糖尿病の合併症のひとつである糖尿病神経障害。手足のしびれなどの症状が現れますが、「足病変」という悪化すると足切断も余儀なくされる病気につながる場合も。
足病変とは一体どのようなものなのでしょう?今回は、足病変の主な症状から日々チェックしてほしい項目・足病変にならないための予防について詳しくみていきましょう。
足病変とその原因とは
足病変は壊疽(えそ)や潰瘍(かいよう)が足にできる病気です。壊疽とは、足の組織細胞が死滅し腐敗する状態のこと。また、足潰瘍とは皮膚に起こる障害で皮膚がなくなり奥の組織が見える状態になることをいいます。足病変には主に二つの原因があります。
原因1:動脈硬化
一つ目の原因は足の動脈がAGEの蓄積によって狭くなり、詰まってしまうことで血液が上手く流れなくなることです。AGEとは、血液中の過剰な糖分が体内のタンパク質と結びついてできる悪玉物質です。
この血流が流れにくくなる状態のことを動脈硬化といい、AGEが血管内にできることで、血液が流れにくくなりついには細胞が壊死します。また、動脈硬化により血液が巡回しにくいので傷や火傷が治るのに通常よりも時間がかかります。
原因2:糖尿病神経障害の進行
二つ目の原因は、足の傷を放置したために、傷口から細菌が入り悪化してしまうことです。糖尿病の合併症「糖尿病神経障害」が進行すると足の感覚が鈍くなり傷や火傷があっても気づかなくなってしまいます。さらに、長年の糖尿病から動脈硬化が起こると傷や火傷が治るのが遅くなります。
怪我や火傷に気付くのが遅くなり治療をするのが遅れる・動脈硬化から治るまでに時間がかかることが足病変を起こす主な要因なのです。
年間約一万人が下肢切断
厚生労働省の「平成19年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病から壊疽を起こす人は糖尿病総患者の0.7%ほどです。しかし、下肢切断の原因をみていくと糖尿病が原因での切断は、非外傷性での下肢切断理由の第一位。その人数は年間約一万人にも及びます。
本来ならば日々の血糖コントロールをきちんと行い、フットケアを行うことで予防することができる病気です。また、糖尿病神経障害を進行させなければ足の感覚が鈍くなり足病変が起こることもありません。
まずは糖尿病神経障害の症状からみていきましょう。
糖尿病神経障害による初期症状とは
日本フットケア学会の発表によると、糖尿病患者の急増や高齢化社会にともない、足病変は増加傾向にあります。糖尿病神経障害の症状が現れた場合、血糖コントロールを行うことで足の感覚が鈍くならないようにすることが足病変を防ぐことにつながります。
以下のような症状がある場合、糖尿病神経障害の可能性があります。進行させないためにも、すみやかにかかりつけの医師に相談しましょう。
- ジンジン、ぴりぴり、チクチクするような痛みやしびれがたまにある
- やけどをしていないのに焼けるような痛みが伴う
- 手でちょっと触れただけ、シャワーが当たっただけでなんだか痛い
- お風呂に入るときなど、「熱い」「冷たい」という感覚が鈍くなった
- 足の裏に薄い膜を張ったような感じなど足の違和感がある
糖尿病神経障害では、このような症状は初期には手指には現れません。進行すると手や指にも痛み・しびれが現れるようになります。
実際には症状がなくても、糖尿病神経障害が起こっている場合もあります。早期発見と治療のために定期受診も必ず受けるようにしましょう。
フットチェックの5つのポイント
糖尿病神経障害がさらに進行すると、痛みやしびれがあったのとは反対に足の感覚が鈍くなり、怪我をしたりやけどをしても気づきにくくなります。足のトラブルのチェックポイントは、毎日お風呂上がりに足をチェックすること。
糖尿病神経障害により足の感覚が鈍くなっている場合、以下のチェック項目を日々確認し足病変へと進行させないようにしましょう。
チェック1:深爪や巻き爪はないか?
深爪したり、巻き爪になると、肌が傷つきやすくなります。爪を切るときは角を切るのはNG。平らに切ってください。左右の角はほんの少し落とすのがベスト。爪ヤスリが便利です。
チェック2:やけどはないか?
赤く変色していたり、水ぶくれになっている場合は、やけどの可能性があります。流水で冷やしても改善しない場合は、医師の診断を受けてください。
チェック3:靴ずれはないか?
魚の目やタコは、自分で削ると、傷付ける恐れがあります。どうしても削りたい場合は医師に診てもらってください。靴ずれには、化膿止めを塗り、絆創膏を貼ってください。足の形とジャストサイズを選ぶことも大切です。
チェック4:ひび割れはないか?
かかとのひび割れから切れて、傷になることがあります。オイルや尿素入りクリームを塗って保護してください。
チェック5:水虫はないか?
水虫は白癬菌による感染症の一種です。「かさかさタイプ」と「じゅくじゅくタイプ」があります。抗真菌薬で治療すると治りが早くなります。
また、小さな傷でもなかなか治らない場合は医師に相談してみてください。日頃から指の間、足の裏、かかとまで清潔にしておくことも重要です。
予防の近道は”糖尿病を進行させない”こと
糖尿病から足病変を引き起こす根本的な原因を考えてみましょう。糖尿病により動脈硬化が進行する・神経障害を発症することで足病変へとつながります。
これらの症状が進行することで足病変を引き起こし、最悪の場合は足切断につながるのです。つまり根本的な対策は、とにもかくにも血糖コントロールをすることで動脈硬化を引き起こさないようにする・合併症を起こさないようにすること。
日々の治療(食事・血糖管理・運動など)により糖尿病を悪化させないことが「合併症を起こしさらには足病変を発症させる」という悪循環を予防することにつながります。
糖尿病のコントロール・治療に努めることがなによりも足病変を発症させないための近道なのです。
まとめ
足病変は最悪の場合足切断を余儀なくされ、命にも関わる大変恐ろしい合併症の症状です。しかし、日々の血糖コントロールとフットケアをきちんとすることで防ぐことができます。
自分の大切な足を守るためにも、糖尿病治療をきちんと行い合併症を起こさない・合併症がある場合は進行させないようにすることが大切です。
正しい食事・運動習慣を身につけ、血糖コントロールをすることが足病変を引き起こさない近道ということを忘れないで下さいね。