「首だけに汗をかく」「他の部位よりも首の汗が気になる」このような症状を経験したことはありませんか?局所的な発汗は、体質や環境要因によるものがほとんどですが、糖尿病をはじめとする病気のサインである可能性もあります。
この記事では、首に汗をかく原因と糖尿病との関係、注意が必要なケース、そして対処法について詳しく解説します。ご自身の健康状態をチェックする参考にしてください。
首に汗をかくのはなぜ?糖尿病との関係を知ろう
首や顔に汗をかく症状がみられるものとして、味覚性発汗があります。味覚性発汗は食事時の味覚刺激によって引き起こされる発汗で、辛いものなどを食べたときに起こる生理的な発汗と、何らかの病気が原因で起こる病的味覚性発汗に分けられます。

糖尿病による自律神経障害は、病的味覚性発汗の原因の一つで、顔の両側に症状が出るのが特徴です。汗が出る汗腺は交感神経と副交感神経の両方に支配されていると考えられています。健康な状態では交感神経が優位に働き、副交感神経による発汗は抑えられていますが、糖尿病で交感神経が障害されるとその抑制が外れます。
その結果、食事の刺激がきっかけとなって、これまで抑えられていた副交感神経性の発汗が出てきて首や顔の過剰な汗として現れるようになります。
・田村 直俊 中里 良彦 味覚性発汗再考―2.発現機序に対する一元的仮説―
首の汗に注意が必要なケース
首に汗をかくからといって、必ずしも糖尿病が原因とは限りません。しかし、以下のようなケースでは注意が必要です。首の汗とあわせて、次のような糖尿病の症状がみられる場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。血糖値の上昇と関連している場合もあります。
- 異常に喉が渇く(口渇)
- トイレの回数や尿の量が多い(頻尿・多尿)
- 食事量は変わらないのに体重が減る
- 疲れやすい、体がだるい(倦怠感)
- 手足のしびれや、感覚が鈍くなる
- 立ちくらみ(起立性低血圧)
特徴的な汗のかき方をしている
熱いものや辛いものでなくても、食事中に顔や首だけに汗がふき出す味覚性発汗や足の裏や下半身は乾燥しているのに、首や胸元上半身だけが汗ばむ場合は、糖尿病性神経障害の影響かもしれません。

糖尿病以外が要因となるケース
首や顔の局所的な発汗は、以下のような他の病気が原因で起こることもあります。
- 更年期障害:女性ホルモンの減少に伴う自律神経の乱れから、ホットフラッシュと呼ばれるのぼせ・ほてり・発汗が上半身に集中して現れることがあります。
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、全身の代謝が異常に高まります。その結果、常に暑く感じたり、大量の汗をかいたりするようになります。
・Dwight I Blair,Julius Sagel, Ian Taylor Diabetic gustatory sweating South Med J .2002 Mar;95(3):360-2.
・国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター 神経障害
糖尿病による発汗異常への対処と予防法
糖尿病による発汗異常が疑われる場合、根本原因は自律神経障害が考えられます。自律神経障害は糖尿病の合併症の一つです。対処と予防法は血糖コントロールにより、糖尿病の合併症を予防することが大切です。
血糖コントロール
神経障害の進行を予防するには血糖値を良好に保つことが重要です。医師の指導のもと、基本となる食事療法、運動療法を徹底しましょう。必要に応じて薬物療法も併用し、血糖コントロールを安定させることが、合併症の予防・改善につながります。
日常生活での汗対策
出てしまった汗による皮膚トラブルや不快感をやわらげる工夫も大切です。
こまめに汗を拭き取る
濡れたタオルや汗拭きシートで首元を清潔に保ち、あせもなどの皮膚トラブルを予防しましょう。
通気性の良い衣類を選ぶ
吸湿性・速乾性に優れた綿や麻などの素材を選び、首元が詰まったデザインは避けましょう。
・ADA・Understanding Neuropathy and Your Diabetes Autonomic Neuropathy
まとめ
首や顔にだけ汗をかく場合、糖尿病による自律神経障害が関係していることがあります。特に、食事中の味覚性発汗や、上半身だけの多汗と下半身の乾燥が同時に見られるときは注意が必要です。口の渇きや頻尿、手足のしびれ、立ちくらみなどの症状を伴う場合には、ただの汗かき体質と思い込まず、早めに内科や糖尿病専門医に相談しましょう。
発汗異常の根本的な改善には、血糖値を安定させることが大切です。食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせ、医師と相談しながら継続的に血糖コントロールを行いましょう。皮膚トラブルを予防するためにも、汗をかいたあとは清潔を保つ心掛けも大切です。




