日本人に多い2型糖尿病の発症には運動不足が大きく関係しています。私たちは食生活が欧米化し、エネルギーを過剰に摂取してしまう生活にあります。
仕事はデスクワーク中心で体を動かすのはまれ。そんな方は特に注意が必要です。運動不足が加わると、インスリンの働きが徐々に悪くなり、糖尿病にかかってしまうのです。
適切な運動は血糖のコントロールを良好にします。「動く生活」を始めるのが最初の一歩です。
運動療法が糖尿病治療に与える効果
血糖値が高い人に「運動がいい」とは周知の事実です。運動をすることで様々な生活習慣病のリスクが下がり、健康寿命が伸びると言われています。運動習慣が身につくと、それ以前に比べ血液検査のデータなどが確実に改善されます。
主な運動の効果には、「血糖値の低下」「インスリン抵抗性の改善」など、糖尿病予防につながるものがあります。それだけでなく、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが良くなると体重が減り、肥満関連の病気も逃げていきます。
運動療法で得られる様々なメリット
歳をとることは避けられませんが、運動していれば筋力の衰えや骨粗しょう症の予防になり、高血圧や高脂血症のデータも改善されます。 心肺機能が高まり運動能力が良くなることも、若返り効果と言えるでしょう。
運動することで充実感や爽快感、ストレス解消など気持ちも明るくなるなど、運動は良いことずくめ!運動から遠ざかっている人も、これを機に体を動かしてみてはいかがでしょうか。
- 運動すると、ブドウ糖脂肪酸の利用が促進され、血糖が低下する
- 運動し続けると、次第にインスリン抵抗性が改善される
- エネルギーの摂取量と消費量のバランスが改善され、減量効果が得られる
- 加齢・運動不足による筋萎縮や骨粗しょう症の予防に有効
- 高血圧や脂質異常症(高脂血症)の改善に有効
- 心肺機能が良くなる
- 運動能力が向上する
- 爽快感や活動性気分など日常生活の質が向上
出典:日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド2006-2007」より
インスリンの効きを良くするレジスタンス運動
運動でインスリンが効きやすくなる!
予防の段階から薬物治療が必要な方まで共通しているのが適度な運動です。その理由は、運動で体を動かすと、筋肉の中でエネルギーを発生させるためにブドウ糖を取り込むようになり、血糖値が低くなります。
運動は筋肉や脂肪組織をインスリンに反応しやすくし、血糖を直接細胞に取り込ませる働きもあるのです。つまり、運動した分だけ、インスリンの働きを助けることができるのです。
インスリンの働きを助けるにはレジスタンス運動が効果的
一口に運動といっても、いくつか種類があります。糖尿病治療に有効な運動をご紹介します。
ウォーキング、ジョギングなど息を止めずに酸素を供給しながら全身の筋肉を使う運動を「有酸素運動」、もう一つはスクワット、ダンベル、マシンを使った特定の筋肉を使う運動を「レジスタンス運動」です。
要するにただがむしゃらに動けば良いわけでなく、それぞれの病態に応じた運動を行うことが大切なのです。食事療法とともに、こうした適度な運動を長期にわたって定期的に続けていけば、体重は減少し、インスリン抵抗性なども改善されます。
レジスタンス運動とは簡単に言えば筋トレです。有酸素運動は以前にも詳しくご紹介しているので、筋肉量を増やすレジスタンス運動をクローズアップします。
食事療法+運動で相乗効果
さらに、運動のよい点は体脂肪だけが減り、その他の筋肉などは衰えないという点です。一方、運動をせずに食事制限だけを行った場合は、体重は減っても、体脂肪の減少やインスリン抵抗性の改善よりも筋肉量が減少し、基礎代謝量の低下をまねきます。
こういった点からも食事療法と運動の両立が糖尿病治療に効果を発揮します。食事療法と運動療法が、糖尿病の治療における治療の両輪と言われるのはそのためです。
運動を行うタイミングですが、基本的には自分のライフスタイルに合わせていつ行っても良いです。糖尿病治療ガイドによると、血糖値を下げるには「食事をしてから1時間後」くらいが最も効果的と言われています。
血糖値は食後が最も高くなるために、運動をすることによって血糖値を下げることができるためです。
運動のポイントを知ろう!
糖尿病の方は運動療法を行う前に必ず医師によるメディカルチェックを受けなくてはいけません。糖尿病のコントロール状態が良好であるか、運動療法で悪化するおそれのある進行性合併症の有無を確認するためです。
適度な運動って?
さて、本題に戻ります。適度な運動とは一体どんなものか!?血糖値の改善や体脂肪の減少に効果があるのは「有酸素運動」です。
具体的には、ウォーキングやジョギング、水泳など、心拍数を一定に保ちながら体を動かす運動と考えてください。大量の酸素を体内に取り入れることで、血液の循環がよくなり、心肺機能も高まります。歩数計などを使うと自分の運動量を把握すると良いでしょう。
ただし、短距離走や重量挙げなどの無酸素運動は、酸素の取り込みも少なく、インスリン感受性の改善には効果があまりありません。運動の激しさですが、具体的にご紹介します。一般的には最大酸素摂取量の50%前後、脈拍120/分の軽めの運動と考えてください。時間は1回につき10分~60分。
習慣を変えるだけでも運動量は増やせる
運動したくても時間がとれない人もいることでしょう。日常生活の中でこまめに体を動かす習慣をつけると良いでしょう。
たとえば、エレベーターを使わずに階段を上がる、通勤時に電車やバスの一駅分、一区間を歩いてみるなどなど。こういった行動も、運動と同様の効果が期待できますよ。
運動が苦手な人はスポーツジムを利用してみよう
糖尿病の治療・予防には運動が欠かせませんが、何から始めたらいいか分からない、一人で運動をするのは挫折しそう……そんな人もいることでしょう。そういった人はぜひともスポーツジムを活用すると良いでしょう。
一人で運動することが向いているという人もいるでしょうが、施設内にはさまざまな器具があり、さまざまな人がいます。運動することの爽快感を感じることはもちろん、トレーニング仲間とのおしゃべりが楽しいという人も多くいます。
スポーツジムは様々な運動療法を取り入れやすい
楽しく運動がしやすくなるだけでなく、様々な運動を取り入れやすいので、有酸素運動とレジスタンス運動のどちらも行いやすいというメリットがあります。糖尿病の方にとって、スポーツジムは運動療法を上手に行うことが出来る絶好のスポットといえます。
また、スポーツジムでは一年中快適な室内温度で運動できます。
トレーナーの方も常にいるので、器具の説明や効果などを聞くことも可能です。スポーツジムは入会金や月会費を支払う必要がありますが、体を動かす習慣のない人は、一念発起してジムに入会してしまうというのも効果的です。多少の強制力がある方が運動は継続できますよ。
まとめ
運動療法を行うには注意点があります。まずは食事療法をしっかりと行い、原則として運動は食後に行うこと。
目安は1週間に3から5回程度。適度な運動を行うことで血糖値が下がるという効果がありますが、さらに効果を高めるためには長期的に運動を続けることで血糖値コントロールはもちろん、脂質異常や動脈硬化、高血圧などの改善も期待できます。
また、運動を長く続けるコツは、「楽しんで続けること」。心地よい、気持ちよい、楽しいと思える範囲でぜひトレーニングを行ってみてください。特に合併症がない場合は、運動量を特に制限する必要はありません。
長期的に継続することが大事ですので、楽しく自分に合った方法で運動療法を続けるようにしましょう。最近のスポーツジムは、糖尿病予防に特化したプログラムを組んでいる施設もあるので、そちらもぜひ活用してみてください。