飲み薬を服用している患者さんは、お薬をたまに飲み忘れてしまうことがあるかもしれません。糖尿病のお薬の中には、食直前に飲んでこそ効果があるものもあります。
たとえ、飲み忘れたからといって、次の回で帳尻を合わせようと2回分を一気に飲むようなことは絶対にしてはいけません!今回は、薬物療法の必要性をはじめ、食直前と食前の違いや、もし飲み忘れた場合の対処法について説明します。
なぜ薬物療法は必要なのか
糖尿病患者の方ならば、「食事療法」と「運動療法」だけで血糖値コントロールできればと考える人はきっと多いでしょう。しかし、実際にはこの二つの療法では食事療法だけでは血糖値が下がらない人が数多くいます。
薬を服用しない場合、膵臓は絶えず働き続けインスリンを最大限分泌しようとハードワークしています。それが逆に膵臓に負担をかけすぎて、インスリン分泌をかえって低下させているケースもあります。
薬物療法は膵臓の働きが良好な時、つまり糖尿病の初期段階で始めた方がベストと言われています。近年は飲み薬だけで体が快調という人も増えています。血糖コントロールのために利用されているお薬は、多くの種類が処方できるようになっています。最初は単独で処方されますが、相乗効果を狙い、薬剤を組み合わせて服用し、うまくバランスをとっている患者さんも多くいます。
その反面、飲み薬によって血糖値が正常になると食事療法をおろそかにしてしまう患者さんが多くいます。食事療法&薬物療法のセットでより一層の効果が期待できます(ここ重要)。ぜひ覚えておいてくださいね。
ご存じでしたか?「食後」「食前」「食直前」の違い
お薬を処方された時、薬の入っている袋などに飲むタイミング「食後」「食前」「食直前」が記載されています。分かっているようで分かっていない。これらの意味をご紹介します。
- 「食後」とは食事を終えて、約30分以内に飲むことを意味します。
- 「食前」とは食事を食べ始める前、約30分前に飲むことです。
- 「食直前」は言葉通り、食事のすぐ前に飲むこと。一般的には、食事を摂る5分~10分前と考えてください。
多彩な糖尿病のお薬。もしも飲み忘れたら……
スルホニル尿素薬
商品名「ジアベンヘキストラスチノン」「ジメリン」「アベマイド」「デアメリンS」「グルデアーゼ」「アマリール」など
昔から糖尿病治療に用いられている薬で、種類も多種多様。作用時間も6時間、16時間、24時間、60時間などさまざま。食前または食後に服用します。食前に飲むのを忘れた時は食後に飲んでください。食後1時間以上経過し、飲み忘れに気付き飲む時は低血糖を起こしてしまう危険性があります。その際は服用は避けてください。
α-グルコシダーゼ阻害薬
商品名「ベイスン」「グルコバイ」「セイブル」など
この薬は食直前の服用となります。しかし、食事中・食後に飲み忘れに気づいた場合、服用してもOK。その場合多少効果が低くなることも認識しておいてください。作用時間は2~3時間。
速効型インスリン分泌促進薬
商品名「スターシス」「ファスティック」「グルファスト」など
この薬は食直前の服用となります。食べ始めた直後に気づいたら、その回の服用は避けましょう。低血糖になる恐れがあるからです。作用時間は3時間。
ビグアナイド系薬剤
商品名「グリコラン」「メデット」「メルビン」など
医師の判断で「食前」「食後」を決めることができるお薬です。薬の飲み忘れに気づいた時点で服用しても構いません。ただし注意点があります。次の服用時間が近い場合、その回は服用は避けてください。作用時間は6~14時間。
チアゾリン系薬剤
商品名「アクトス」
作用持続時間が20時間程度と長いために、1日1回の服用となります。昼までに飲み忘れに気づいた場合は、気づいたときに飲みましょう。それ以降は、次の日に服用するようにしましょう。
薬はポイントを押さえれば減らせる?
最後に、糖尿病の薬を飲み始めたら途中でやめることができないと思いこんでいる患者さんが多くいますが、実は大きな間違いです。血糖値が改善すれば薬を減らしたり、中止することも可能です。糖尿病のお薬は「正しい量」「正しい時間」「正しく飲む」「薬に頼りすぎない」4つのポイントを守って服用してください。
まとめ
糖尿病のお薬を飲み忘れたからと言って2回分を一度に飲むようなことは絶対にしてはいけません!糖尿病のお薬は、勝手な判断で服用のタイミングを変えたり、飲む量を変えてしまうと、低血糖の危険性やせっかくの効果が弱まってしまうこともあります。
各薬別の違いと対処法を理解して冷静に対応しましょう。また、お薬のことで疑問・不安に思っていることがあれば、必ず医師や薬剤師の方に相談してください。
また、薬は飲み忘れないのが当然ですがベスト。飲み忘れないようにするための方法はこちらの記事もご参考下さい。
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