低血糖は薬物治療を行う人にとって最も怖い症状です。特にインスリン療法中は、低血糖に注意する必要があります。
低血糖になる理由は、「注射をするタイミングや量を間違った」「食事時間が遅かった・忘れた」「激しい運動や長時間の運動をした」などなど。今回は低血糖の発症原因や自覚症状など詳しくご紹介します。
低血糖になる理由とは?
経口血糖降下薬やインスリン注射薬は、血糖値を確実に下げる効果があります。ですが、使用量が多すぎれば、必要レベルよりも、さらに血糖値を下げてしまうこともあるのです。血糖値が必要レベル(60mg/dl)以下に下がっている状態を「低血糖」と言います。
低血糖になる主な原因
低血糖の主な発症理由は、「薬の使用量が多すぎる場合」です。その他では、「薬を飲み間違えた、打ち間違えた(薬の種類、用量、時間の誤り)」「飲酒」「入浴」「食事量の減少や絶食」などで、低血糖を招くケースがあります。
また、血糖値が極めて高い状態から急激に低下した場合、血糖値がそれほど低くなくても、低血糖症状がでることがたまにあると報告されています。
低血糖の症状と危険性
低血糖が起きると、その程度に応じた自覚症状が出てきます。詳しく説明すると、「自律神経の異常」「中枢神経の異常」「大脳の機能低下」といった3つの進行過程があります。
主な自覚症状は以下の通りです。
- 「自律神経の異常」
不安感、脱力感、顔面蒼白、空腹感、吐き気、手の震え、「発熱」「動悸(どうき)」「手のふるえ」「目のちらつき」など - 「中枢神経の異常」
強い脱力感、めまい、疲労感、眠気、視覚以上、失語、攻撃性、混乱、判断力低下など - 「大脳の機能低下」
けいれん、意識混濁、消失、昏睡(こんすい)など
低血糖の症状が現れたら迅速に対応を
もしも、これらの症状を感じたら、すぐに糖分を口にしてください。糖分なら何でも構いませんが、身近なモノの中ではブドウ糖・砂糖(10~20g)などが適しているでしょう。
また、体を休めることが重要です。糖分&安静が確保されないと、症状がどんどん進み、最悪のケースでは『昏睡』になってしまう人もいます。これは命の危険にもつながる危険な状態です。
少々恐ろしい話をしますが、実際になった事例では自動車の運転中に低血糖から昏睡になり、死を招いた大事故が起きています。自動車運転中、高所作業中に低血糖が起きた場合は、すぐに中止して、まずは安全を確保してください。
周囲の人に対処法を知ってもらうことも大切
糖尿病であることを知らない人はもちろん、知っている人でも「中枢神経系の症状(脳・脊椎の異常)」が現れた場合、患者の方に何が起きているのか、まったく判断できないでしょう。症状が外見にでないためです。
低血糖の症状が進行すると本人では対処できない場合があります。万が一になりますが、低血糖が起きて自分では対応ができなくなったときのために、ご家族や職場の人などに病気のことを伝えておくと良いでしょう。
病状を悪化させないために周囲の助けを借りよう
低血糖に陥り倒れてしまった場合は、「周囲の人に砂糖かブドウ糖を口に入れてください」もしくは「グルカゴンなど血糖値を上げる作用のある薬の筋肉注射をしてもらってください」。その際、意識がない状態でしたら飴玉などの固形物を喉に詰まらせないように十分注意してもらう必要があります。
いざというときの対処法を知っているか、知っていないかで、その後の病状が大きく変わります。もし、この二つができない場合は救急車の手配をお願いしてください(ここ大切!)また、「糖尿病患者用IDカード(日本糖尿病協会)」を携帯するのも良いでしょう。プラスチック製のカードタイプで、適切な対処をしてもらうための情報を記入しておくことが出来ます。
まとめ
低血糖は、「起きない・起こさない」が一番です。しかし、糖尿病患者さんはちょっとしたことから低血糖に遭遇する可能性があります。低血糖は体へエネルギーが不足している状態を伝えるための症状です。
特別に恐ろしい症状ではないのですが、迅速な対応が重要。すぐに糖分を補給すれば回復しますので、慌てずに速やかにと行動しましょう。症状の軽い内に対応することも大切です。