1. Home
  2. Oasisコラム
  3. 糖尿病の基礎知識
  4. 【意外と知らない】糖尿病患者は鼻血が出やすい7つの理由

医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年6月24日【意外と知らない】糖尿病患者は鼻血が出やすい7つの理由

実は、糖尿病患者さんの場合、鼻血が出やすいことをご存知ですか?

糖尿病患者は高血糖により血管がもろく傷つきやすくなります。また、糖尿病患者は高血圧や腎症、動脈硬化、脂質異常症、肝機能障害を合併しやすく、それらの合併症の影響によって鼻血が出やすくなります。

合併症の治療で飲んでいる薬の影響で鼻血が出やすくなっている場合もあります。鼻血が出る仕組みについて知ってから、なぜ糖尿病だと鼻血が出やすくなるのかについて探っていきましょう。

その鼻血は糖尿病のシグナルかもしれない

鼻血と糖尿病と聞くと双方の間に接点はないような気がしますが、実は鼻血は糖尿病のシグナルでもあるのです。鼻血の起こる仕組みについても知りながら、鼻血と糖尿病の接点についてみていきましょう。

鼻血が出る仕組みとは

大人の鼻血は鼻の中の粘膜に物理的な負荷が加わり、毛細血管が傷ついて出血することがほとんどです。鼻の内側にある、キーゼルバッハ部位という毛細血管が網の目のように集まって走っている場所から出血することが多くみられます。

鼻血の原因に多いもの

鼻血の原因として多いのは、鼻を何かにぶつけるなどの外傷を負った場合や、空気が乾燥しているとき夏場ののぼせ、鼻を強くかみすぎた場合、鼻の中をいじった場合、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎で鼻の粘膜が炎症を起こしている場合、湿疹ができている場合などです。

その他にも、高血圧、肝機能障害、腎機能障害などの病気や鼻腫瘍などの鼻の病気、白血病・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)などの血液の病気、血液をサラサラにする薬であるワーファリンを服用している影響で鼻血がみられることもあります。

鼻血と糖尿病の関係

鼻血は空気の乾燥や暑い夏などの環境や鼻の炎症、鼻を触るなどの行為、鼻の腫瘍や湿疹などの鼻の病気や全身の病気など、様々な原因によって起こることがわかりました。では、鼻血と糖尿病にはどのような接点があるのでしょうか。

血は、鼻の粘膜の毛細血管が傷ついて出血して起こります。そして、糖尿病は毛細血管がもろく傷つきやすくなる病気です。少し糖尿病と鼻血との接点が見えてきた気がしますね。

糖尿病でもろく傷つきやすくなった血管は少しの刺激で傷つきやすく、出血しやすくなるのです。鼻の毛細血管が傷つき出血すると鼻血となります。

頻繁に鼻血が出るようであれば、糖尿病で毛細血管が傷つきやすくなっているがゆえに、鼻血がよく出ているのかもしれないので要注意です。

参考記事1:タケダ健康サイト

参考記事2:健康管理情報

糖尿病と鼻血の関係

糖尿病患者は鼻血が出やすくなる7つの理由

糖尿病では、毛細血管が傷つきやすくなり、鼻血が出やすくなることが分かったかと思います。具体的には、糖尿病で鼻血が出やすくなる理由は7つあります。

それぞれ詳しくみていきましょう。

糖尿病と鼻血の関係1:高血糖

糖尿病ではインスリンの分泌量が少なることやインスリンが効きにくくなることで高血糖の状態が続きます。高血糖が続くと血管へ負担がかかって内側の壁が傷つき、出血しやすくなります。

糖尿病と鼻血の関係2:高血圧

糖尿病の人は、高い確率で高血圧を合併しています。糖尿病で高血糖があると、血液の浸透圧が高くなるので細胞内から血管の中へと水分が移動し、血管を流れる水分や血液量が増加して血圧が上昇します。

糖尿病でインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が生まれると、インスリンが多量に分泌されて高インスリン血症となることでも高血圧となります。

さらに、肥満があると血圧を上昇させるホルモンの分泌が増えるので高血圧となりやすく、糖尿病の三大合併症である腎症でも血圧を上げるホルモンの分泌や体内の血液量の増加によって高血圧となります。

これらの理由から糖尿病では高血圧となりやすく、高血圧となると血管へ負担がかかり、血管が破れて出血しやすくなります。

糖尿病と鼻血の関係3:動脈硬化

糖尿病では高血糖によって負荷がかかり、傷ついた血管の壁にコレステロールなどが溜まって血管の内側が狭くなります。糖尿病となる前段階から動脈硬化は進行しており、動脈硬化が進行すると血管の壁は厚くもろくなり、出血しやすくなります。

糖尿病と鼻血の関係4:腎機能障害

糖尿病の三大合併症である糖尿病腎症によって腎機能障害が起こると高血圧になりやすく、中性脂肪の血中濃度も上がりやすいので動脈硬化のリスクも高くなります。腎機能障害が高血圧や動脈硬化を引き起こすことで、出血しやすくなります。

糖尿病と鼻血の関係5:肝機能障害

肝臓は血液中の余分なブドウ糖を蓄え、血糖値のコントロールを図っています。糖尿病の患者さんの場合、非アルコール性脂肪肝や慢性肝疾患を伴っていることもあります。

脂肪肝や慢性肝疾患などの肝機能障害があると、肝臓が血液を固めるためのたんぱく質を十分に作り出せなくなり、出血しやすくなります。

糖尿病と鼻血の関係6:脂質異常症

糖尿病では中性脂肪が増えやすく、脂質異常症を合併していることも少なくありません。肥満があると脂質異常症のリスクはさらに高くなります。

脂質異常症では動脈硬化の進行が加速され、血管がもろく壊れやすくなり、出血しやすくなります。

糖尿病と鼻血の関係7:薬の副作用

糖尿病で脂質異常症や動脈硬化などがみられ、心筋梗塞や脳血栓を予防するために血液を固まりにくくするワーファリンなどの薬を服用している場合、出血すると血が止まりにくくなります。

参考記事:糖尿病症状セルフチェック

鼻血と薬の関係

鼻血の正しい応急処置

糖尿病で鼻血がみられる理由についてみてきました。では、実際に鼻血が出た際にはどのように対応すればよいのでしょうか。鼻血が出たら首の後ろをトントンとたたく、上を向く、口の中の血は飲み込むという対応をしていませんか?残念ながらそれらの対応は間違いです。

鼻血は鼻の粘膜からの出血なので、圧迫して止血します。鼻血が出たときの正しい応急処置を知っておきましょう。

鼻血の止血1:座って下を向く

出血部位は心臓より高くしておくと血が止まりやすくなります。鼻血が出たら椅子に座って軽く下を向きます。座れない状況であれば横向きに寝ましょう。

流れてきた血を受けるように洗面器などを用意しておくと良いですね。口の中に血が流れてきたら、飲み込まずに吐き出しましょう。血を飲み込むと誤嚥のリスクや気分が悪くなることがあります。

鼻血の止血2:小鼻をつまむ

鼻の穴から約1センチのところに小指の太さほどに丸めたティッシュやカット綿をゆっくりと入れ、親指と人差し指で小鼻をつまんで5~10分間圧迫しましょう。

途中で鼻の穴に詰めたティッシュやカット綿は外さないようにします。途中で外してしまうと固まった血も取れてしまい、再び出血してしまいます。

鼻血の止血3:鼻の上部、額周辺を冷やす

氷のうなどで鼻の上部を冷やすと、血管が収縮するので血が止まりやすくなります。

鼻血の止血方法

受診した方が良い鼻血

圧迫止血を行っても鼻血が止まらないときや、きっかけもなく鼻血が何回も出る場合、ぐったりしているなど全身症状が見られる場合は医療機関を受診しましょう。

子供の鼻血は小児糖尿病の可能性も

子供は鼻血がよく出ます。大人なら鼻をいじると鼻血が出るということを知っているので我慢ができますが、子供は少し鼻がむずむずしたり、違和感があったりするとすぐに鼻を触ってしまいがちで、鼻の粘膜が傷ついて鼻血が出ることはよくあります。

特に、アレルギー性鼻炎や風邪をひいているとき、冬場、空気が乾燥しているときは鼻の粘膜が刺激に弱くなっているので鼻血が出やすくなります。また、暑くてのぼせているときや興奮したときは血液の量が増えるので出血しやすくなります。

ですが、鼻血が出やすい理由もないのに鼻血がしょっちゅう出る、鼻血がなかなか止まらない、元気がなくぐったりしている、どこかにぶつけたわけでもないのに皮膚にあざができるなどの症状が見られるときは注意が必要です。

白血病や血友病などの血液の病気や、小児糖尿病が背景に隠れていることがあります。

小児糖尿病と鼻血の関係

小児糖尿病は、2型糖尿病のように食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が原因ではなく、食事や運動に気を付けていても突然発症する病気です。

風邪をひいたことをきっかけに発症することが多く、喉が渇く、おしっこがたくさん出る、疲れやすくなる、元気がなくなるなどの症状がみられます。高血糖の状態が続くと、出血しやすくなり、鼻血がみられることもあります。

症状が進むと体重が減って意識がなくなることもあります。鼻をいじったなどの原因がないのに鼻血が頻繁にみられ、さらに、喉が渇く・元気がないなどの症状を伴っている場合は医療機関を受診して医師に相談しましょう。

参考記事1:日本耳鼻咽頭科学会

参考記事2:金沢医科大学病院

小児糖尿病と鼻血

まとめ

糖尿病では高血糖で血管がもろくなることや、糖尿病に合併して起こりやすい高血圧や腎症、動脈硬化、肝機能障害、脂質異常症などによって出血しやすくなり、鼻血が出やすくなります。

鼻を強くかんだり、鼻をいじったりしていないのに鼻血がよく出ることがあれば、糖尿病が背景に隠れている場合もあります。ぜひ医療機関で医師に相談するようにしましょう。

必ず主治医の先生にご相談ください。
Oasisコラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。

ニューズレター お申込み