血糖値の改善目的で使用されている漢方はあります。
口渇の症状には白虎加人参湯、神経障害によるしびれの改善には牛車腎気丸、足病変には帰耆建中湯、自家製桂枝茯苓丸、自家製八味地黄丸などの有用性が報告されています。そのほか、インスリン抵抗性の改善に桂枝加朮附湯、血糖値の改善に桂枝茯苓丸、黄連解毒湯なども用いられています。
・佐藤 祐造 糖尿病の治療戦略と漢方 日本東洋医学雑誌年 55(6).2004.737-750
・矢野 博美ら 糖尿病足病変に漢方治療が奏効した一症例 日東医誌 Kampo Med Vol.65 No.1 13-22, 2014
・牧野 健 初期糖尿病の漢方治療 日本東洋医学雑誌 48(3)1997.335-340
まとめ
高麗人参は、古くから漢方で補気薬として複数の処方に用いられてきました。血糖値のコントロールや糖尿病の高血圧の改善には、紅参の効果が研究によって報告されています。漢方は市販されているので簡単に手に入りますが、漢方といっても薬であり、他の薬との飲み合わせもあるため、服用の際は主治医に確認をとりましょう。