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医療法人による糖尿病患者のためのコラム2022年6月8日旅行前に必読! 糖尿病の人のトラベルチェックポイント

糖尿病になると、毎日の生活でさまざまな節制が必要になります。そのため、旅行や外食といった楽しみは諦めなければならない、と思っている方が多いのではないでしょうか。

たしかに注意しなければならないポイントはありますが、きちんとリスクをコントロールすれば、インスリン治療をしている糖尿病患者さんでも、健康な人と同じように旅行を楽しむことができるのです。

旅行に出かける前に、準備しておきたいこと

糖尿病の人が旅行にいく時のポイント

緊急時に必要な糖尿病グッズは多めに用意しよう

数日間にわたる旅行では、旅先で体調が悪くなることもあります。まず主治医に相談して、緊急時の対処法などをあらかじめ確認しておきましょう。経口血糖降下薬やインスリン、注射に使う器具などは、旅行の日数分よりも多めに用意しましょう。

そして、荷物の中の1カ所にまとめてではなく、2カ所以上に分けておくのが安心です。万が一、薬をなくしたり、器具を壊してしまっても、予備があれば慌てることはありません。

糖尿病健康手帳、お薬手帳、自己管理ノートなど、どんな治療を受けているのかわかるものも必ず携帯しましょう。旅先で体調を崩したり、事故にあったりしたとき、迅速な処置を受けるために必要になります。

日本糖尿病協会では、糖尿病患者用の緊急連絡用IDカードの発行を行っているので、事前に申請して常に持ち歩くのも安心です。

体調の変化に対応できるようにしよう

旅行中は普段と生活リズムが変わるので、体調が変化しやすくなります。グルコース測定器などを持参して、血糖値をこまめに確認するようにしましょう。

また、旅先では急に予定が変わることもよくあります。予定通りに食事ができなかったときのための補食や、低血糖対策の飴やブドウ糖も用意し、すぐに取り出せる場所に入れておくようにしましょう。

糖尿病患者さんは、靴擦れなどのちょっとしたケガでも、重大な合併症の元になることがあります。歩きやすい靴を用意するのはもちろんのこと、ケガをしたときすぐに応急処置ができるように、消毒薬や絆創膏も用意しておきたいものです。

そのほか、胃腸薬や下痢止め、乗り物の酔い止めといった常備薬も持参したほうが安心です。常備薬については、血糖に影響を与える成分が入っていないか、あらかじめ主治医に確認しておきましょう。

糖尿病の人が旅先で気をつけたいポイントとは?

糖尿病の人が旅行中の食事で気をつけること

旅行先でのカロリーコントロールも気をつけよう

外食は高脂肪・高カロリーなメニューが多く、血糖値コントロールが難しくなりがちです。でも、その土地ならではの食材を味わうのも、旅行の楽しみのひとつ。食べる料理の種類や量を減らすなど、カロリーオーバーにならないよう自己管理しましょう。

食事ごとの調整が難しいようであれば、昼食が高カロリーだったから夕食を減らす・あるいは夕食が高カロリーになりそうだから昼食を控えめにするなど、1日のトータルで考えて調整するのもひとつの手です。

ただし、カロリーを気にするあまり食事量を減らしすぎて低血糖になってしまうこともあるので、こまめに血糖値の自己測定をして上手にコントロールしたいものです。宿泊するホテルや旅館によっては、糖尿病の方向けの食事を用意してくれるところもあるので、事前に問い合わせてみてください。

インスリン注射で気をつけたいこと

インスリン治療を行っている方は、インスリンの保管場所にも注意が必要です。高温になったり凍ったりすると、インスリンの働きが失われてしまいます。宿泊施設によっては、冷蔵庫の温度が低めに設定されているので、インスリンを保管しておくと凍ってしまうことも。

万が一、そういったトラブルでインスリンが足りなくなってしまったとき、薬をなくしてしまったときは、旅先の医療機関に糖尿病患者用IDカードや糖尿病手帳を提示すれば、いつも使っている薬を処方してもらえます。

また、インスリン治療に使った注射針などは、宿泊施設やトイレなどに捨てず、必ず持ち帰ってください。

海外旅行に出かけるときの注意点

糖尿病の人が飛行機で旅行するときのポイント

機内で糖尿病を悪化させないように気をつけること

海外旅行では、国内旅行に加えて注意すべきポイントがいくつかあります。インスリン治療を受けている方は、あらかじめ利用する航空会社に糖尿病で注射をしていることを伝えておくようにしましょう。

座席でのインスリン注射ができない航空会社もあるので、その場合はトイレで行うなど、客室乗務員の指示に従ってください。ほとんどの航空会社では、事前に申し込みをすれば、糖尿病患者さん向けの機内食を用意してもらえます。

予約の際に糖尿病であることを申請し、摂取できるカロリーの数値を伝えておきましょう。経口薬やインスリンは国内旅行と同様に多めに用意するのが鉄則ですが、貨物室にあずける荷物には入れずに、すべて機内持ち込みの手荷物に入れておきましょう。

旅行先での荷物トラブルとインスリン注射

海外旅行では、預けた荷物が届かなかったり、別の場所に運ばれてしまったりといったトラブルもあります。また、搭乗する便によっては貨物室が与圧されていないため、荷物の中に入れたインスリンが凍ってしまうこともあります。

そういった事態を避けるためにも、インスリンは手荷物で機内に持ち込んだほうが安心です。ただし、インスリンを機内に持ち込む場合は、薬剤がインスリンであることを証明しなければなりません。

薬剤に製品名が記載されていれば一目でわかりますが、念のために英文の診断書なども用意しておいたほうがいいでしょう。日本糖尿病協会では、糖尿病であること、治療を受けていることを5カ国語で証明するカード「Diabetic Data Book」を発行しています。

旅行について主治医に相談しておこう

事前に申請して持ち歩けば、旅先で医療機関にかかるようなことがあったときにも安心です。時差がある国に行く場合は、あらかじめ主治医と相談して、服薬や注射の計画表を作っておくと便利です。

機内食が出る時間を航空会社に確認して、それを主治医に伝えれば、より的確な計画表が作れます。また、飛行機の機内は地上よりも乾燥しています。そのため脱水状態になりやすく、いわゆるエコノミークラス症候群が起こるのです。

糖尿病の方の場合、健康な人よりもエコノミークラス症候群になりやすいので、水分はこまめにとるようにしましょう。のどが渇いていると感じるよりも早く、水分をとっておくのが理想です。

まとめ

注意すべきポイントさえきちんと押さえておけば、糖尿病の治療中でも十分に旅行を楽しむことができます。でもなにより大切なのは、無理をしすぎないこと。

事前にしっかりと準備をして、ふだんと同じように睡眠を十分にとって体調を整え、余裕をもって行動することが重要です。そして旅先ならでの体験をたっぷりと味わってください。

必ず主治医の先生にご相談ください。
Oasisコラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。

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