1. Home
  2. Oasisコラム
  3. 糖尿病の基礎知識
  4. 糖尿病の世界ランキング公開|日本は何位?

医療法人による糖尿病患者のためのコラム2021年1月12日糖尿病の世界ランキング公開|日本は何位?

生活習慣病を代表する糖尿病は、日本でも多くの人が患っています。糖尿病の怖さは自覚症状のないうちに進行し、命を脅かす様々な合併症をもたらすことです。

世界でも多くの人が糖尿病を患っています。糖尿病の世界情勢や世界ランキングをみていきましょう。

糖尿病人口の世界ランキング

厚生労働省の2014年「患者調査」によると、我が国の糖尿病患者数は316万6,000人とあります。では、世界の糖尿病人口はどのくらいなのでしょうか?糖尿病の世界人口についてみていきましょう。

世界全体の糖尿病人口

2017年、IDF(国際糖尿病連合)は成人(20~79歳)の11人に1人が糖尿病であり、世界の糖尿病患者の人口は4億2,500万人と推定されると発表しています。

この推定人口には、糖尿病と診断されている人と未診断の糖尿病患者の両方の人口が含まれています。糖尿病患者の2人に1人は未診断であり、その人口は2億1,200万人と推定されています。

世界の未診断の糖尿病患者数は2015年の4億1,500万人に比べて、1,000万人増加していることとなります。2045年には世界の人口の増加とともに糖尿病患者は6億2,900万人にのぼると推定されています。

世界各地域の糖尿病人口ランキング

世界を北アメリカ・カリブ、南・中央アメリカ、ヨーロッパ、西太平洋、南東アジア、中東・北アフリカ、アフリカの7つの地域に分けたとき、日本はオーストラリア、ニュージーランド、中国、インド、モンゴル、ミャンマーなどの国とともに西太平洋地域に含まれます。

西太平洋地域は世界の糖尿病人口のもっとも多い地域であり、2017年現在糖尿病人口は1億5,900万人と推定されています。

国別で2017年の糖尿病人口を見てみると、最も糖尿病人口が多い国は中国で1億1,400万人です。

2位はインドの7,300万人、3位は米国(アメリカ)の3,000万人、4位はブラジルの1,300万人、5位はメキシコの1,200万人、6位はインドネシアの1,000万人、7位はロシアの900万人、8位はエジプト、9位はドイツ、10位はパキスタンで800万人となっています。

2015年では日本は世界ランキングの9位に入っていましたが、2017年では世界の糖尿病人口の上位10位からはランキング外となりました。しかし、65歳以上の糖尿病人口ランキングでは430万人で世界第6位にランクインしています。

世界の糖尿病罹患率

世界の地域別の人口を比べると最も多いのは日本を含む西太平洋地域ですが、罹患率で比べると北米・カリブ地域の15.4%が最も高くなります。

世界全体では成人11人に1人が糖尿病という計算となりますが、北米・カリブ地域は成人8人あたりに1人が糖尿病という計算になります。

世界の糖尿病の割合

世界の糖尿病情勢

世界の医療費の12%は糖尿病にかかっています。その医療費額は約83兆円(7,270憶ドル)といわれており、2015年に比べて糖尿病にかかる医療費は増大しています。医療費の多い国のランキングは1位が米国の39.5兆円、2位が中国の12.5兆円、3位がドイツの4.8兆円、4位がインドの3.5兆円、5位が日本の3.2兆円です。

糖尿病の予防のための医療費予算は不足しており、糖尿病が強く疑われる糖尿病有病者の2分の1は未受診で、自分が糖尿病であることを知らないといいます。糖尿病有病者の4分の3は中低所得国であり、アフリカでは糖尿病患者の3分の2以上が未受診であるといわれています。

2型糖尿病は、初期はほとんど自覚症状のないまま進行し、自覚症状がみられたころには糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害などの合併症が重篤となっていることも少なくありません。

特に20~64歳の働く世代の2型糖尿病が増加しており、糖尿病患者の3分の2が20~64歳の範囲内に該当します。世界で糖尿病が原因で死亡する人口は年間に400万人と言われており、死亡原因の上位に糖尿病や糖尿病の合併症が入る国も多いとされています。

世界では、増えゆく糖尿病患者への対策として、2型糖尿病の予防を促すための政策が求められています。

1型糖尿病が多い国は?

2型糖尿病の発症には肥満や運動不足、不摂生な食生活、ストレス、高齢化などが関連していて、発症人数も年々増えています。

一方、1型糖尿病の発症は子供・若年者に多くみられ、発症原因は自己免疫疾患が関連していると考えられています。1型糖尿病の発症人数は日本では10万人に1~2人ですが、世界では年々発症人口が増えており、年間13万2,600人が発症しているといわれています。

1型糖尿病の発症数増加の原因

早期であれば食事と運動の生活習慣の改善で症状がよくなる2型糖尿病とは違い、インスリンの分泌自体が行われなくなる1型糖尿病ではインスリン注射の治療が必要です。

血糖のコントロールも不良となりやすいので、意識障害や昏睡をきたす急性合併症のリスクも高くなります。小児や若年者で発症する例が多く、糖尿病腎症、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害といった三大合併症のリスクを長年にわたり背負うこととなります。

2型糖尿病はたとえ糖尿病となりやすい遺伝子を受け継いでいたとしても生活習慣の改善で糖尿病の発症を予防し、糖尿病の発症数の減少につながることも期待できます。

しかし、1型糖尿病の発症においては、ウイルスや遺伝、食品などが関連することが研究により分かってきてはいるものの、明確な原因は分かっておらず、1型糖尿病の発症が増加している原因もいまだ不明のままです。

1型糖尿病の多い国ランキング

1型糖尿病の最も多い国は米国の16万9,000人です。次いで2位にインド、3位にブラジル、4位に中国、5位にロシア、6位にアルジェリア、7位に英国、8位にサウジアラビア、9位にモロッコ、10位にドイツとなっています。

日本では糖尿病患者の99%が2型糖尿病を占め、糖尿病全体でみると1型糖尿病の割合はわずかです。

日本は糖尿病大国

2016年「国民健康・栄養調査」では日本の糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる人)と糖尿病予備軍(糖尿病の可能性を否定できない人)を合わせると2,000万人と推計されています。

(出典:厚生労働省 平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要)

2型糖尿病は生活習慣病

糖尿病は発症すると完治することはなく、適切な治療を受けないと失明、足の切断、透析治療などが必要となり、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクも増加させます。糖尿病の合併症は生活の質(QOL)を低下させ、健康寿命も短縮してしまいます。

いまや、糖尿病を含む生活習慣病が原因で死亡する人口は日本の死亡者数の約6割を占めており、生活習慣病にかかる医療費も全体の約3割を占めています。糖尿病の有病者を年齢別でみてみると、男女ともに60歳以上での割合が優位に多く、60歳までの生活習慣が大切であることが読み取れます。

2型糖尿病の発症には生活習慣が大きく関わっています。日本における生活習慣のデータをみてみると、肥満の年別割合は、BMIが25 kg/㎡以上の成人男性の割合は平成28年が31.3%、女性20.6%であり、平成27年の男性29.5%、女性19.2%に比べ増加していることがわかります。(表1 肥満者(BMI≧25 kg/㎡)の割合の年次推移(20 歳以上)(平成 18~28 年)参照)

糖尿病の年齢別推移

表1 肥満者(BMI≧25 kg/㎡)の割合の年次推移(20 歳以上)(平成 18~28 年)
(出典:厚生労働省 平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要)

また、野菜の摂取量をみてみると、平成27年の293.6gから平成28年では276.5gに減っています。(表2 野菜摂取量の平均値の年次推移(20 歳以上)(平成 18~28 年)参照)

糖尿病と野菜摂取量の関係

表2 野菜摂取量の平均値の年次推移(20 歳以上)(平成 18~28 年)
(出典:厚生労働省 平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要)

1日の歩数も過去10年間を通してみると大きな差はないものの平成27年の男性7,194歩、女性6,227歩に比べると平成28年では男性6,984歩、女性6,029歩に減少しています。(表3 歩数の平均値の年次推移(20 歳以上)(平成 18~28 年)参照)

糖尿病と歩数の関係

表3 歩数の平均値の年次推移(20 歳以上)(平成 18~28 年)
(出典:厚生労働省 平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要)

睡眠で休養が十分にとれていない人の割合が平成21年から優位に増加していること、女性の飲酒の割合の増加、30~50歳代の男性の約4割に喫煙習慣があることもわかっています。肥満、野菜摂取量の不足、1日に歩く量の低下、疲労の蓄積、飲酒や喫煙などの生活習慣を持っている人が今後も増加すると、糖尿病の発症者も今後増えることが危惧されます。

私たちにできること

平成10年には我が国の死因第10位に入っていた糖尿病は、平成28年では10位以内にはランキングしませんでした。しかし、糖尿病が背景にあると発症しやすい心疾患は第2位、脳血管疾患は第4位、腎不全は第7位に入っています。

(出典:厚生労働省 平成10年 人口動態統計)
(出典:厚生労働省 平成28年 人口動態統計)

健康寿命を延ばす取り組み

日々、医療が進み、日本人の平均寿命は延びています。健康に日常生活を送ることのできる健康寿命が生活習慣病の発症によって短くなれば、平均寿命が延びている分、日常生活に支障をきたす不健康な時期が延び、生活の質が低下します。介護者への負担も大きくなり、医療費や介護にかかわる費用も増大します。

まず、私たちがすぐにできる取り組みとしては、未来の健康を維持するために、生活習慣病の発症を予防するための「生活習慣の改善を行う」こと。また、今は健康であるとしても定期的に検診を受け、「自身の健康を振り返る」こと、そして「生活習慣病がどんな病気なのか、どんな合併症があるのか」を知ることです。

肥満を防ぎ、野菜を積極的に摂ってバランスの良い食事をとることを心がけ、今よりも10分でも多く歩く・動くようにしましょう。禁煙、節酒、ストレスをためないことも大切です。

そして、今は健康であったとしても、早期に異常を発見して対応がとれるように定期的に検診を受けて自分の健康をチェックしましょう。生活習慣病について知識を得ることで、さらに自分の健康に対して関心を持つことができます。

糖尿病予防

まとめ

糖尿病の世界ランキングとともに世界での糖尿病、日本における糖尿病についてみてきました。糖尿病は日本ではだれでも聞いたことのある病気ですが、世界でみても医療費を圧迫するほどの患者人口の多い病気です。

糖尿病は一度かかると治らない病気であるため、かからないために予防することが一番です。とくに日本では高齢者の糖尿病人口が多く、今の生活習慣が年をとった時の自分の健康につながってきます。

「自分は大丈夫」ではなく、未来の自分の健康のために少し生活を見直してみましょう。食事・運動と一気にすべて変えることは難しいので、少しずつでも構いません。

まずは、「朝起きた時に体操をしてみる。」「外に出た時に少し遠回りして歩いてみる。」「白米の量を減らしてみる。」などから実行し、「これならできる」「これからも続けられる」という自信をつけてさらに改善できる点を増やしていくと良いでしょう。

出典元

国際糖尿病連盟 IDF糖尿病アトラス、8th edn ブリュッセル、ベルギー:国際糖尿病連盟 2017年
http://www.diabetesatlas.or

糖尿病ネットワーク 世界糖尿病デー 糖尿病人口は4億人を突破 30年後には7億人に
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2017/027510.php

厚生労働省 平成26年患者調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/05.pdf

厚生労働省 平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf

厚生労働省 平成10年 人口動態統計
http://www1.mhlw.go.jp/toukei/10nenfix_8/hyo4-k.html#HYO01

厚生労働省 平成28年 人口動態統計
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei16/dl/10_h6.pdf

必ず主治医の先生にご相談ください。
Oasisコラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。

ニューズレター お申込み