糖尿病は発症していても自覚症状が出にくく、症状から病気を見つけることが難しい厄介な病気です。実は何年も前に発症しているのに、症状に気付かないまま治療もせず長い時間を過ごしてしまうケースも少なくないのです。
症状がないから大丈夫、なんてことは決してありません。糖尿病と診断された時には、すでに合併症の兆候が見られる患者さんも多いといいます。
定期的に健康診断を受けるとともに、体が発するさまざまなサインを見逃さないよう、日頃から自分自身の体の変化に気を配っておくことが大切です。
糖尿病のサインかも!?代表的な3大症状とは
ご存じの通り、糖尿病は血糖(血液中に含まれるブドウ糖)が高くなった状態が長く続く病気です。初期症状はほとんどなく、自覚症状が出た頃には病気が進行してしまっていることも少なくありません。症状がないままに病状が進んでしまうところが、糖尿病の怖いところなのです。
とはいえ、糖尿病になると体はさまざまなサインを発してくれます。中でも代表的なサインと言われているが次の3つです。当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
異常に喉が渇く
血糖が高いということは、血液にたくさん糖が含まれているということです。糖を多く含んだ血液は、シロップのように濃く、ドロドロとした状態になっています。脳はこの状態を脱水状態と判断してしまい、体に「水を飲め」と命令します。その結果、喉の渇きを感じるようになるのです。
この場合、脱水状態というのは脳の勘違いによるもので、実際に脱水が起きているわけではありません。このため、いくら水分をとっても喉の渇きが収まることはないのです。飲んでも飲んでもいやされない、異常な喉の渇きを感じたら、それは糖尿病のサインかもしれません。
尿の量・回数が増えた
喉が渇いて水分を大量にとるようになりますので、当然、尿の量や回数が増えます。また、糖尿病になると尿が泡立つとも言われますが、これは腎臓の機能が低下して尿にタンパク質が混じるようになるからです。ここまでいくと糖尿病性腎症という合併症を発症している可能性がありますので、すぐに医療機関を受診しましょう。
尿の量や回数には、食べ物や飲み物も関係しており、お茶やコーヒー、アルコールを飲むとトイレが近くなることが知られています。「いつも緑茶を飲んでいるから」「ビールが大好物だから」などと思い込んでいると、大事なサインを見逃してしまうこともあります。
何もしていないのに体重が落ちる
糖尿病になってインスリンの働きが悪くなると、血液中から細胞にうまく糖を取り込むことができなくなります。通常、血液から取り込まれた糖は細胞でエネルギーに変換されますが、糖を取り込めなくなると、かわりに脂肪や筋肉の中にあるタンパク質を分解してエネルギーを作り出そうとします。このため、特に運動やダイエットをしているわけでもなく、食事もきちんととっているのに、体重が落ちてくるのです。
高血糖で体重が落ちてくるようになると、病気はかなり進行してしまっています。体重が急激に減少してきたら、糖尿病を疑いましょう。
「何もしていないのに体重が減ってラッキー」などと考えていると、大変なことになってしまうかもしれません。
要チェック!糖尿病にはこんな症状も
他にも、糖尿病には下記のような症状が現れる場合があります。
- 異常に食欲がある
- 全身がだるく疲れやすい
- 食後に異常に眠くなる
- 足がむくむ
- 足がよくつる
- 手先や足先が冷える
- 手足がしびれる、ピリピリする
- 皮膚がかゆい、かさつく
- 傷が治りにくい
- 靴ずれを起こしても痛みを感じない
- 視力が落ちる、目がかすむ
いかがでしたか?こうした症状の中には、病気がかなり進行してしまってから出てくるものもあります。いくつか当てはまる場合は、糖尿病予備群の可能性もありますので早めに医療機関を受診し、検査を受けることをお勧めします。
初期症状で食い止めよう!糖尿病を進行させないポイント
糖尿病の早期発見は、その後の治療にも大きく影響してきます。病気の治療というと薬物治療を思い浮かべがちですが、糖尿病治療の基本となるのは食事療法と運動療法。それでもだめならお薬を飲むことになりますが、早期発見できれば食事療法と運動療法で血糖をコントロールすることも可能です。
また、糖尿病の初期段階や糖尿病予備群である方も、食事と運動で症状が進行しないように是非気をつけてください。毎日の生活習慣の積み重ねが、糖尿病の進行具合を決めると言っても過言ではありませんよ。
食事における摂取エネルギーのポイント
まず、自分の標準体重と1日の適正なエネルギー摂取量を知っておくことが重要です。標準体重と適正エネルギー摂取量は、それぞれ次のように計算します。
- 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
- 適正エネルギー摂取量(kcal)=標準体重(kg)×活動量(kcal)
活動量は主に仕事の内容によって違ってきます。デスクワークをしている人や育児のない専業主婦は25~30kcal、製造・加工・販売・ザービスなどの仕事をしている人や育児中の専業主婦は30~35kcal、建設業や農林水産業など肉体労働をしている人は35~40kcalが目安となります。
- 例.デスクワークがメインの身長170cmのサラリーマン
- 標準体重 1.7×1.7×22=63.58 kg
- 適正エネルギー摂取量 63.58×30=1907.4 kcal
標準体重や適正エネルギー摂取量は、その人の身体的な特徴(筋肉が多いか、体脂肪率が高いかなど)によっても違います。具体的には医師から指示があるので、それに従いましょう。
糖尿病の食事療法には決まった食事があるわけではありませんが、栄養素をバランスよくとることが重要です。何をどれくらい食べたらいいか迷う時は、日本糖尿病学会が作成している「食品交換表」を参考にしましょう。1日3回、規則正しく食べ、1回の食事の量をなるべく同じにすることも大切です。
糖尿病の食事療法では「これを食べてはいけない」「これを食べないといけない」といった制限は特にありませんが、血糖の上昇を穏やかにする食物線維を積極的にとるように心がけましょう。アルコールや甘いものは控えるようにした方がいいです。
また、糖尿病の初期段階・予備軍の方も糖尿病を進行させないためにも暴飲暴食をしないようにしバランスの良い食事をしましょう。
毎日の運動のポイント
運動には、ジョギングなどの「有酸素運動」と筋力トレーニングなどの「無酸素運動」がありますが、糖尿病の治療には「有酸素運動」が効果的です。ジョギングなどの運動を1回30分~1時間程度、食後1~2時間以内に、週3回以上行うのがよいでしょう。
食後1~2時間以内に行うのは、食事によって摂取した糖を消費して血糖の上昇を抑えるためです。運動の効果は翌日くらいまでは持続するので、1日おきに行っても効果はあります。無理をして毎日やるよりも、長く続けることが重要です。
運動の種類も、無理なく長く続けられるものを選びましょう。ハードな運動はかえってマイナスになることもあります。脈拍が1分間に100~110程度まで上がるくらいの強さの運動が最も効果的といわれています。ジョギングなら、多少息切れはするものの、人と会話ができる程度の速さがいいようです。
ただ、網膜症や心臓病といった病気がある場合は、運動が悪い影響を及ぼすこともあります。運動を行ってもいいか、どんな運動をどれくらい行うのがいいか、といったことは医師に相談してください。
まとめ
糖尿病になっても、きちんと血糖をコントロールすることができれば問題はありません。ところが、治療をせずに放っておくと合併症を引き起こし、時には死に至ることもあります。そうならないためには、早期発見・早期治療が重要です。上に挙げたような症状がないかどうか、体の状態をチェックし、少しでも気になることがあれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。
また、糖尿病は日々の生活習慣が肝心。糖尿病の初期段階や予備軍の方も、症状が進行しないように意識的に食生活・運動習慣を見なおしてくださいね。