尿検査をして「尿にたんぱくが出ている」と指摘されたことはありませんか?尿たんぱく(蛋白尿)は、一時的なものもあれば、腎臓の病気のサインである場合もあります。特に、慢性的に尿たんぱくが続く場合は腎機能が低下している可能性があるため、早めの対策が重要です。本記事では、尿たんぱくの正常値や原因となる腎臓の病気、改善のための対策について詳しく解説します。
尿たんぱくとは?
尿たんぱくとは、本来腎臓でろ過されるはずのたんぱく質が尿中に漏れ出してしまう状態です。通常、腎臓は体に必要なたんぱく質を血液中に保持し、必要ないものを尿として排出します。しかし、何らかの原因で腎機能が低下すると、血中のたんぱく質が尿に混じることがあります。
尿たんぱく(蛋白尿)の正常値
健常者でも1日あたり150g未満の微量の尿たんぱくはみられます。尿たんぱくの定量検査では24時間ためた尿のたんぱく質の量を調べます。
1日当たり150mg未満が正常、150~490mgが軽度蛋白尿、500mg以上が高度蛋白尿とされています。
正常 | 軽度蛋白尿 | 高度蛋白尿 | |
---|---|---|---|
尿たんぱく定量 | 150 mg/日未満 | 150~490mg/日 | 500mg/日以上 |
健診時の尿たんぱくの検査結果
健診では試験紙法で検査され、尿たんぱくは「-」「±」「+」「++」「+++」と表されます。尿たんぱくの値は「±」(偽陽性)は15mg/dL以上、「+」(陽性)は30mg/dL以上となります。「+」以上の場合は、腎臓の機能が低下している慢性腎臓病(CKD)が疑われるため、医療機関の受診が必要です。
「+」以上であれば腎臓が悪いというわけではなく、激しい運動や長時間の立ち仕事、過度のストレスなどによって一時的に「+」となっている場合もあります。「+」の場合は再度尿検査を行ったり、より精密な検査を行ったりします。
尿たんぱくの自覚症状
軽度の尿たんぱくがみられても、自覚症状はほとんどありません。しかし、尿たんぱくの原因となる腎臓の病気が進行すると次のような症状が現れることがあります。
- 尿の泡立ちが多くなる
- むくみ(浮腫)がみられる
- 疲れやすくなる
- 食欲低下
- 高血圧
これらの症状がみられる場合は、すでに腎臓の機能低下が進んでいると考えられます。気づかないうちに腎臓の機能低下が進んでいることのないように、定期的な尿検査の継続により、自覚症状がない早い段階で異常を発見し、早期治療につなげることが大切です。
阿部雅紀,CKD診療ガイドライン2023,2023,日大医誌:82(6):319–324
一般社団法人日本腎臓学会 小冊子 検尿の考え方・進め方 – 第4章 1.蛋白尿および血尿(1)
尿たんぱくの原因となる腎臓の病気
尿たんぱくの原因となる腎臓の病気は次のとおりです。
糖尿病性腎症
糖尿病の合併症の一つです。高血糖が持続することで腎臓の毛細血管が傷つき、腎臓の機能が低下して尿たんぱくが増加します。
慢性糸球体腎炎
腎臓の糸球体に炎症が起こり、尿を作る機能が徐々に低下していく病気です。免疫の異常が関与していると考えられていますが、詳細な原因はまだはっきりとわかっていません。比較的若い世代にも発症し、進行のスピードは患者によって異なります。
腎硬化症(高血圧性腎症)
高血圧が長期間続くこと動脈硬化が進行し、腎臓の機能が低下します。尿たんぱくが増え、進行すると慢性腎臓病のリスクが高まります。
多発性囊胞腎
腎臓に多数の嚢胞(液体の入った袋)ができることで腎機能が低下し、尿たんぱくがみられる場合があります。
尿たんぱく改善のためにできること
尿たんぱくがみられる場合、早めに生活習慣の改善や治療を行うことで、腎臓への負担を軽減し、病気の進行を抑えることが可能です。
塩分を控えた食生活
塩分の過剰摂取は腎臓に負担をかけます。塩分は1日6g未満を目標にし、減塩を意識した食事を心がけましょう。加工食品や外食を控え、香辛料などでアクセントを利かして塩分を抑えた料理だと効果的です。
適切なたんぱく質摂取
たんぱく質の過剰摂取は腎臓に負担をかける可能性があります。医師や栄養士から伝えられる適切な摂取量を守りましょう。
血糖値・血圧の管理
糖尿病や高血圧は腎臓に影響を与えます。血糖値や血圧の測定と高値にならないように服薬している場合は継続して管理することが大切です。
適度な運動
ウォーキングや軽いストレッチを習慣化することで血流が改善すると、腎臓が効率的に働きやすくなり負担を軽減できます。ただし、激しい運動は腎臓に負担をかけるため注意が必要です。
定期的な検査、健康診断
検査を継続することで、尿たんぱくの変化を早期に把握し、必要に応じた治療を早い段階で受けることができます。健康診断で尿たんぱくが陽性だった場合は、早めに医師に相談しましょう。
まとめ
尿たんぱくは、腎臓の異常を表す重要な指標となります。一時的に尿たんぱくがみられる場合もありますが、続く場合は糖尿病性腎症や腎炎などの可能性が考えられます。精密な検査を受けるとともに、適切な食生活や生活習慣の見直しを行い、腎臓への負担を軽減しましょう。健康診断などで尿にたんぱくが出ていると指摘されたら、かかりつけ医や腎臓内科、内科などの医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。