妊娠中に高血糖が続くことは妊娠糖尿病と呼ばれており、近年、発症する女性が急増していると言われています。症状が軽ければ出産後に元通りになるケースもありますが、出産後も高血糖が続く方もいます。
妊娠糖尿病の治療はセルフコントロール(食事療法)が重要になってきますので、今回は妊娠糖尿病の食事療法についてしっかり理解しておきましょう。
妊娠糖尿病になると何が起こるの?
妊娠中に行われる健診では、尿糖の検査が必ず実施されます。その理由は妊娠中に糖尿病を発症する例が少なくないからです。母体の高血糖を放置すると、胎児はインスリンを過剰に分泌し続けます。その場合、赤ちゃんの脂肪を増やし過ぎてしまい、体を必要以上に大きくしていきます。
身体は大きくても臓器が十分発達していない巨大児、虚弱児が生まれることになります。もともと、食後の追加インスリンの分泌が遅い、量が少ないなど、体質的な問題を抱えた「糖尿病未病」の人は特に注意が必要です。
なぜ、妊娠糖尿病になるの?
妊娠中に起こる体内のホルモン環境の変化が関係しており、胎盤から分泌されるプロゲステロンや副腎皮質から分泌されるコレチゾールなどのホルモンがインスリンの働きを弱めてしまうからです。
妊娠中に糖尿病を発症した場合には、インスリン注射などを行いながら血糖をコントロールしていきます。妊娠中の糖尿病をうまくコントロールしておくと、出産後は血糖値が元通りになることもあるので、食事や運動など、生活面での注意を怠らないようにしましょう。
妊娠糖尿病は食事療法が重要
妊娠糖尿病と診断されると、最初に取りかかる治療が食事療法です。食事療法のポイントは二つあります。
- 妊娠継続と胎児の成長に必要な栄養を十分に摂ること
- 高血糖を起こさない食べ方を意識すること
妊娠糖尿病の方は糖尿病予備軍と同じカテゴリーになります。本格的な糖尿病は始まっていませんが、高血糖が続く状態です。
予備軍同様に、基本は食事療法、つまりカロリー制限になります。運動量や年齢などによってまちまちですが、妊娠糖尿病の方の1日の摂取カロリー目安は1,600~1,800kcal位です。
1日の摂取カロリーを朝昼晩の3食で摂ると食後血糖が上昇してしまうことが多いです。食後の血糖値が上昇してしまう場合は、5回~7回に分けて食事をする「分食」を行います。分散して食事をすることで、急激な食後血糖値の上昇をセーブすることができます。
積極的に摂るべき栄養とは?
妊娠糖尿病の方は食事に野菜やキノコ類など食物繊維の多いものを選ぶと良いでしょう。食物繊維を摂った後にご飯や麺類などの炭水化物を摂ることで、糖の吸収が穏やかになります。分食で食物繊維を積極的に摂取するのが理想ですが、思っているより難しいものです。
そういった場合は、「ピクルス」や「温野菜」を常備することをおすすめします。食べる時は、ゆっくり良く噛んで食べてください。血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。また、つわり対策のガムやアメを食べ過ぎないようにしてください。糖質、脂質の摂りすぎにも注意が必要です。
まとめ
妊娠糖尿病と診断された方は、個人の産婦人科でなく、糖尿病専門医のいる病院で診てもらう必要があります。健康な人の妊娠とは異なり、胎児に悪影響が出る危険があるからです。
妊娠糖尿病の多くは食事療法だけで改善します。食事療法を行う場合は主治医とよく相談しましょう。