糖尿病の引き金は「肥満」です。肥満の原因は「食べすぎ」と「運動不足」。肥満は糖尿病をはじめ、高血圧や動脈硬化、高脂血症、肝臓病、心臓病などの生活習慣病を誘因します。
太りやすくなる中年期以降は特に食べ物に気をつけてください。
食事で取り込んだエネルギーは、さまざまな生命活動に使われ、残った分が中性脂肪となって、脂肪細胞に蓄えられます。たくさん食べていなくても、日常生活での消費エネルギーが少ないと、中性脂肪が溜まって肥満につながります。
ポイント1:魚料理をもっと食べよう!
ご飯に味噌汁、焼き魚、青菜のお浸し、おしんこ、納豆……少し前の日本人の食卓には、魚がメインディッシュでした。ところが、現代では肉料理が中心の洋食料理傾向へと大きく変わっています。
魚の脂肪に多く含まれていて、健康に良いことで注目を集めたのが、イコサペンタエンサン酸(EPA)と、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのn-3系多価飽和脂肪酸です。
いずれも、血液中のLDL(悪玉)コレステロールやトリグリセライド(中和脂肪)を下げ、HDL(善玉)-コレステロールを増やす作用や、血栓ができるのを防ぐ作用があり、高脂血症、動脈硬化、高血圧、脳血管障害、虚血性心疾患などを防ぐ働きをします。また、糖尿病の危険性・リスクを下げてくれます。欧米人に比べ日本人は心臓病にかかる人の割合が少ないですが、その理由の一つに毎日の食事で魚を食べる習慣があったからと考えられます。
脳の老化を防止する魚の脂
脳細胞は加齢とともに減少します。ですが、DHAは残った脳細胞を活性化させ、痴ほう症状の予防と改善に効果があると言われています。EPAやDHAは、白身の魚よりも、「ぶり」「いわし」「さば」「さんま」などに代表される『青魚』と呼ばれる魚に多く含まれています。
魚の目の周囲のゼラチン質や目の後ろにある骨の周辺の身、中トロ、大トロ、赤身には、EPAやDHAのほか、ビタミンAやCも豊富に含まれています。魚は健康食の王様です。同じ脂を摂るのなら、魚の脂を是非取り入れて下さい。
ポイント2:野菜は1日350g以上食べましょう!
野菜には糖尿病やがんなどの生活習慣病の予防に効果のあるカリウム、食物繊維、抗酸化ビタミンなどが豊富に含まれています。生活習慣病を防ぐために必要な各種栄養素や成分を過不足なく摂取するには、野菜量では一日350g以上(1人分)食べる必要があります。
割合としては緑黄色野菜120g以上、その他の野菜230g以上です。おおまかには緑・黄・赤など、色の濃い野菜を緑黄色野菜、それ以外をその他の野菜と覚えましょう。手量りで100gの目安は生野菜を千切りにして両手に山盛り1杯、ゆで野菜の場合は片手に1杯と覚えておくと良いでしょう。
- 主な緑黄色野菜
- その他の野菜
「かぶ」「ごぼう」「セロリ」「たけのこ」「白菜」「もやし」「なす」「きゅうり」「レタス」「長ネギ」「だいこん」「玉ねぎ」「キャベツ」「カリフラワー」「れんこん」
「あしたば」「オクラ」「かぼちゃ」「さやえんどう」「春菊」「にら」「ピーマン」」「トマト」「グリーンアスパラガス」「小松菜」「ブロッコリー」「ホウレンソウ」「にんじん」
ちなみに、ジャガイモやサツマイモなどのイモ類は、栄養学的には野菜の仲間ではなくお米などの穀物と同じ仲間としてとらえます。それは、でんぷん質が多いためです。ビタミンや食物繊維などの体に良い成分も豊富に含まれるのですが、イモ類は野菜としてではなく「主食」として考え、エネルギー量の摂り過ぎを防ぎましょう。
偏食や欠食は野菜不足のもと。毎食、野菜を食べる努力をしましょう。また食事をする時に、野菜を先に食べると食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果もあるようですので、食べ方にも工夫してみてください。
ポイント3:塩分の摂りすぎは注意が必要!
食塩を摂りすぎると、食塩中のナトリウムが血圧を上げ、脳卒中をはじめさまざまな生活習慣病の原因になります。血糖値が高いと、血圧が上昇しやすくなります。すでに糖尿病になっている人が高血圧になると、合併症を誘発しやすくなります。
さらに濃い味付けの食べ物は主食をたくさん食べる傾向になり、エネルギー過多になりやすく、高血糖を招きやすくなります。厚労省が2015年4月に改定した基準は、男性8.0g未満、女性7.0g未満です。また、高血圧症を合併した糖尿病患者さんの基準は6.0g未満ですので、減塩に努めてください。
参考:日本腎臓学会糖尿病性腎症合同委員会報告
まとめ
魚は、肉や大豆製品、乳製品などと同じく良質なタンパク質源です。特に今回ご紹介した「魚の脂」には、生活習慣の予防や改善に役立つ成分が多く含まれています。一日一回、魚料理と大豆製品、さらには野菜を無理なく350gとる生活が望ましいです。
しかし、食事療法がストレスになると糖尿病治療の挫折につながります。摂取したい食べ物、食事での注意事項を頭の中に入れ、塩分に気をつけながら楽しくそしてバランスよく食事が出来るように心がけましょう。