糖尿病の患者さんがうつ病を併発することは少なくありません。治療へのストレスや合併症になる恐れから、いつの間にかうつ病を患っていたというケースも多くみられます。
糖尿病は、体のケアだけでなく心のケアも大切な病気です。今回は、糖尿病とうつ病の関係について詳しくみていきましょう。
意外!糖尿病とうつ病の密接な関係性
意外に思うかもしれませんが、糖尿病の患者さんでうつ病を併発する方は少なくありません。国立精神・神経医療研究センターの調べによると、糖尿病患者さんのうちうつ病を併発している人の割合は約11%、うつ病を併発している疑いのある人は約31%にものぼります。
少し古い情報ですが、平成20年に厚生労働省の調査では、全国におけるうつ病患者数は104.1万人。人口割合でいうと、約0.8%となっています。この数字と比較しても、糖尿病の患者さんで、うつ病を併発している人の割合は非常に高いことがわかります。
特に糖尿病の患者さんは、日頃から食事制限や運動療法、インスリン注射などの薬物療法を日常生活に取り入れる必要があります。また、合併症を併発する不安も加わり、慢性的なストレスを余儀なくされています。このように、日常的なストレスと精神的負担により、うつ病を併発するリスクが高まるのです。
参考文献:みんなのメンタルヘルス
ストレスで血糖値が高くなる
糖尿病とうつ病には、血糖値とストレスの面からみても深い関係にあることが分かっています。からだや心にストレスがかかると、血糖値が上がりやすくなることが分かっているのです。
ストレスによって、血糖値を上昇させるホルモンが分泌され、反対に血糖値を下げるホルモンであるイスリンに対する感受性が低くなります。強いストレスを感じている人は、糖尿病を発症する確立が45%上昇することもドイツ・ミュンヘン ヘルムホルツ センターの調査で分かっており、ストレスと血糖値・糖尿病には密接な関係性があることが分かります。
このように、糖尿病の患者さんはうつ病になりやすいだけでなく、過度のストレスが糖尿病を悪化させたり、糖尿病を引き起こす可能性もあるのです。
参考文献:JSTAGE 行動医学研究
糖尿病とうつ病を併発すると合併症リスクも上昇
糖尿病とうつ病を併発すると、さらに糖尿病の合併症を引き起こすリスクも上昇します。また、すでに合併症も患っている場合、合併症の経過が悪化する可能性も指摘されており、理由としては以下のようなことが挙げられます。
- 生活の質の悪化
- セルフケアの質が悪くなり、血糖コントロールが悪化
うつ病には、憂鬱になったり気分の落ち込み・希望が持てなくなるといった症状があります。これらの症状により、食生活の乱れや睡眠不足・運動不足の状態を引き起こす可能性が高まります。
さらに、糖尿病患者本人による血糖コントロール・治療への意欲が減退し、合併症リスクを上昇させてしまうのです。
うつ病の初期症状!こんな症状があったら要注意
糖尿病にうつ病を患うと、糖尿病が悪化しやすいだけでなく合併症のリスクも高めてしまうことをお分かりいただけたかと思います。このような負のサイクルに陥らないためには、うつ病を併発しないことが何よりも重要です。
また、「もしかしてうつ病の初期症状かな?」と本人や家族が気づいたら、早めに受診することが大切です。
うつ病の症状を以下にまとめました。1つでもあてはまったら、できるだけリラックスできる環境を作ることを意識し、治療・家庭・仕事においてひと休みを入れるようにしましょう。また、2つ以上あてはまる場合は、担当医に相談し必要に応じて精神科を受診するようにしましょう。
- 悲しい気持ち・倦怠感・気分の落ち込みがある
- やる気が出ない・仕事の能率が落ちた
- 食欲がない
- からだがだるく、疲れやすい
- 眠れない・何度も目を覚ます
- 性欲の低下や月経不順
- 息苦しく感じる
まとめ
いかがでしたか?意外にも糖尿病とうつ病には密接な関係性があることをお分かりいただけたかと思います。特にうつ病は、まじめで責任感が強い人がかかりやすい病気です。
糖尿病の改善のために、きっちりと食事療法や運動療法をしている方は、その分ストレスが負担としてかかっていることを本人だけでなく家族も理解するようにしましょう。
ときには食事療法をゆるめてみたり、ゆったりと過ごすことも治療の一貫です。糖尿病治療に対して厳格な方は特にうつ病にならないように注意を払うようにしましょう。合併症を引き起こさないためにも、糖尿病とうつ病を併発しないことが重要ですよ。